基礎からみたPFI

第1回 PFIとはどのような手法か

不動産

目次

  1. はじめに
  2. PFIとは何か
  3. PFIに類似するPPPはどのような概念か

はじめに

 我が国では、1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(以下「PFI法」といいます)が制定されました。その後、数度の改正を経て、同法に基づく公共施設等の整備等(同法2条2項)に関するPFIスキームの活用が徐々に定着し、近時では、コンセッション方式(「公共施設等運営事業」。同法2条6項)という新たな潮流も生じてきています。

 本連載では、PFI事業に参入されていない事業者の方々にとっても「PFIとは何か」が端的に分かるよう、PFIの意義や基本構造を押さえたうえで、PFI事業を進めるにあたってのスキーム構築上の法的留意点を解説したいと思います。既にPFI事業に参入されている事業者の方々にとっても、基本構造に立ち返ることで、適切なリスク管理を踏まえたスキーム構築の一助となれば幸いです。

PFIとは何か

 PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ:民間資金等活用事業)は、民間の資金とノウハウ(経営手法、技術およびアイデア等)を活用して、公共施設等の設計および建設(整備)や公共施設等の維持管理および運営を行う手法です。
 公共施設等の老朽化、公共の厳しい財政状況や人口減少といった我が国の現状に照らすと、適切な公共サービスの維持のためには、公共施設等の建替え・改修や運営にかかるコストを削減するとともに、施設の集約化等による広域管理のニーズがあると考えられます。これらのニーズに応えるには、公共サービスの提供を民間主導で進めることで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を企図するPFIの活用が有益と考えられます。

 従来の公共事業では、公営住宅、学校、医療施設等の公共施設や、空港、上下水道等の公共インフラの整備にあたって、国または地方公共団体(以下「公共」といいます)が設計、建設および運営等の具体的手法を決定したうえで、個別に民間事業者に発注していました。そうではなく、これらを一括して行う場合の具体的手法にかかる提案、資金調達および実施をすべて民間事業者自身に行わせることで、事業全体の効率的なリスク管理や事業コストの削減を実現しうる点にPFIの特徴があります。

【従来型公共事業とPFI事業の違い】

従来型公共事業とPFI事業の違い

出典:内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)「PPP/PFIの概要
(2018年10月2日公表、2019年9月12日最終閲覧)

 PFIでは、公共が入札方式で民間事業者を選定するのが一般的です。民間事業者選定において、公共は公共施設等に求めるサービス水準(要求水準)を示すに留まり、これに応募する民間事業者(候補者)が自らの創意工夫により要求水準を満たす具体的手法を競争提案し、選定を受けることとなります(PFI法8条2項)。

PFIに類似するPPPはどのような概念か

 PFIに類似する概念として、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:官民連携事業)と呼ばれるものがあります。これは、公共と民間事業者が連携して公共サービスを提供する手法であり、公共から民間への業務委託、公設民営方式、第三セクター等が広く含まれます。PFIもPPPの代表的な手法ということができます。

【PPP(Public Private Partnership:官民連携事業)とは】

参考資料3)PPP(Public Private Partnership:官民連携事業)とは

出典:内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)「PPP/PFIの概要
(2018年10月2日公表、2019年9月12日最終閲覧)

 旧来からのPPP手法としては、第三セクター方式(公共と民間が共同出資して設立された法人による事業)があげられますが、これについては、公共側に依存した資金調達や、曖昧なリスク分担といった問題点が指摘されてきました。一方、PFIは、後述のとおり、民間主導でのプロジェクト・ファイナンスによる資金調達や、事業契約等での緻密なリスク分担およびリスク管理によって、これらの問題点を解決しうる手法といえます。

出典:内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)

出典:内閣府 民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)「PFI事業導入の手引き(基礎編)Q3 民間の活力を活用した事業方式
(2005年6月27日公表、2019年9月12日最終閲覧)を参考に編集部作成

 次回は、PFIの事業類型について、事業収益の観点とPFI事業の対象となる施設の所有形態の観点から解説します。

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