バーチャル株主総会とは? 「ハイブリッド型」の実践ポイントと「バーチャルオンリー型」の実務課題

コーポレート・M&A
尾崎 安央 早稲田大学法学学術院教授

目次

  1. はじめに
  2. 株主総会の役割とは?
  3. バーチャル株主総会とは?
  4. なぜハイブリッド型バーチャル株主総会が認められるのか?
    1. バーチャルオンリー株主総会の可能性
    2. 参加型と出席型の区分
  5. 「出席型」バーチャル株主総会開催のポイント
    1. 同一性確認
    2. 事前の議決権行使書面との関係
    3. IT利用の株主からの質問・動議・提案等
  6. 通信障害回避という難問
  7. バーチャルオンリー株主総会への道
    1. 「場所」の問題~産業競争力強化法改正案66条
    2. 株主の権利行使機会をいかに保障するか
  8. おわりに

はじめに

 3月決算の株式会社にとって、今年も定時株主総会の季節が到来した。昨年に続き、コロナ禍の下での開催になりそうである。感染予防、株主らの健康を考えると、多くの会社で「バーチャル株主総会」が選択肢になっている可能性がある。実例も増えており、これらは総会担当者にとっても参考になるであろう。「バーチャル株主総会」の開催を経験済みの会社では、昨年認識された問題点や課題を克服した実施が期待される。

株主総会の役割とは?

 定時株主総会をなぜ決算日から3か月以内に現実に開催しなければならないのか(会社法124条2項参照)。決算や役員人事に係る重要事項を決議するためである。その前提として討議・審議をする場が必要である。そのためには、提案者(通常は会社)と議決権行使者(株主)と間に同時・双方向的発言機会が確保されることが必須となる。

 株主総会は情報提供の場でもある。一般株主にとって、定時株主総会は重要な会社情報が提供される場である。招集通知に際して会社から多くの資料が株主に提供される。株主総会参考書類上の情報は近い将来、上場会社では電子的に提供されることになっている(改正会社法325条の2以下、社債、株式等の振替に関する法律159条の2。未施行)。

バーチャル株主総会とは?

 従来、株主総会というと、具体的に設営された会議場で開催されるものだけであった。しかし、昨年、定時株主総会の開催が迫るなかCOVID-19の感染が日本でも拡大し、いわゆる三密を避けた株主総会をどのように開催すればよいのかが実務上の課題となり、一部にバーチャル株主総会への関心が高まった。

 インターネットや電話機能等を活用した、いわば仮想空間で行われる株主総会であるためバーチャル株主総会と呼ばれるが、現実の総会(リアル株主総会)を一方で開催しつつ、同時双方向配信による株主の参加または出席を行うものを「ハイブリッド型バーチャル株主総会という。これに対して、リアル株主総会をまったく開催しないものを「バーチャルオンリー株主総会と呼んでいる。

 現行会社法の一般的理解では、ハイブリッド型のバーチャル株主総会は可能であるとされている。一方でリアル株主総会が開かれているからである。実務上の問題は、そのようなハイブリッド型バーチャル株主総会をどのように開催すればよいのかであった。

 昨年(2020年)1月26日に経済産業省から「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(以下、「ガイド」)が公表され、実務でも参照されたようである。現在は、昨年度の実施例を整理した追補(別冊)が公表されている(2021年2月3日。)。

なぜハイブリッド型バーチャル株主総会が認められるのか?

バーチャルオンリー株主総会の可能性

 バーチャル株主総会が成立するための必要条件は、IT技術等の活用による双方向的同時性が整っていることである。リアル株主総会に求められてきた株主と会社経営者が同一「空間」において情報を共有し議論すること(に近い状況)が実現できるからである。多くの人がインターネット会議などを経験している現在、バーチャルオンリー株主総会も可能ではないかと思われても不思議はない。しかし、これも経験済みのことであろうが、通信状況が万全なのかという不安は完全には拭えない。株主総会決議については、通信障害が発生すれば決議取消訴訟や総会のやり直しというリスクがある。バーチャル株主総会に躊躇があってもやむを得ないともいえる。

 加えて、株主総会の「場所」(会社法298条1項1号、会社法施行規則63条2号)に関して、国会でそれが現実の空間であるとの解釈が示された(2018年11月13日第197回国会衆議院法務委員会 政府参考人答弁参照)。サイバー空間も「場所」だという理解は可能かもしれないが、文言の解釈に争いが生じるおそれがあるとすれば、バーチャルオンリー株主総会まで進むには、いくつかの解決すべき課題が残されているといえよう。

