台湾の株式会社が全部のまたは主要な事業を他人に譲渡するには

国際取引・海外進出

 日本企業である当社は、台湾人数名と共同出資して、台湾で株式会社Aを設立しました。下記の場合について、A社は何をなすべきでしょうか。

事例①
A社は、はじめて台湾市場に参入し、台湾の現地企業Bと共同経営契約を締結することで、取引先および顧客を拡大したいと考えています。

事例②
A社は一定期間経営を行いましたが、業績は終始不振であり、内部検討の結果、現在行っている業務は、事業コストが高すぎるため、事業および財産を売却して、その売却分を開発その他の業務にあてた方がよいとの結論に至りました。そこで、A社の経営陣は、A社の事業および財産を他社へ売却することを計画しています。

事例③
上記②に続き、A社は、現在の事業および財産を売却した後、C社の事業が将来発展する潜在力を持っていると評価して、C社の事業および財産を買い受け、経営を引き継ぎたいと考えるようになりました。しかし、C社の事業とA社のこれまでの事業の種類および形態は、同一ではなく、C社の現在の事業および財産を引き継ぐことは、A社の将来の発展に対し、重大な影響があるかもしれません。

事例④
上記②に続き、A社の台湾人株主甲は、株主総会決議前に書面でA社に対し、会社の事業および財産の売却に反対する旨を通知したうえ、さらに株主総会においても反対に投票しました。A社は、会社事業を売却する計画こそあるものの、しばらくは解散しないつもりです。このような状況で、株主甲はA社に対し、自己の有する株式を買い取るよう要求してきました。

 各事例についての回答は下記のとおりです。

事例①
会社法によれば、B社と共同経営契約を締結したい場合、A社は、董事会の特別決議を経たうえで、株主総会の特別決議による同意を得なければなりません。

事例②
会社法によれば、会社の事業および財産を他社に売却する場合、A社は、董事会の特別決議を経たうえで、株主総会の特別決議による同意を得なければなりません。

事例③
会社法によれば、C社の事業および財産を取得する場合、A社は、董事会の特別決議を経たうえで、株主総会の特別決議による同意を得なければならない。

事例④
会社法によれば、重大な事業の変更に反対した株主甲は、一定の条件のもと、会社に対し、公正な価格でその株式を買い取るよう請求することができ、A社はこれを拒絶することができません。

解説

目次

  1. 事業の重大な変更の意義
  2. 事業の重大な変更についての手続
    1. 董事会の特別決議
    2. 株主総会の特別決議
    3. 少数株主の株式買取請求権

※以下、本稿において引用されている法規は、特に規定しないかぎり台湾の法規を指すものとします。

事業の重大な変更の意義

 会社法185条は、株式会社の「事業の重大な変更」に関する規定です。当該規定によれば、事業の重大な変更とは、次のものを指します。

  1. 事業すべての貸出し、経営委託、または他人との日常的な共同経営に関する契約の締結、変更または終了
  2. 全部または主要な事業、財産の譲渡
  3. 他人の全部の事業または財産を譲り受ける場合で、会社の運営に重大な影響を与える場合

 上記②の「主要な事業、財産」に関しては、各株式会社の事業およびその経営の性質により異なります。たとえば、会社の主要な業務が砂糖の製造であれば、その主要な財産は製糖設備です。会社の主要な業務が半導体の製造であれば、その主要な財産には、ウエハー工場の建物およびその設備が含まれることになります。上記「主要な事業、財産」に関しては、会社の状況によって異なり、絶対的な基準があるわけではありません。

事業の重大な変更についての手続

 上記の事業の重大な変更についての手続は以下の通りです。

董事会の特別決議

 会社法185条4項によれば、事業の重大な変更についての議案は、3分の2以上の董事が出席する董事会において、出席董事の過半数の同意により可決されなければなりません。

株主総会の特別決議

 会社法185条1項によれば、当該議案が董事会で可決された後、さらに発行済株式総数の3分の2以上を有する株主が出席する株主総会において、出席株主の議決権の過半数の同意を得なければなりません。

 この他、手続上、事業の重大な変更の議案については、株主総会の招集通知に、あらかじめ記載しておく必要があります。また、2018年の会社法改正により、招集通知において、事業の重大な変更の議案の主な内容を説明しなければならないものとされました。なお、金融監督管理委員會または会社が指定するウェブサイトに主な内容を記載し、当該ウェブサイトを招集通知に明記することも可能とされました。

 上記事例①、②および③は、会社法185条が規定する事業の重大な変更にあたると考えられるので、その実行にあたり、董事会の特別決議を経たうえで、株主総会の特別決議による同意を得なければなりません。

事業の重大な変更の手続

事業の重大な変更の手続

少数株主の株式買取請求権

 会社法186条によれば、事業の重大な変更に反対する株主が、株主総会決議前に、当該変更に反対する旨をあらかじめ書面で会社に通知し、さらに株主総会に出席して反対票を投じた場合は、会社に対し、その時点での適正な価格で自己の株式を買い取るよう請求することができます。

 しかし、会社の行う行為が全部または主要な事業、財産の売却であり、かつ同一の株主総会で、同時に会社解散決議をしている場合には、当該少数株主は、会社にその株式の買い取りを請求することはできません。

 設例の事例④において、甲は同法185条1項に規定される重大な事業の変更につき、株主総会決議前に書面でB社に対し反対する旨を通知したうえ、さらに株主総会においても反対しています。また、当該株主総会では、同時に会社解散決議は行われてはいないため、甲はB社に対し、適正な価格でその株式を買い取るよう請求することができ、B社はこれを拒絶することができません。

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