商標権を取得するための手続(商標登録出願)とは

知的財産権・エンタメ
三品 明生弁護士 弁護士法人イノベンティア

 商標権を取得するためには、どのような手続が必要ですか。専門家に依頼しなくても取得できるものでしょうか。

 商標権を取得するためには、願書の作成や特許庁への提出などの商標登録出願の手続が必要です。自ら商標登録出願をすることも可能ですが、ビジネス戦略に沿った商標権を取得するためには、商標登録出願の専門家である弁理士に依頼した方が良いでしょう。

解説

目次

  1. 商標権が発生するまでの流れ
  2. 商標登録出願の手続
    1. 願書の作成
    2. 願書の提出
  3. 特許庁に支払う手数料(2019年4月1日現在)
    1. 出願時
    2. 登録時および更新時
  4. 商標登録出願の注意点と弁理士に依頼するメリット

商標権が発生するまでの流れ

 商標権が発生するまでの流れは、以下の通りです。

  1. 商標登録出願(商標法5条)
  2. 審査官による商標登録出願の審査(商標法14条)
  3. 審査官による登録査定(商標法16条)
  4. 登録料の納付(商標法18条2項)
  5. 設定登録により商標権が発生(商標法18条1項)

 商標権を取得するとき、まず行わなければならないのは、①商標登録出願です。
 商標登録出願があると、審査官による審査が実施されます。その際、商標登録出願に拒絶理由がないと審査官が認めれば、登録査定が届き、所定の様式の商標登録料納付書により登録料を納付することで、商標権が発生します。
 審査官の審査に耐えられる商標登録出願をするためには、類似した商標を他者が出願、登録していないことを確認するなど、事前調査が必要です。

商標登録出願の手続

願書の作成

 商標登録出願は、願書を作成し、特許庁に提出することで行います。
 願書は、定められた様式(商標法施行規則2条)に、必要な事項を記入して作成します。商標に関する事項としては、【商標登録を受けようとする商標】、【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】を記載する必要があります。

 【商標登録を受けようとする商標】の項目には、登録を希望する商標そのものである、文字やマークを記載します。
 なお、登録を希望する商標が文字のみであり、文字書体にこだわりがない場合は、【商標登録を受けようとする商標】の欄の次に【標準文字】と記載して登録を求めることができます。標準文字で登録する場合、特許庁が定めた文字書体で登録されます(商標法5条3項)。文字書体から離れて文字のみが登録されることにはならない点に注意が必要です。
 また、1つの願書には1つの商標しか記載することができません(一商標一出願の原則)。複数の商標を出願したい場合は、商標ごとに願書を作成して、商標登録出願をする必要があります。

 【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】の項目には、商標を使用する商品や役務(サービス)である「指定商品」・「指定役務」と、これらが属する分類である「区分」を記載します。
 区分は、第1類から第45類まであり、第1類から第34類までが商品、第35類から第45類までが役務です(商標法施行令2条、別表)。
 この区分は、多数の国が加盟する条約によって定められた国際分類に基づいています。そのため、この条約の加盟国において商標権を取得するべく、加盟国に対して商標登録出願をする場合も、日本と同様の区分を用いることができます。
 また、区分は、願書に複数記載することができます(一出願多区分制)。

独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)「知的財産相談・支援ポータルサイト」より、通常出願の場合の商標登録願の様式見本

独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)「知的財産相談・支援ポータルサイト」より、通常出願の場合の商標登録願の様式見本

願書の提出

 願書を特許庁に提出するには、インターネット出願による方法と、書面を特許庁へ郵送または持参する方法があります。

 インターネット出願による提出は、専用の出願ソフトウェアをダウンロードして行います。ただし、インターネット出願を行うためには、本人認証のために電子証明書が必要になります。

 願書を書面で提出する場合、電子化手数料が別途必要になります。電子化手数料は、出願後に送られてくる払込用紙にて、1,200円+(700円×書面のページ数)を支払います。

特許庁に支払う手数料(2019年4月1日現在)

出願時

 商標登録出願の際に特許庁に支払う出願料は、3,400円+(区分数×8,600円)です。願書に区分を多く記載するほど、出願料は高くなります。
 書面による出願の場合は、出願料相当額の特許印紙を願書に貼付します。
 インターネット出願の場合は、ペイジー、口座振替、予納、現金納付、クレジットカードで、出願料の支払いをすることができます。

 参考:特許庁「特許(登録)料の納付方法について」(2019年5月16日最終閲覧)

登録時および更新時

 登録査定を受けた後、設定登録のために特許庁に登録料を支払う必要があります。登録料は、区分数×28,200円であり、これにより商標権が10年間存続します。登録料は、前期5年分と後期5年分に分割して納付することも可能ですが、その場合は区分数×16,400円になり、2回納付すると10年分を一括で納付するより高くなります。

 また、商標権は、存続期間が満了する日の6か月前から満了日までに、更新登録の申請をすることで、半永久的に存続させることができます。その場合に必要な更新登録料は、区分数×38,800円であり、これにより商標権がさらに10年間存続します。更新登録料も、前期5年分と後期5年分に分割して納付することが可能であり、その場合は区分数×22,600円です。

 登録料および更新登録料も、出願料と同様に、区分が多いほど高くなります。

項目 金額
商標登録出願料 3,400円+(区分数×8,600円)
商標登録料 区分数×28,200円
商標登録料の分納額(前期・後期支払分) 区分数×16,400円
更新登録申請 区分数×38,800円
更新登録申請の分納額(前期・後期支払分) 区分数×22,600円

商標登録出願の注意点と弁理士に依頼するメリット

 商標登録出願をしても、必ずしも登録されるとは限らず、審査官に拒絶されて、最終的に商標権を取得できなくなる場合もあります。
 また、商標登録に至ったとしても、願書において、指定商品や指定役務の記載が不適切であれば、意図した権利範囲の商標権を取得できなくなります。さらに、実際に使用する商標との関係で、【商標登録を受けようとする商標】の記載が不適切であれば、将来的に不使用取消審判(商標法50条)を請求されることがあります。その結果、せっかく取得した商標権が消滅することがありますし、登録商標表示(たとえば、「®」(Rマーク)の付記)を付すことが虚偽表示(商標法74条)になってしまうこともあります。

 弁理士に商標登録出願を依頼する場合、識別力の有無など、登録の可能性について事前にアドバイスを受けられます。また、事前調査を併せて依頼することにより、審査官の審査に耐えられる商標に限って出願することができますので、無駄な出願を回避することができます。さらに、願書の各事項を適切に記載してもらえますので、願書の記載が不適切であるために権利の実効性が失われるなどといった問題を防ぐことができます。
 ビジネス戦略に沿った商標権を無駄なく取得するためには、弁理士に依頼した方が良いでしょう。

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