参加型と出席型の区分

 リアル株主総会を一方で開催しているので、ハイブリッド型のバーチャル株主総会は厳密な意味でのバーチャルな株主総会ではない。当日会場にいない株主がインターネット等を用いて同時的に現実に開催されているリアル株主総会に「参加」または「出席」するものであるからである。前掲「ガイド」は、ハイブリッド型のバーチャル株主総会には大別して「参加型」と「出席型」の2種あるという理解に立つ。

出典:経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2020年1月26日)5頁

出典:経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2020年1月26日)5頁

 「参加型」とは、インターネット等を通じて株主総会に参加する株主には議決権などの株主権行使を認めないものをいう。リアル株主総会を「傍聴」する形ともいえるが、単なる傍聴ではなく株主が同時配信を通じて総会に「参加」していると捉え、リアル株主総会の「臨場感」を “ある程度” 株主に提供するとともに、後述の「出席型」とは違って質問権の行使は認めないとしても、株主からコメント等をリアルタイムで受け付け、場合によってはこれを会社が任意に当該株主総会の場で取り上げて回答するなど、株主にフレンドリーな対応をすることが可能となるのである。

 インターネット等でつながっている株主に議決権などの株主権の行使まで認めるのが「出席型」である。限りなくバーチャルオンリー株主総会に近づくが、リアル株主総会が同時に開催されている点で決定的な違いがある。「ガイド」はリアル株主総会への出席機会があることを前提に、「出席株主」に一定程度の株主権行使の制約があることを許容する立場をとっている。もとより、「出席型」における株主権の制約については、事前に株主に知らしめることが条件となる。株主権を行使したい株主にリアル株主総会に出席(代理出席)することを選べるようにし、リアル出席しないことで制約を受け入れたとみなすのである。

出典:経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2020年1月26日)6頁

出典:経済産業省「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2020年1月26日)6頁

「出席型」バーチャル株主総会開催のポイント

 「出席型」はインターネット等でつながっている株主に株主権の行使を認める点で、これまでのリアル株主総会実務との違いを設けることの可否が問題となる。たとえば説明義務が生じる質問を株主総会の場においてする権利、動議や議案を提案する権利などの取扱いである。上述のように、「ガイド」における一応の整理は、リアル株主総会が一方で開催されて出席の機会が一応保障されているということを前提にして、権利行使に係る一定程度の制約はやむを得ないというものである。

同一性確認

 従来のリアル株主総会では、議決権行使書面を入場証として利用し、株主総会に出席する株主が基準日時点の株主名簿上の株主であるかを確認してきた。インターネット等を通じて「出席」する株主については、これに代わるものが求められよう。IDとPWの利用が考えられるが、情報セキュリティーの知見を活用した同一性確認手段がさらに採用されてもよい。

事前の議決権行使書面との関係

 リアル株主総会では、株主が株主総会の会場に入場したことによって当該株主の議決権行使書面・電磁的方法による議決権行使は失効すると解されてきた。同制度が出席しない(出席できない)株主が議決権を行使する機会を保障するためのものであると理解されてきたからである。

 「出席型」バーチャル株主総会の場合にログイン時点で失効すると解するのでは「出席型」を認める意味を減殺しよう。議決権行使書面で権利行使をしておいて様子を見にログインし、場合によっては議決権行使の修正をしようという株主がいるかもしれない。「ガイド」では、電磁的方法による議決権行使によりいわば上書きした時点で失効するという解釈をしている。可能な限り、直近の株主意思を尊重する趣旨である。

IT利用の株主からの質問・動議・提案等

 リアル株主総会でも挙手した株主の質問が全部取り上げられないケースはある。議長の議事進行権限行使の在り方の問題である。「出席型」では役員等の説明義務を生じさせる「出席」株主からのインターネット等を通じて会社に送付される質問等の処理が問題となる。これも基本的に議長の議事処理の問題であるが、メール等では総会の場で発言する場合に比べて心理的なプレッシャーが少なく濫用的「発言」が危惧されるという指摘もある。適切な議事運営という観点からは一定程度の制限はあってもよいが、その点も、質問等の処理方法を事前に開示しておくことが望まれよう。

 また「出席型」ではリアル株主総会と違って事前に会社は発言内容を把握でき、会社に不利な発言を取り上げない懸念がある(“チェリーピッキング”)。質問選別の基準を設けて事前に株主に通知しておくことも考えられてよい。即座に答えられない質問等には事後的にHPなどで回答する方法もある。

