台湾の合同会社の株主による出資持分の譲渡

国際取引・海外進出

 日本人の甲は台湾人の乙、丙、丁と台湾において、乙が董事、他の3名が株主となり、パソコンゲームの製作に従事する合同会社Aを設立しました。下記の場合、甲は出資持分の譲渡などをすることができますか。

事例①
A社の業績不振のため、甲はA社に対する出資持分を株主以外の他人に譲渡したいと考えました。乙は甲に「業績はまだ伸びる可能性があり、今撤退するのは時期尚早である」と言い、甲のA社に対する出資持分を譲渡することに反対しましたが、丙、丁は甲がその出資持分を譲渡することに同意しました。乙が反対している場合、甲はその出資持分を株主以外の他人に譲渡することができますか。

事例②
甲がある特定の他人に出資持分を譲渡することに乙が反対した場合、甲はその出資持分をどのように譲渡すべきでしょうか。

事例③
甲もA社の董事である場合において、乙が反対した場合は、甲はその出資持分を株主以外の他人に譲渡することはできますか。

 各事例についての回答は下記のとおりです。

事例①
甲はその出資持分を株主以外の他人に譲渡することができます。

事例②
甲はその出資持分を乙が譲り受けるよう要求することができます。乙が譲り受けを拒否する場合、甲はその出資持分を特定の他人に譲渡することができます。

事例③
甲がA社の董事である場合において、乙が反対したときは、甲はその出資持分を他人に譲渡することはできません。

解説

目次

  1. 合同会社の株主が出資持分を他人に譲渡する要件
  2. 株主の優先譲受権
  3. 合同会社の董事が出資持分を他人に譲渡できる要件
  4. 出資持分を譲渡する際に登記機関に提出しなければならない書類

※以下、本稿において引用されている法規は、特に規定しないかぎり台湾の法規を指すものとします。

合同会社の株主が出資持分を他人に譲渡する要件

 会社法111条1項の規定によれば、株主は他の株主の議決権の過半数の同意を得なければ、その出資持分の全部または一部を他人に譲渡することはできません

合同会社の株主が出資持分を他人に譲渡する要件

 設例の事例①の場合、甲以外の株主3名のうち2名が甲による出資持分の譲渡に同意しています。よって、同項の規定に従い、甲はその出資持分を他人に譲渡することができます。

株主の優先譲受権

 会社法111条3項の規定によれば、同条1項において他の株主による出資持分の譲渡に同意しない株主は優先譲受権を有します。その出資持分の譲渡に同意しない株主が当該出資持分を譲り受けない場合、譲渡に同意したものとみなされ、かつ当該合同会社の定款における株主と出資持分等に関する事項の変更にも同意したものとみなされます

 台湾経済部の解釈によれば、上記の会社法111条3項の趣旨は、株主が他人に出資持分を譲渡しようとし、他の株主の議決権の過半数が111条1項に従って同意している場合、出資持分譲渡に反対する株主が優先譲受権を有するというものです。譲渡に反対する当該株主が他の株主が譲渡する出資持分を譲り受けない場合、譲渡に同意したものとみなされます。

 よって、設例の事例②の場合、甲が出資持分をある特定の他人に譲渡することに乙が反対する場合、甲はその出資持分を乙が譲り受けるよう要求することができます。乙が譲り受けを拒否する場合、甲はその出資持分を特定の他人に譲渡することができます。

 しかし、台湾経済部の解釈によれば、出資持分譲渡について他の株主の議決権の過半数の同意を得ていない場合、出資持分を譲渡しようとする株主には、「反対する株主がその出資持分を譲り受けないときには、株主以外の他人に対して出資持分を譲渡する権利がある」と主張することはできません。すなわち、乙、丙、丁のうち、甲によるその出資持分の譲渡に同意する者が議決権の過半数を超えない場合、甲は「乙、丙、丁がその出資持分の優先譲受を拒否するので、甲がその出資持分を株主以外の他人に譲渡することに同意したものとみなされる」と主張することはできません。

合同会社の董事が出資持分を他人に譲渡できる要件

 会社法111条2項は、会社の董事は他の株主の議決権の3分の2以上の同意を得ずにその出資持分の全部または一部を他人に譲渡することができない旨規定しています。当該規定の趣旨は、董事は合同会社の法定機関であり、重要な地位を有するため、その出資持分の譲渡について通常の株主の出資持分の譲渡より要件を厳格にした点にあります。

 よって、設例の事例③において、甲がA社の董事である場合において、乙が反対した場合でも、他の株主3名のうち丙丁の2名が同意しているため、A社の定款において出資比率に応じて議決権を分配する旨を定めており、乙が3分の1を超える議決権を有する場合を除き、甲はその出資持分を株主以外の他人に譲渡することができます。

 上記のとおり、会社法は、合同会社の株主の出資持分の譲渡についてかなり厳しい規定を設けています。このような制限について厳しすぎるとの批判の声もありますが、現行の法律上、当該制限を遵守せざるを得ないため、台湾において合同会社の形態で出資するときには、この点に注意しなければなりません。なお、2018年の会社法改正までは、董事が出資持分を他人に譲渡する場合、他の全株主の同意を得る必要がありましたが、実務でのニーズに対応すべく、上記のとおり要件が緩和されました。

出資持分を譲渡する際に登記機関に提出しなければならない書類

 株主が出資持分を譲渡する際に登記機関に提出しなければならない書類は以下のとおりです。なお、外国語で作成した文書があれば、中訳が必要となります。

  1. 申請書(会計士または弁護士に代理を依頼する場合、委任状1部を添付しなければならない)
  2. 経済部投資審議委員会の認可文書、資金審査文書のコピー(外国人の株主が譲渡する場合、当該文書を添付しなければならない)
  3. 会社定款のコピー
  4. 定款の変更条文の対照表のコピー(同意書に定款の変更条文が記載されている場合は不要。))
  5. 株主の同意書のコピー(株主自らの署名または捺印が必要)
  6. 新たに追加される株主の資格および身分を証明する文書のコピー
  7. 変更登記表2部

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