非伝統的商標(新しいタイプの商標)とは

知的財産権・エンタメ

 当社は、当社が営むチェーン店の外観に、特徴的な色彩の組合せを用いており、顧客からも広く認識されています。他社に真似されることがないように、当社商標について商標権を取得しようと考えています。一般に登録されている商標は文字や図形、記号が多いと思いますが、色彩などでも、商標登録は認められますか。

 商標法における「商標」とは、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合、音等であり、業務として取り扱う商品や役務(サービス)に使用するものをいいます。文字や図形、記号に限らず、音、色彩、動きやホログラム、立体的形状、位置などについても、登録要件を充たせば、商標登録が認められます。

解説

目次

  1. 「商標」とは
  2. 商標の種類
  3. 非伝統的商標(新しいタイプの商標)
    1. 音商標
    2. 色彩のみからなる商標
    3. 動き商標
    4. ホログラム商標
    5. 位置商標
  4. 商標権の取得方法
  5. まとめ

「商標」とは

 商標法1条は、以下の通り、商標法の目的を定めています。

商標法1条(目的)
この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。

 このように、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図るために、商標を保護する制度として、商標法が定められています。

 これを踏まえて、商標法2条1項は、以下の通り、「商標」の定義を定めています。

商標法2条1項(定義等)
この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)

 このように、商標とは、自己の業務として取り扱う商品や役務(サービス)を、他者の商品・役務と識別するために使用する標章(目印、マーク)を意味します。

 こういった商標法の目的、商標の定義から、自己の商品・役務の目印として、他者の商品・役務と区別する機能(自他商品等識別機能)が商標の本質的な機能とされています。

     また、商標の機能としては、自他商品等識別機能から派生するものとして、以下の3つの機能があると言われています。
  • 出所表示機能:同一の商標が使用されている商品・役務は、同一の人・法人が製造・販売・サービスの提供を行っていることを表示する機能。
  • 品質保証機能:同一の商標が使用されている商品・役務は、同等の品質を備えた商品・役務であることを保証する機能。
  • 広告宣伝機能:商標を通じて商品・役務を広告宣伝する機能。

商標の種類

 商標の種類については、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩またはこれらの結合、音その他政令で定めるものとされています(商標法2条1項)。

 以前の商標法では、音や動き、色彩のみについてなどは商標登録が認められませんでしたが、平成26年(2014年)の商標法改正により、商標法による保護対象が拡充され、新しいタイプの商標として、音の商標や色彩のみからなる商標、動きやホログラム、位置の商標が追加され、商標登録ができるようになりました。これら新しいタイプの商標は、「非伝統的商標」と呼ばれています。

 そのため、現行の商標法では、登録要件を充たせば、文字や図形、記号に限らず、音、色彩、動きやホログラム、立体的形状、位置についても、商標登録が認められる可能性があります。

 なお、商標登録においては、自己の業務として取り扱う商品や役務を、他者の商品・役務と識別するための目印となり得ること(識別力)が重要とされる一方、意匠登録の要件とされる創作性や特許登録の要件とされる新規性などは必要とされません。

非伝統的商標(新しいタイプの商標)

 以下、非伝統的商標(新しいタイプの商標)について、具体例を挙げつつ説明します。

音商標

 音商標とは、音楽や音声、自然音等、聴覚によって認識される商標をいいます。テレビCMに使用されるサウンドロゴやPCの起動音など、特徴のある音のデザインについては、音商標となります。

商標登録5813496号 権利者:エプソン販売株式会社

(例)商標登録5813496号  権利者:エプソン販売株式会社

色彩のみからなる商標

 色彩のみからなる商標とは、単色または複数の色彩の組合せからなる商標をいいます。特徴のある色彩の組合せのみのデザインについては、色彩のみからなる商標となります。

(例)商標登録5933289号 権利者:株式会社セブン-イレブン・ジャパン

(例)商標登録5933289号  権利者:株式会社セブン-イレブン・ジャパン

動き商標

 動き商標とは、文字や図形等が時間によって変化して見える商標をいいます。時間の経過による標章の変化の状態を複数の平面図で表現するようなデザインについては、動き商標となります。

(例)商標登録5804313号 権利者:エステー株式会社

(例)商標登録5804313号  権利者:エステー株式会社
商標の詳細な説明
商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、時間の経過に伴う標章の変化の状態を示す10枚の図からなる動き商標である。なお、各図の右下に表示されている番号は、図の順番を表したものであり、商標を構成する要素ではない。標章の動きは、次のように変化する。右上方からひよこが降りてきて(図1及び図2)、足を開閉しつつ羽ばたきながら一旦左上方に飛び上がり、それと同時に「エステー」の文字及び「空気をかえよう」の文字が時系列に表れる(図3及び図4)。その後、再度ひよこが降りてきて「空気をかえよう」「エステー」の文字の左側に並び、目や嘴を開閉する(図5ないし図10)。この動き商標は全体として1.5秒である(出典:商標登録5804313号の公開公報)

ホログラム商標

 ホログラム商標とは、ホログラフィー等の方法により、文字や図形等が見る角度によって変化して見える、立体的に描写される、光の反射により輝いて見える等の視覚的効果のある商標をいいます。ホログラムを使用したデザインについては、ホログラム商標となります。

(例)商標登録5804315号 権利者:三井住友カード株式会社

(例)商標登録5804315号  権利者:三井住友カード株式会社
商標の詳細な説明
商標登録を受けようとする商標は、見る角度により表示される色彩が変わるホログラム商標である。なお、各図の右下隅に表示されている番号は、図の順番を表したものであり、商標を構成する要素ではない。正面から見たときは図1に示すとおり、傾けた角度によっては図2に示すとおりである(出典:商標登録5804315号の公開公報)

位置商標

 位置商標とは、文字や図形等と、その付される位置によって構成される商標をいいます。特定の位置に特徴的なデザインを使用する場合には、位置商標となります。

(例)商標登録5807881号 権利者:株式会社エドウイン

(例)商標登録5807881号  権利者:株式会社エドウイン
商標の詳細な説明
商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、標章を付する位置が特定された位置商標であり、ズボンの後ろポケットの左上方に付され、「EDWIN」の欧文字が表された赤い長方形のタブ図形からなる。なお、ポケット及びタブ図形のみの記載は、当該位置に付された標章を明示するための部分拡大図である。また、破線は、商品の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない(出典:商標登録5807881号の公開公報)

商標権の取得方法

 日本では登録主義が採用されているため、たとえ商標を自己の商品・役務に長年使用していたとしても、商標登録をしなければ、商標権を取得することはできません。

 商標登録をするためには、特許庁に出願手続を行うことになります。特許庁においては、実体的要件(商標法3条、4条)、形式的要件(商標法5条、6条)等について審査されることになります。

 なお、非伝統的商標については、性質上「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」(商標法3条1項6号)に該当することが多く、商標登録が認められるためには、使用による識別力の獲得(商標法3条2項)が求められるケースが少なくありません。

まとめ

 以上のように、文字や図形、記号以外にも、音、色彩、動きやホログラム、立体的形状、位置についても、商標登録の要件等を充たせば、商標登録が認められる可能性があります。

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