ファッションショーと著作権 「Forever21」の事例でみる、ファッションショーにおける著作物性とは

知的財産権・エンタメ

目次

  1. ファッションショーと著作物性
    1. ファッションショーを構成する要素と著作物性
    2. 問題の所在
  2. 事案の概要
  3. 応用美術の著作物性とその要件
    1. 応用美術の著作物性
    2. 本判決の判断
  4. 応用美術が著作物と認められる場合の要件
    1. 実用目的と美的特性とを区別する考え方
    2. 応用美術を通常の著作物と区別しない考え方
    3. 応用物の著作物性を認めた場合の問題点
  5. 非区別説に立った場合の本件ショーの著作物性
  6. 実演該当性について
    1. 本ショーの構成要素と実演
    2. 実演の意義と内容
  7. ファッションショーは「芸能的な性質を有するもの」といえるのか
    1. ファッションショーの目的
    2. ファッションショー全般について実演該当性がないといえるか

(写真: Jordan Tan / Shutterstock.com)

ファッションショーと著作物性

ファッションショーを構成する要素と著作物性

 ファッションショーは、モデルのメイクや髪型、衣装やアクセサリーを含めたファッションのコーディネート、ランウェイを歩く際のモデルの振り付けやポージングなどの動作、ショーに使用される音楽や映像を含む全体の組み合わせ等によって構成されるが、それぞれ著作物性(応用美術・編集著作物)や実演該当性(舞踊・無言劇)はあるのだろうか。

 本件は、ファッションショーの著作物性に関して、正面から検討した我が国初の判断である。

問題の所在

 本件で問題となった点は大きく2つある。1つは実用品や、産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)が著作物に該当するかどうかという点である。もう1つは著作権法2条3号に定める「実演」にファッションショーが含まれるかどうかという点である。

 もし、著作物に該当し、侵害行為があった場合には、損害賠償の請求、不当利得の返還請求、名誉回復などの措置の請求が認められることとなる。

事案の概要

(写真:March Marcho / Shutterstock.com)

原告
X1:ファッションショーの主催者
X2:ファッションショーの企画、開催をした者

被告
Y1:「Forever21」の日本におけるプロモーションの代理店
Y2:テレビ局

 X2は、X1に依頼されて、平成21年6月、ファストファッションで著名なブランド「Forever21」の衣装等を使用したファッションショー(以下「本件ショー」という)を企画し、開催した。本件ショーでのモデルの化粧・髪型・衣服のコーディネート・振り付け・出演順序等の状況は末尾に記載した表のとおりである。本件ショーは、ファッション専門のテレビチャンネル(以下「専門TV」という。)がXらの許諾を得て撮影した。

 Y1は、Y2より本件ショーの映像データの提供を依頼され、専門TVを紹介した。Y2は専門TVから本件ショーの映像データの提供を受け、同年6月12日、自らのテレビ番組(以下「本件番組」という)で当該映像データの一部(以下「本件映像部分」という)を約40秒間放送した。

 これに対しXらは、下記より構成される本件ショーの個々の構成要素に著作権があると主張し、本件番組の放送により、X1の著作権(著作権法23条1項に基づく公衆送信権)および著作隣接権(同法92条1項に基づく放送権)ならびにX2の著作者および実演家としての氏名表示権(同法19条1項に基づく著作者としての氏名表示権につき、同法90条の2第1項に基づく実演家としての氏名表示権につき)が侵害されたとして、Yらに対し、損害賠償請求訴訟を提起した。

Xらによって著作権があると主張されたファッションショーの構成要素
  1. モデルの化粧・髪型のスタイリング
  2. 衣服の選択・相互のコーディネート
  3. アクセサリーの選択・相互のコーディネート
  4. ポーズの振り付け
  5. 衣服を脱ぐ動作の振り付け
  6. 化粧、衣服、アクセサリー、ポーズ、動作のコーディネート
  7. モデルの出演順序・背景に流される映像