 動議には修正動議と手続的動議とがあるが、前者は議案提案権の行使であれば(会社法304条)、株主権行使として重要なものであり、慎重な対応が求められる(その賛否を議決するなど)。後者はリアル株主総会では議場株主で対応するものであるが、「出席型」で議場には現実にいない株主には制約があってもやむを得ない。

通信障害回避という難問

 通信障害等を完全に回避することは難しいであろう。そうだとすれば、バーチャル株主総会には、決議取消事由にならないように、通信障害等のリスクへの対応が必須である。令和元年会社法改正における株主総会関係資料の電子提供措置についても、通信障害に関する規定が置かれている(325条の2以下。未施行)。

 株主権行使の機会の保障という観点から、最低限のバックアップ体制の整備等を講じ、かつ、障害発生時の対応策が事前に株主に知らせておけば裁量棄却(会社法831条2項)で対応可能という議論もある。それでは総会実務担当者の不安は完全に払拭できないとの声もあるが、合理的な対応策さえあればバーチャル株主総会を開催できるという実務上のコンセンサスの形成が望まれる。

バーチャルオンリー株主総会への道

「場所」の問題~産業競争力強化法改正案66条

 2021年産業競争力強化法の改正案には「株主総会の場所の定めのない株主総会」の提案が含まれている(66条)。すなわち、上場会社について、「株主総会の場所の定めのない株主総会」とすることが「株主利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定めるところにより、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けた場合」に「株主総会の場所の定めのない株主総会とすることができる旨」の定款規定を置くことを条件に、バーチャルオンリー総会の開催可能性が生まれることとなるのである。

 「場所」に関する理解はそのままに「場所の定めない株主総会」の概念が創設されたのである。

 そして、会社法の延会・続会の「決議」(317条)について、「場所の定めのない株主総会の議事における情報の送受信に用いる通信の方法に係る障害により当該議事に著しい支障が生じる場合には当該場所の定めのない株主総会の議長が当該場所の定めのない株主総会の延期又は続行を決定することができる旨の決議があるときに、当該決議に基づく議長の決定があった場合を含む」という括弧書きが挿入された。

 両大臣の確認を受けた後の株主総会で上記定款変更を行い、かつ、上記括弧書きの決議をしておけば、その会議途中に通信障害が発生したとしても続会等の開催が可能になる仕組みが取り入れられている。

 もっとも、これは産業競争力強化法の対象となるような上場企業を対象とした措置であり、非上場中小企業などを含め、会社法としてどうするかの議論は残されている。なお、経済産業省では、中小企業等協同組合などの「バーチャルオンリー型組合総会・理事会」の開催を可能とする省令改正を行っている(経済産業省ニュースリリース(2021年5月14日))。

株主の権利行使機会をいかに保障するか

 バーチャル株主総会のみが株主権行使の場であり、「出席型」では制限が認められた株主の権利行使の機会をどのように保障するかがバーチャルオンリー株主総会を開催するにあたっての、より直截的な課題となる。バーチャルオンリー株主総会が頻繁に開催されている米国では株主総会の権限が狭いこと、欧州ではコロナ禍の特例で認められたことなど、現状紹介がなされているが、結局のところ日本の会社法制との関係でどうするかである。

 バーチャルオンリー株主総会を開催するとして、株主総会の法的意義を確認し、会議体としての株主総会についてはその実質として最低条件(たとえば決議の場としての実質)が確保されることが重要である。議決権行使については、コーポレートガバナンス・コードにも言及され、将来のプライム市場では義務化されるという電子化の促進(議決権行使プラットフォームへの参加)も必要となってこよう。解決すべき課題は残されている。

おわりに

 すでに今年の6月総会への準備は各社とも整っていると思われる。「参加型」から始めて「出席型」へ、さらに「バーチャルオンリー」へという筋道を考えている会社もあるかもしれない。バーチャル株主総会には株主とのコミュニケーション・ツールとしてのメリットがある。どこにいても株主総会に参加・出席できるからである。議決権行使などとの関連で躊躇があるとしても、このメリットを活用する方向性は是認されてよいであろう。先行事例を参考にしつつ、また問題点を1つひとつ解決していって(立法の必要がある場合もありえよう)、株主と会社の建設的な対話の場としての株主総会の充実を図っていくことが望まれる。

参考文献
  • 澤口実ほか『バーチャル株主総会の実務』(第二版、商事法務、2021年)
  • 尾崎安央ほか「バーチャル株主総会の実施事例」別冊商事法務457号(2021年)
  • 太田洋「バーチャルオンリー株主総会と解禁する産競法一部改正法案の概要と実務対応[上・下]」商事法務2259号16頁(2021年)、2260号40頁(2021年)など

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