「解雇」について就業規則に定める際の留意点

人事労務
小島 彰社労士 こじまあきら社会保険労務士事務所

 就業規則では、「解雇」に関してどのような定めをおくべきでしょうか。また、解雇に関する就業規則を作成する際に注意すべきポイントを教えてください。

 「解雇」とは使用者が従業員との労働契約を一方的に解約することを指します。従業員を解雇するには「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること」(解雇権濫用法理)が要求されます。さらに、就業規則の絶対的必要記載事項として解雇の事由を記載し、労働者と使用者双方が解雇の正当性の有無を確認できる環境を作ることが重要です。

解説

目次

  1. 解雇事由
  2. 解雇予告
  3. 解雇制限

〈第2章 人事 つづき〉

第6節 解雇

(解雇事由)
第21条 従業員は、次の各項の事由に該当する場合は解雇する。
(1)身体または精神の障害により、業務に耐えられないと認められたとき
(2)勤務成績が不良で、就業に不適格であると認められたとき
(3)会社内において、会社の許可を受けず演説、文書の配布もしくは掲示またはこれに類する行為をしたとき
(4)会社内において、明らかに一党一宗に偏した政治または宗教活動を行ったとき
(5)事業の縮小等やむを得ない業務上の都合により必要性のあるとき
(6)事業の運営上やむを得ない事情または天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が不可能になったとき
(7)試用期間中または試用期間満了時までに社員として不適格であると認められたとき
(8)「第3章 服務」の規定にしばしば違反し、改悛の情がないとき
(9)懲戒解雇事由に該当したとき
(10)その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき

(解雇の予告)
第22条 会社は、従業員を解雇しようとする、少なくとも30日前までにその予告をしなければならない。ただし、30日前までに予告をしない場合は、30日分の平均賃金を支給する。
2 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不 可能となった場合、または、労働者の責めに帰すべき事由に 基づいて解雇する場合で、当該事由につき所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、前項の規定を適用しない。
3 第1項の予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数分を短縮する。

(解雇制限)
第23条 従業員が業務上の傷病により療養のために休業する期間およびその後30日間、ならびに女性従業員が出産のため休業する期間およびその後30日間は解雇しない。ただし、傷病 または出産を理由としない解雇については、この限りではない。

解雇事由

 解雇とは、労働者の意思に関係なく、使用者が一方的に雇用関係を解消することです。労働者にしてみれば、会社側にやむを得ない事情があったとしても、簡単に納得できることではなく、労使間で深刻な争いが起こることも多いといえます。

 そのため、解雇の正当性が認められる条件として「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること」(解雇権濫用法理)を要求しています。さらに、就業規則の絶対的必要記載事項として解雇の事由(退職の事由のひとつ)を記載し、労働者と使用者双方が解雇の正当性の有無を確認できる環境を作ることで、解雇に関するトラブルをできる限り防ごうとしています。一般的に解雇の事由として正当性が認められやすいものとして、おもに次の事項があります。

  1. 勤務態度が悪く、再三の改善要求にも応じない
    具体的には、遅刻早退を繰り返す、業務命令に従わない、他の従業員と協調しようとしない、といったことが挙げられます。

  2. 心身の状態が業務遂行に耐えられないと判断される
    病気や事故による心身機能の低下が原因で、日常業務をこなすことができないといった場合です。

  3. 職務遂行能力に問題があり、今後も向上が見込めない
    試用期間中に職務への適応性がないと判断されたり、長年にわたって業務に従事しながら一向にその業務を遂行できず、会社に損失を与えたりするような場合が考えられます。

  4. 会社の業務上の方針
    事業の縮小や合理化などを目的とする、いわゆるリストラです。

  5. 天変地異、事故、火事など不測の事態
    不測の事態による業績悪化などが原因の解雇です。

  6. 刑事罰に相当する事件を起こした
    背任罪や横領罪などで会社に直接の損害を与えたり、暴行罪、強制わいせつ罪などで会社の信用を失墜させるなど、間接的な損害を与えた場合です。ただ、これらの事由に該当しただけで直ちに解雇するのは、困難な場合があります。たとえば、①・②・③の事由は普通解雇と呼ばれるものですが、これが認められるためには、労働者がこれらの事由により労働契約に違反したと判断できる事実を示す必要があります。④・⑤の事由は整理解雇と呼ばれます。これは会社側の事情が大きいので、さらに明確な合理性と相当性が求められます。具体的には、「解雇以外の経営改善の方法が十分に検討されたか」「人員削減が必要なほど経営状態が悪化しているか」「人選に十分な協議がなされているか」「労働組合など労働者が整理解雇に納得しているか」といった条件を満たすことが必要です(整理解雇の4要件)。

    ⑥の事由は懲戒解雇に相当します。この場合、所轄労働基準監督署長の認定があれば、解雇予告や解雇予告手当がなくとも、即日解雇することができますので、そのことを明記しておきます。

解雇予告

 解雇を実行する際には、労働者に正当性のある事由を示す他、解雇予告を行うことが求められます。具体的には、以下のいずれかの手続きを行うことが必要です。解雇される労働者が心の準備をして、次の仕事が決まるまでの生活を安定させるのがその趣旨です。

  1. 少なくとも30日前にその予告をする
  2. 予告をしない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う
  3. 日数分の平均賃金を支払い、解雇予告に必要な日数を短縮する

解雇制限

 労働基準法は、次の状況にある労働者を解雇することを、原則として禁じています。

  1. 業務上の負傷または疾病(業務災害)のため休業している期間
  2. 上記1の期間が終わった後30日間
  3. 6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間以内)に出産する予定の女性労働者がその申出により休業している期間
  4. 産後8週間を経過しない女性が休業している期間(妊娠等を理由とする場合に限る)
  5. 上記③・④の期間が終わった後30日間

 ただし、④の期間は産後6週間を過ぎると、女性労働者の希望がある場合、医師の許可を得て復職ができます。

©小島彰 本記事は、小島彰監修「事業者必携 働き方改革法に対応! 就業規則の作成・見直し実践マニュアル」(三修社、2019年)の内容を転載したものです。
事業者必携 働き方改革法に対応! 就業規則の作成・見直し実践マニュアル

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