 裁判所は冒頭のとおり、原審・控訴審ともXらの請求を棄却した。

応用美術の著作物性とその要件

応用美術の著作物性

 本件ショーでモデルが着用していた衣服やアクセサリー等は「Forever21」において大量生産された既製品であり、実用に供され、産業上利用されることが予定されている美的創作物(いわゆる応用美術)である。

 このような、美術工芸品等の観賞を目的とするもの(著作権法2条2項)以外の応用美術の著作物性について、多くの裁判例は、著作権法2条2項は単なる例示規定であり、量産される美術工芸品であっても、美術の著作物として保護される場合があると判断しており(最高裁平成10年(受)第332号。同12年9月7日第一小法廷判決・民集54巻7号2481頁他)、学説上も同様の見解が多数を占める。

本判決の判断

 では応用美術が著作物と認められる要件は何か。
 本判決は、「実用目的の応用美術であっても、実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるものについては、上記2条1項1号に含まれる『思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物』と客観的に同一なものとみることはできるのであるから、当該部分を上記2条1項1号の美術の著作物として保護すべきである……実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができないものについては、……『思想又は感情を創作的に表現した(純粋)美術の著作物』と客観的に同一なものとみることはできないのであるから、……著作物として保護されないと解すべきである」という基準を示した。

実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握することができるか

 その上で、本件ショーにおけるモデルの衣服・アクセサリー等はそのほとんどが「Forever21」の既製品を使用しただけであり、Xらのデザインによるものではないこと、パーティ等において実用されることを想定していること、メイクや髪型も衣服やアクセサリーとのコーディネートを想定する実用的なものであること等から、「それ全体が美的鑑賞を目的とするものではなく……実用目的のための構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えた部分を把握できるものでもない」と認定し、構成要素1、2、3、6(ただし、6についてはポーズおよび動作の部分を除く)に関して著作物性を否定した。

応用美術が著作物と認められる場合の要件

実用目的と美的特性とを区別する考え方

 本判決は、応用美術の著作物性につき「実用目的に必要な構成と分離して、美的鑑賞の対象となる美的特性を備えている部分を把握できるかどうか」という基準を採用したものである。これはいわゆる区別説(純粋美術同視説)のうちの分離可能性論的な解釈に近い考え方である。

 すなわち応用美術を通常の著作物と区別して考え、著作物性を認める要件として、純粋美術と同視しうることを求めるものであり、その判断方法として、美的表現において制約を受けていないか、実用性や機能と分離できるか否かを重視する見解である(京都地裁平成元年6月15日判決・佐賀錦袋帯事件など)。

応用美術を通常の著作物と区別しない考え方

 これに対し、非区別説という、応用美術を通常の著作物と区別せず、通常の意味での創作性があれば著作物性を肯定する見解がある。一般的にはこの見解の方がより応用美術の著作物性を認めやすいように思われる。

 このファッションショーに関する知財高裁判決後に出された平成27年4月14日の知財高裁判決は、非区別説に立ったものであると思われる。

 この事案では、ノルウェーの著名デザイナーのデザインにかかる幼児用いすの著作物性が問題となったが、裁判所は「応用美術は、装身具等実用品自体であるもの、家具に施された彫刻等実用品と結合されたもの、染色図案等実用品の模様として利用されることを目的とするものなど様々であり……表現形態も多様であるから、応用美術に一律に適用すべきものとして、高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず、個別具体的に、作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである」として当該幼児用いすの著作物性を認めた。

参考:裁判例から見る 企業が犯しやすい著作権侵害

応用物の著作物性を認めた場合の問題点

 しかしながら、応用美術の著作物性を容易に認めることになると、不正競争防止法2条1項3号(形態模倣)で3年と保護期間を限定している趣旨や意匠法との関係がより問題となりうるし、実用品に多数の権利が発生するとなると権利関係が錯綜し、日常生活に支障をきたすおそれもある(写真等への写り込み問題の多発、レンタルビジネスにおける貸与権の許諾等)。

 なお、その後出された平成27年9月24日大阪地裁判決(ピクトグラム事件)や平成28年1月14日の東京地裁判決(携帯型加湿器事件)は、いずれも区別説に立ち、分離可能論的な解釈を意識した規範を用いている。

