台湾の株式会社の株式を譲渡する際の制限

国際取引・海外進出

 日本企業である当社は台湾人数人と台湾において共同出資により株式会社Aを設立しました。当社は株主が無断で株式を第三者に譲渡することを防止したいと考えています。下記のような規定を設けることは可能でしょうか。

事例①
当社は、A社の定款において、株主による株式譲渡を禁止する条項または株主が株式を譲渡する前に他の株主の同意を得る必要があるなどの条件を設定する条項を設けようと考えています。定款にこのような規定を設けることはできますか。

事例②
当社は、台湾人株主との間の共同出資契約において、株主が他の株主の同意を得ずに無断で株式を第三者に譲渡することを禁止しました。このような契約の規定は有効でしょうか。

事例③
共同出資契約において、株式を譲渡する前に他の株主が優先購入権を有する規定を設けました。このような規定は有効でしょうか。

事例④
当社はA社を設立するときに発起人となりましたが、A社から撤退しようと考えています。会社設立登記から1年未満の場合、当社はA社の株式を第三者に譲渡することができますか。

 各事例についての回答は下記のとおりです。

事例①
A社の定款において、株主の株式を譲渡する権利を禁止または制限することはできません。よって、株主による株式の譲渡を禁止する、または株主が株式を譲渡する前に他の株主の同意を得る必要がある等の定款の規定は無効です。

事例②
質問の会社はA社の他の株主との間で、契約をもって、各自の株式の譲渡を禁止することができます。よって、このような契約の規定は有効です。

事例③
質問の会社はA社の他の株主との間で、契約をもって、株式の優先購入権について約定することができます。よって、このような契約の規定は有効です。

事例④
質問の会社はA社の設立登記から1年が経過しなければ株式を譲渡することができませんでしたが、2018年の会社法改正によってこの制限は削除されました。

解説

目次

  1. 定款による株式譲渡の禁止または制限
  2. 契約による株式譲渡の禁止または制限
  3. 発起人が保有する株式の譲渡の期間制限

※以下、本稿において引用されている法規は、特に規定しないかぎり台湾の法規を指すものとします。

 会社法の理論上、株式会社は「資合会社」と呼ばれます。これは、資本を重視するものであり、人を重視する「人合会社」である合同会社等とは異なります。合同会社の場合、株主は全株主の過半数の同意を得なければ出資額の全部または一部を第三者に譲渡することができませんが、株式会社の株式は、原則として自由に移転させることができます。

定款による株式譲渡の禁止または制限

 会社法163条1項によれば、株式会社の株式の譲渡は、会社法に別に規定される場合(特別株の譲渡制限)を除き、定款をもって禁止または制限することができません。したがって、会社法に別に規定される場合ではないのに、定款において、株主による株式譲渡を禁止し、または何らかの条件を設定して株主による株式譲渡を制限した場合、このような定款の規定は無効と判断されるため、株主はこのような定款の規定の拘束を受けません。

 以上より、設例の事例①において、B社の株主が株式を譲渡する前に他の株主の同意を得る必要がある等の条件を設定する定款の規定は会社法に別に規定される場合を除き、無効です。

契約による株式譲渡の禁止または制限

 会社法は、定款において株式譲渡を禁止または制限することを禁止していますが、契約をもって株式譲渡を禁止または制限することは明文で禁止していません。よって、会社設立時の共同出資契約等の契約において、株式譲渡の禁止を規定し、または株式譲渡について何らかの制限を規定すること等は可能です。

 また、株主間で契約をもって、当事者のいずれかが株式を譲渡する前に他の株主が優先購入権を有する旨を規定することは、会社法および判例においては明確に禁止されていません。よって、契約当事者がこのような約定をしても違法ではないため、契約は有効となります。

 したがって、設例の事例②、③の規定は、いずれも有効です。ただし、株式譲渡を禁止または制限する規定であれ、他の株主が優先購入権を有する旨の規定であれ、当該規定は、当事者ではない株主を拘束しません。

発起人が保有する株式の譲渡の期間制限

 会社法163条2項によれば、株式会社の発起人の株式は、会社設立登記から1年が経過するまで譲渡することができませんでしたが、2018年の会社法改正によってこの制限は削除されました。台湾の最高裁判所の判例によれば、当該規定に違反して発起人が1年以内に株式を第三者に譲渡した場合、その株式譲渡は無効とされていました。従前であれば、設例の事例④において、A社は発起人であるため、B社の設立登記から1年が経過しなければ株式を譲渡することができませんでしたが、現在はこの制限は課されません。これは企業経営の柔軟さを向上させる目的の一環でなされた改正です。

 最後に、会社株式は会社の設立登記完了後にはじめて譲渡することができます。台湾の最高裁判所の見解によれば、会社の設立登記完了前の株式譲渡は無効とされています。

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