台湾の会社で株主総会決議を取り消すことができる場合、株主総会決議が無効となる場合

国際取引・海外進出

 日本企業である当社は、台湾人数名と共同出資して、台湾で株式会社Aを設立しました。株主総会において以下の決議を行いましたが、後日、一部の株主から決議の効力について疑問が呈されました。以下の株主総会決議方法は適法でしょうか。

事例①
今回の株主総会は臨時株主総会でしたが、開催通知が総会3日前になって、ようやく株主に送付されました。

事例②
今回の株主総会で増資案(定款変更を伴うもの)を決議しましたが、発行済株式総数の2分の1の株主しか出席せず、出席株主の2分の1が同意しただけでした。

事例③
今回の株主総会で、昨年度の会計帳簿の承認について決議した。A社の定款によれば、年度会計帳簿は、発行済株式総数の3分の2以上を有する株主が出席し、出席株主の2分の1以上が同意しなければ、決議の効力を生じない。しかし、今回の株主総会では、発行済株式総数の2分の1を有する株主しか出席せず、出席株主の2分の1が同意しただけであった。

事例④
A社の定款では、董事の報酬をどのように支払うかについて規定されていませんが、今回の株主総会で、董事の報酬は董事会が自ら決定してもよいと決議されました。

事例⑤
A社は、法律および定款によれば、第三者のために保証をすることを業務としていません。しかし、今回の株主総会で可決された決議では、A社のある株主が銀行で融資を受けられるよう、A社に対し、当該株主のために会社資産に担保権を設定しなければならないとされました。

 各事例についての回答は下記のとおりです。

事例①
会社法172条によれば、臨時株主総会の開催通知については、法に従い、遅くとも10日前までに行わなければなりません。本事例の株主総会の招集手続は法令に違反しており、株主は裁判所に対し、当該株主総会決議の取消しの訴えを提起することができます。

事例②
会社法277条によれば、定款変更を行うには、発行済株式総数の3分の2以上を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が同意することが必要です。本事例は、増資案のうちでも、定款変更を伴うものであるところ、本事例の決議方法は法令に違反しており、株主は裁判所に対し、当該決議の取消しの訴えを提起することができます。

事例③
会社法230条によれば、会計帳簿の承認は普通決議事項であり、発行済株式総数の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が同意すれば決議を行うことができます。しかし、定款で、普通決議事項について、これよりも多い議決権数を設定している場合は、定款の規定を優先適用しなければなりません。このため、本事例の会計帳簿承認決議は、決議方法が定款に違反しており、株主は裁判所に対し、当該決議の取消しの訴えを提起することができます。

事例④
会社法196条によれば、董事の報酬について定款で定めていない場合は、株主総会で決議しなければなりません。しかし株主総会は、決議をもってしても、董事の報酬額について、董事会が自ら決定するよう委任することはできません。このため、本事例の董事報酬に関する決議内容は、法令に違反しているため無効です。

事例⑤
会社法によれば、会社は、法律または定款に基づき保証人となれる場合を除き、いかなる保証も行うことはできません。会社が第三者に財産を提供して担保権を設定することは、第三者のために保証人となるのと変わらないため、同様に禁止されます。よって、株主への保証を提供するようB社に指示する株主総会決議は、決議内容が法令および定款に違反しているため無効です。

解説

目次

  1. 株主総会決議の取消し
    1. 取消しの訴えの提起期限
    2. 取消しの訴えの提起要件
    3. 取消しの訴えを提起する際の被告
    4. 決議が取り消されるまでの法的効力
    5. 裁判所の裁量による棄却
  2. 株主総会決議の無効

※以下、本稿において引用されている法規は、特に規定しないかぎり台湾の法規を指すものとします。

株主総会決議の取消し

 会社法189条によれば、株主総会の招集手続または決議方法が法令または定款に違反する場合、株主は裁判所に対し、当該決議の取消しの訴えを提起することができます招集手続違反とは、たとえば招集権限のない者の招集や法定の招集手続を履行していないことであり、決議方法の違反とは、たとえば、議案に基づき必要とされる、法定または定款所定の議決権数を満たさないままで決議が行なわれることです(各類型の議案に必要とされる最低議決権数については、『台湾における株式会社の株主総会の招集および決議はどのように行うのか』参照)。

 設例の事例①、②、③は、株主総会の招集手続または決議方法が法令または定款に違反するため、株主は決議の取消しの訴えを提起することができます。

取消しの訴えの提起期限

 会社法189条によれば、裁判所に対する株主総会決議取消しの訴えの提起期限は、決議の日から30日です。

取消しの訴えの提起要件

 裁判所の判例によれば、株主総会決議取消しの訴えを提起しようとする株主は、自ら当該株主総会に出席し、その場で異議を表明していることが必要です。

取消しの訴えを提起する際の被告

 裁判所の判例によれば、会社を被告としなければなりません。

決議が取り消されるまでの法的効力

 株主総会の招集手続または決議方法が法令または定款に違反する場合は、裁判所に取消しの訴えを提起することができますが、決議は取り消されるまでは、無効ではありません。したがって、取り消されるまで当該決議は依然として存続し、かつその法律上の効力も否定されません。

裁判所の裁量による棄却

 会社法189条の1によれば、裁判所は、株主総会決議取消しの訴えにおいて、その違反する事実・情状が重大ではなく、かつ違反する情状が決議自体に影響を及ぼさないものと認めるときは、当該訴えを棄却することができます。

 同法190条によれば、決議事項が会社登記事項に記載された場合は、裁判所の決議取消判決が確定した後に、裁判所が直接通知し、または利害関係人の申請により、当該会社登記を取り消すことができます。

株主総会決議の無効

 会社法191条によれば、株主総会の決議内容が法令または定款に違反する場合は、無効となります。無効な行為は、当該行為の時点で効力が生じていないことから、取り消されうる行為が、取消し後にはじめて効力を失うのとは異なります。したがって、裁判所に当該無効決議の取消しの訴えを提起することはできません。株主間に当該決議の有効、無効について争いがある場合は、裁判所に株主総会決議無効確認の訴えを提起することが考えられます。

 設例の事例④、⑤は、株主総会の決議内容が法令または定款に違反する事例であり、株主総会の招集手続または決議方法が、法令または定款に違反する事例ではないため、その決議自体は無効であり、株主は決議の取消しの訴えを提起することができません。

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