基礎からみたPFI
第2回 PFIの事業類型
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目次
「第1回 PFIとはどのような手法か」では、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ:民間資金等活用事業)の意義、それに類似するPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:官民連携事業)という概念について説明しました。今回は、PFIの事業類型について取り上げます。
PFI事業は、①事業収益の観点、②PFI事業の対象となる施設の所有形態の観点から、以下のとおり分類されます。
PFI事業者の収益の観点(3類型)
PFI事業においては、PFI事業者(以下、PFI事業の実施主体となる民間事業者をいいます)が自ら資金調達して公共サービスを提供することになります。PFI事業者が当該公共サービスの提供によりどのように事業収益をあげるかという観点から、以下の3つのように分類されます。いずれの類型を選択するかは、その事業の性質やPFI事業者の採算性確保等の観点から決定されます。
サービス購入型
サービス購入型とは、国または地方公共団体(以下「公共」といいます)がPFI事業者による公共サービスの対価として「サービス購入費」を支払い、これがPFI事業者の事業収益となる類型です。庁舎等の公共施設の整備等に広く用いられる方式であり、事業収益は公共から支払われるサービス購入費のみとなります。
混合型
混合型とは、公共から支払われる「サービス購入費」と、公共サービスの提供によりその利用者から支払われる利用料金収入の双方がPFI事業者の事業収益となる類型です。運動施設のように、利用者から利用料金を徴求して運営するタイプの施設などに用いられる方式です。施設の建設・改修等にかかる対価については公共からサービス購入費という形で支払われ、サービス運営期間については、公共からのサービス購入費に加え、利用料金収入により収益をあげることとなります。
独立採算型
独立採算型とは、公共からの「サービス購入費」等の支払いはなく、公共サービスの提供によりその利用者から支払われる利用料金収入がPFI事業者の事業収益となる類型です。空港旅客ターミナルビルの整備等に用いられる方式であり、この場合、航空旅客からの空港使用料等が事業収益となります。
(2005年6月27日公表、2019年9月12日最終閲覧)を参考に編集部作成
PFI事業の対象施設の所有形態の観点(3方式)
また、PFI事業は、対象となる施設の所有形態によって下記表のとおり分類されます。
設計建設期間 | 運営開始 | 維持管理、運営 | 事業終了 | |
---|---|---|---|---|
BTO方式 | 民間 | 公共へ所有権移転 | 公共 | 公共 |
BOT方式 | 民間 | 民間 | 民間 | 公共へ所有権移転 |
BOO方式 | 民間 | 民間 | 民間 | 民間 |
コンセッション方式 (※上記3方式とは異なる) |
公共 | 公共 | 公共 | 公共 |
「BTO」方式
「BTO」方式は、PFI事業者が施設を建設(Build)し、その後施設の所有権を公共に移転(Transfer)したうえで、PFI事業者が施設を維持管理、運営(Operate)する方式です。施設の所有権を移転する際に建設費が支払われることが多く、PFI事業者にとっては事業当初の大きな負担が軽減されるなどのメリットがあります。
「BOT」方式
「BOT」方式は、施設の設計・建設(Build)から維持管理、運営(Operate)の期間中を通じ施設の所有権をPFI事業者が保有し、事業終了後に公共に所有権を移転(Transfer)する方式です。施設所有権がPFI事業者にあるため、柔軟な施設管理が可能になるなどのメリットがあり、PFIの典型的な事業方式になっています。
「BOO」方式
「BOO」方式は、PFI事業者が施設を建設(Build)し、そのまま所有(Own)したうえで、施設を運営(Operate)する方式をいいます。BOT方式と異なり、事業終了後も公共へ所有権を移転させず、単独で事業を継続するか、または施設を撤去し事業を終了させることになります。
その他
なお、上記分類とは異なりますが、下記4で説明する「コンセッション」方式では、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(以下「PFI法」といいます)に基づく当該制度の仕組み上、事業開始前後を通じ公共が所有権を保有し続けることになります。
コンセッション方式という新たな潮流
上記で述べた伝統的なPFI事業とはやや毛色の異なるものとして、コンセッション方式という新たな潮流も存在します。利用料金の決定等を含め、民間事業者による自由度の高い事業運営を可能とするため、2011年(平成23年)のPFI法改正により導入された制度です 1。
「利用料金の徴収を行う」公共施設のみを対象とし、施設の所有権を「公共が有したまま」、施設の「運営権」(施設の設計、建設等は含まれない)を民間事業者に設定する点に特徴があります。公共は利用料金の決定を含め、施設の運営等を民間事業者に委ねて、当該利用料金を民間事業者が自ら収受することになります。
PFI法上、民間事業者は公共から「公共施設等運営権」(同法2条7項)の設定を受けることにより事業を実施することになりますが、当該「公共施設等運営権」は、PFI法に基づき「物権」とみなされ、原則として不動産に関する規定が準用される(同法24条)ため、PFI事業者に対する融資金融機関が当該公共施設等運営権に対し抵当権を設定することが可能となっています。
【コンセッション事業スキームイメージ】
(2018年10月2日公表、2019年9月12日最終閲覧)
上記のほか、コンセッション方式については独自の論点が多く存在しますが、本連載のテーマ上、ここには深く立ち入らないものとし、コンセッション方式以外の伝統的なPFI事業を前提とした説明をします。
次回は、PFIの基本構造について、PFI事業に関わるコンソーシアムやSPCの活用等に触れながら解説します。
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PFI法改正当初はあまり利用されていなかったものの、近時では空港事業を中心にコンセッション方式の事業が実施されつつあります。 ↩︎
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