基礎からみたPFI

第4回 PFI事業における資金調達

不動産

目次

  1. プロジェクト・ファイナンスの手法による資金調達
    1. PFI事業における資金調達
    2. プロジェクト・ファイナンスという手法
  2. プロジェクト・ファイナンスを通じたリスク管理
    1. リスク管理の必要性
    2. リスク管理の具体的手法

 「第3回 PFI事業に関わるコンソーシアムとSPCの活用」では、PFI事業に関わる民間事業者のグループである「コンソーシアム」やそのメンバーにより設立されるSPCの位置づけおよび活用について解説しました。
 今回は、SPCがPFI事業を実施するにあたり行う資金調達に関し、「プロジェクト・ファイナンス」の手法によることを踏まえたスキーム構築上のポイントについて解説します。

プロジェクト・ファイナンスの手法による資金調達

PFI事業における資金調達

 従来型の公共事業では、施設の設計・建設等の際に必要な費用を起債や補助金といった公的資金で対応してきたのに対し、PFI事業では、事業者であるSPCが自ら金融機関から借入れを行い必要な資金の調達を行うことになります。
 これにより、公共としては、建設期間中の必要資金を一挙に拠出するのではなく、サービスの対価という形で分割してSPCに支払うことが可能となります。
 SPCは、公共から支払われるサービス購入費や公共サービスの提供により得られる利用料金収入(「第2回 PFIの事業類型」で触れた「混合型」や「独立採算型」の場合)を原資として金融機関に対し借入金を返済することとなります。

プロジェクト・ファイナンスという手法

 SPCによる資金調達は、いわゆる「プロジェクト・ファイナンス」という手法により行われることになります。ここで「プロジェクト・ファイナンス」とは、PFI事業という特定のプロジェクト(事業)に対するファイナンスであって、そのファイナンスの利払いおよび返済の原資を原則として当該プロジェクトから生み出されるキャッシュフロー(収益)に限定し、そのファイナンスの担保を当該プロジェクトの資産に依存して行う金融手法であると説明されます 1
 すなわち、PFI事業を行うSPCに対して融資を行う金融機関の立場からすると、SPCやその背後のコンソーシアムメンバーの会社としての信用力を基礎に融資を行うのではなく、PFI事業という特定の「プロジェクト」から生み出される収益に着目して行う融資であるといえます。

プロジェクト・ファイナンス

プロジェクト・ファイナンスを通じたリスク管理

リスク管理の必要性

 プロジェクト・ファイナンスの手法による場合、金融機関にとって資金回収の可能性は特定のプロジェクトの成否にかかってくるため、プロジェクトに関する各種リスクを適切に検証・分類したうえで管理を行う必要があります。
 PFI事業に則して考えると、公共とSPCとの間で事業契約上行ったリスク分担(「第3回 PFI事業に関わるコンソーシアムとSPCの活用」参照)上、SPCが負うこととなる事業リスクに関しては、最終的には金融機関がこれを負担せざるを得ない場面が生じることから、リスクの種類等に応じた適切な手当および管理が重要となってきます。

リスク管理の具体的手法

① SPCの倒産隔離措置

 まず、SPC自身に倒産リスクがあっては事業遂行がままならないため、SPCの倒産隔離措置が施されていることは、ファイナンスにあたっての絶対条件となります。具体的には、コンソーシアムメンバーからSPCに派遣される各役員に倒産不申立ての誓約書を提出させ、SPCとコンソーシアムメンバーとの間の各委託契約においてSPCの債務はPFI事業に関連し保有する資産のみを責任財産とする旨の特約やコンソーシアムメンバーの倒産申立権放棄等を規定することにより、SPCに倒産手続開始原因が生じることおよび倒産申立てがなされることを防止することになります。

② SPCの事業実施に関する保険契約の締結・維持

 また、SPCが事業期間中に負うことのある損害や第三者に対して生じた損害をカバーすべく、適切な保険契約を締結することもリスク管理のうちの1つといえるでしょう。

③ 金融機関による事業遂行のモニタリング

 次に、事業契約に基づき公共が実施する事業モニタリングに加え、金融機関自身も事業が計画どおり遂行されているかをモニタリングすることが重要となります。具体的には、貸付契約において、契約締結時および貸付実行時における表明および保証、貸付実行にあたっての前提条件、弁済完了までの遵守事項の各規定を置き、SPCによるこれらの規定の遵守状況を確認することを通じて、金融機関自身が事業遂行を監督することになります。

④ SPCから民間事業者に対する業務実施リスクの転嫁

 また、第3回で触れたように、事業主体はSPCであるものの、実際の業務はコンソーシアムメンバーである各民間事業者に対して委託することにより実施されるため、PFI事業の円滑かつ確実な遂行という観点からは、SPCから民間事業者に対する当該委託の過程において、SPCの下に各業務に関する実施リスク(SPCが事業契約に基づき公共に対して負っている義務)が残存しないよう、民間事業者に対してすべて転嫁されていることが重要となります。

⑤ ステップ・インの確保

 仮にSPCから業務受託を受けたコンソーシアムメンバーの経営不振や倒産等により事業が停止するなど、計画どおりに事業遂行が行われない場合には、サービス購入費の支払が停止したり、事業契約が解除される事態にもなり得ます。そこで、新たなメンバー構成による事業継続を速やかに実現できるよう、株式担保実行による株主交代またはプロジェクト関連契約(PFI事業に関連する各種契約のうち融資関連以外の契約をいいます)上の地位の移転による事業者自体の交代を金融機関主導で行う(「ステップ・イン」)権利を確保しておくこともリスク管理上重要となります。

リスク管理手法のまとめ
  • SPCの倒産隔離措置
  • SPCの事業実施に関する保険契約の締結・維持
  • 金融機関による事業遂行のモニタリング
  • SPCから民間事業者に対する業務実施リスクの転嫁
  • ステップ・インの確保

 次回は、PFI事業のプロジェクト・ファイナンスに関して締結されることとなる契約について解説します。


  1. 「契約に関するガイドライン―PFI事業契約における留意事項について―」(2003年(平成15年)6月23日、2019年10月28日最終閲覧)4頁 ↩︎

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