非区別説に立った場合の本件ショーの著作物性

 もっとも、「個別具体的に、作成者の個性が発揮されているか否か」という上記平成27年4月14日知財高裁判決の判断基準に立ったとしても、本件ショーの場合は、パーティ等の日常生活において実用されることを想定した内容であり、しかも表現の選択の幅が1つのブランドの既製品に制限されている点で、パーティ―用のメイク・髪型を含め、主催者や企画者ら作成者の個性を見出すことは難しいので、本件原審および控訴審判決と同じ結論になったのではないかと考える。

 また、本判決では、構成要素4、5、6のモデルのポーズや動作は「特段目新しいものではない」「作成者の個性が表現として表れているものとは認められない」として振り付けの著作物性を否定した。

実演該当性について

本ショーの構成要素と実演

 本判決は、ポーズ・動作の振付けを著作物と認めず、その帰結としてモデルの動作等は、「著作物を…演ずる」(著作権法2条1項3号)ことに該当せず、実演には該当しないとした。

 また、本件ショーは「著作物を演じないが芸能的な性質を有するもの」(著作権法2条1項3号)に該当するとの控訴人の主張に対しても、「その態様もありふれたもの」であるとしてこれに該当しないと判断した。

実演の意義と内容

実演とは

 実演とは、「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演じること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む)」をいう(著作権法2条1項3号)。

 ファッションショーでは、音楽をバックに、モデルが服飾品を身にまとって、舞台に登場して歩き、一定のところで止まり、向きを変えて退場していくということを繰り返す。特にバックの音楽に合わせているわけではない。ファッションショーの目的は、聴衆に服飾品の魅力を伝達することにあり、基本的に、聴衆は登場するモデルによる動作・振り付けを楽しむものではない。実際、登場するモデルは、ファッションショーにおいて、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演じているとは言いがたい。

 したがって、ファッションショーの実演該当性の有無は、ファッションショーそれ自体が「芸能的な性質を有する」といえるか否かによって判断されることになるのではないかと考えられる。

芸能的性質を有するものとは

 しかしながら、「芸能的性質を有するもの」とは何かという判断基準について明示した裁判例は今のところ見当たらず、本件の原審および控訴審においても言及はない。

 学説上は、具体例として、奇術・曲芸・腹話術・物真似などを挙げている。また、アクロバットショーやスケートのアイスショーなども「芸能的性質を有するもの」として考えられている一方で、体操の床運動や競技としてのフィギュアスケートはこれに該当しないと考えられているようである。

 「芸能」という言葉の定義について、『広辞苑〔第6版〕』(岩波書店、2008年)は、「①体得し体現できる芸。また、身につけた芸の能力。②映画・演劇・音楽・歌謡・舞踏などの大衆的な演芸」と定義していることからすると、上記保護対象に挙げられているものについては首肯することができる。

 もっともアイスショーであれば実演として法的に保護され、競技会であれば実演として保護されないというように、プロかアマか、競技会かショーかなど行為者や行為の「属性」で単純に「芸能的性質を有するもの」かどうかを区別するのは、例えば同じ音楽に同じ振り付けでも「芸能的性質を有する」ことになる場合とそうでない場合が生じることになり、不自然である。

 むしろ本判決の応用美術の考え方と同様に、競技であっても少なくとも独創的な表現によって聴衆に対し一定の思想感情を訴える部分、すなわち「演じる」部分を分離して、これについては「実演」に該当するとしたうえで、競技会における他の選手による模倣については著作権法第38条1項等の解釈によって救済されるという考え方はできないであろうか。

ファッションショーは「芸能的な性質を有するもの」といえるのか

ファッションショーの目的

 ファッションショーは、服飾の作品発表、または、流行の発信や販売促進などを目的にモデルに服を着せて、舞台等で観衆に提示する行為である。目的はモデルそのものではなく、モデルが身に着けている服飾である。通常のファッションショーの場合、前述のとおり、モデルは、一定の定型的なポーズと動作を行うのみであり、流れている音楽に合わせて演じたり、舞ったりしているわけではないから、演芸的な要素は乏しいと言える。

 他方で、モデルが着用している服をより魅力的に見せるために、モデルのメイクや髪型などに日常生活レベルのアレンジを超えた工夫を凝らし、また音楽や照明その他の演出をはじめとするショーの構成も単なる服飾の作品発表に留まらず、当該デザイナーの独創的な世界観(思想感情)を聴衆に対し明確に訴えているファッションショーもある。

ファッションショー全般について実演該当性がないといえるか

 したがって、筆者は、 ファッションショーに関して、ひとくくりに判断するべきではないと考える。個別のファッションショーごとに、音楽・背景・服装・順序・モデルの動き等を含めて一つのまとまりのある舞台として一定の芸術的な世界観を表現している場合には、芸能的な要素があるとして、その中で演じるモデルの動作等に関して実演と評価する余地もあるように思われる。

 実際、「ファッション・ショーなども、公衆に鑑賞させることを目的とする場合には、芸能の性質を有するものを演ずる者(狭義の芸能家)に含めても良いのではないか…」との意見もある(胡雲紅「著作権法における実演家の定義及び範囲に関する研究」(横浜国際社会学研究第13巻第6号、2009)40頁)。

 本件の場合は、大量生産のいわゆるファストファッションを題材とした、観客がそのまま日常生活で使える、極めて実用的な内容のショーであり、都会やリゾートでのパーティという日常の一場面を切り取ったテーマ設定も、その動作やポーズについても特段目新しいものはなかったものである。加えて、問題となった本件映像部分はわずか40秒という短さであり、ひとまとまりとしての実演であるとは到底認められないものであったので、本判決の結論をもってファッションショー全般について実演該当性がないというものではないと考える。

参考:以下、本件ショーでのモデルの化粧・髪型・衣服のコーディネート・振り付け・出演順序等の状況

髪型 化粧
A 下ろした髪全体を後ろに流した髪型 アイシャドーやアイライン、口紅等を用いた華やかな化粧
B 緩やかにカールを付けた髪を下ろした髪型
C 耳上の髪をまとめ、耳下の髪にカールを付けて下ろした髪型
D 全体に強めにカールを付けて下ろした髪型
コーディネートの内容
A 黒のレース素材のトップス、豹柄のスカート、黒のベルト、紫色の輪状の耳飾り及び黒のヘッドドレスの組み合わせ
B 白地に黒の水玉模様のワンピースに黒のベルト、パールネックレス、ピンクと黒のヘッドドレスの組み合わせ
C 緑色のワンピース、銀色の腕輪、黒のヘッドドレスの組み合わせ
D 黒のワンピースと黒のヘッドドレスの組み合わせ
E 黒の毛皮のコート、紫色のトップス、黒のスカート、紫色のバッグ、ヘッドドレスの組み合わせ
ポーズおよび動作の振り付けの内容
A モデルが手を前後に大きく振りながら歩き、立ち止まって両手を腰に当てた上で、腰を向かって左、右の順にゆっくりと大きくひねる様子
B モデルがゆっくりと前方に歩く様子
C モデルが両手を腰に当てて歩き、立ち止まって、手を腰に当てたまま、肩を揺らす様子
D モデルが腕を下ろして揺らしながら歩き、やや斜め前方を向いて立ち止まって、左右に向きを変えながら肩と下ろした腕を揺らす様子
E モデルが左手に持った紙袋から右手で中身を出し、左手に移し替えた上、右の手の平を広げて耳に当て、さらに、体の横で両手の平を上に向けて観客をあおるようなそぶりをした上、左手に持っていた物を右手で投げる様子
F モデルが両手を腰の高い位置に当てて歩き、立ち止まって体をひねった後、後ろを向き、歩きながら毛皮のコートを脱ぐ様子
出演順序の内容
A 8名のモデルが、それぞれ2着ないし3着(合計20通り)の衣装を身に着けて出演
B 出演順序は、モデルの着替え時間やギフト配布のタイミング等の便宜的な要素を考慮して決定
C 出演順序は、ドレスの順序(モノトーンの次は明るい色彩に、その次はシックに、その後は再びカラフルに等)も考慮して決定

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