ユーザーの使いやすさを追求したVDR「AOSデータルーム」
危機管理・内部統制
AOSリーガルテックは5月30日、バーチャルデータルーム(VDR)「AOSデータルーム」の製品発表会を開催した。
従来、M&Aのシーンで利用されることの多かったVDRだが、同社はその利用シーンを広げ、機密書類を外部のパートナーや契約先、規制機関等と安全にやり取りするためのソリューションとして同製品を開発した。2017年10月からテストマーケティングを始め、機能拡充を続けており、現在はVer4.0となっている。
VDR市場ナンバーワンを目指す

1995年よりAOSグループはデータ復旧やデジタルフォレンジック、eディスカバリといった分野で事業を展開してきた。同社がVDR事業に参入した理由について、AOSグループ代表の佐々木 隆仁氏は次のように語った。
「日本では未だにCONFIDENTIALと判が押された封筒に機密情報等を入れてやりとりしている企業がある。デジタル時代のこれからは、日本の商習慣や企業文化に基づいたVDRが求められるだろうと考え、VDR事業に参入した。実際に、これまでVDRを利用してきた方の声を聞くと、使い勝手がよくない・価格が高い・サポートがよくないといった不満が多く、仕方なく海外製品を利用している状況だということがわかった」
なぜそれほどまでに不満の多いVDRが多かったのか。その理由は、これまでVDRが主に企業のM&Aにおいて利用されていたことから、投資銀行等がVDRベンダーと契約していたことに原因があるという。つまり、サービスの利用者であるM&Aの買い手の視点で設計されたサービスではなかったことから、使い勝手の悪いものが多かったようだ。
「我々は、利用者の声を聞いて、いかに使いやすいものを作ることができるかどうかが、この市場でナンバーワンの地位を獲得するうえで重要だと考え、機能拡充を進めている」(佐々木氏)
「AOSデータルーム」の特長
「AOSデータルーム」の特長として、AOSリーガルテック VDRカンパニー長の金丸 尚樹氏は5つのポイントをあげた。
①弁護士のアドバイスをもとに開発
「AOSデータルーム」は同社の顧問弁護士である田辺総合法律事務所の吉峯耕平弁護士によるアドバイスのもと、日本企業から求められるであろう機能が搭載されている。一例としてあげられたのがプリント機能だ。金丸氏は「紙をなくすためにVDRを提供してはいるものの、プリントアウトしたいという企業ニーズは高い」と説明した。同製品は、単純な印刷機能だけでなく、印刷物に透かしを入れることも可能だ。下の写真のように、利用者のアドレスを載せるような設定にすることで、万が一情報が流出した際に流出元を突き止めることができる。
②簡単に使える
直感的なインターフェースのため、操作するうえでの特別なトレーニングは不要だ。
ユーザーは権限の付与されたルームにアクセスすると、以下の画面が表示される。左にルーム内のフォルダが階層形式で表示され、選択したフォルダに格納されているドキュメントが隣に表示される。ドキュメントを選択すると、さらに隣にドキュメントの中身が表示される。一番右側のエリアでは選択しているファイルに対してタグがつけられるようになっている。
パソコンのローカル環境からファイルやフォルダーごとドラッグ&ドロップでアップロードすることができるため、利便性もよい。
③低コスト
金丸氏によると「従来のVDRサービスに比べて6分の1の低コスト」だという。「AOSデータルーム」の価格は、容量無制限で1ライセンスあたり5,000円(税別)/月となっている。
④クラウド・オンプレミス双方に対応
企業のニーズにあわせた柔軟な対応が可能となっている。
⑤セキュリティ対策
同社は第10回ニッポン新事業創出大賞で経済産業大臣賞を受賞している。金丸氏は「1999年から我々は警察や法律事務所、法務部の依頼に基づいて犯罪捜査や情報漏えいの調査を行ってきた。業界屈指のセキュリティガバナンスを持っている」と同社の技術力について説明した。
また、「AOSデータルーム」のサーバは国内に用意されている。金丸氏によると、海外の大規模クラウド事業者が提供するサービスの場合、自分のデータがどの国に設置されたサーバに保存されているのかを特定できない場合があるという。「過去に、アメリカのベンダーに仕事を任せてデータをアメリカのサーバに保管していた日本企業が、訴訟の際にアメリカ司法省からデータを差押えされてしまった」というケースもあるようだ。「AOSデータルーム」は国内のサーバを利用しているため、この点の不安は払拭できる。
「AOSデータルーム」のロードマップ
「AOSデータルーム」は、2018年第3四半期でVer4.1〜4.2のリリース、第4四半期でVer4.3のリリースを予定している。
Ver4.1〜4.2で拡充される機能としては以下が予定されている。
- ダッシュボード
- 仕分けルール機能
- 文書ロック・承認アンロック
- モバイルデバイス対応
- モバイルアプリダウンロード(iOS/Android)
Ver4.3で拡充される機能としては以下が予定されている。
- AIによるデータ解析・自動通知
- 類似フレーズ自動比較
- 自然言語エンジン
- 個人情報自動文書ロック
- 自社内運営(オンプレミス)対応
今後のポイントは「自動化」という点だろう。「仕分けルール機能」では、特定のワードが記述されている資料がアップロードされると、自動でフォルダに仕分けされ、あらかじめ設定しているユーザーへ通知されるようになる。AIによるデータ解析の機能が実装されると、契約が切れる前の契約書が自動で通知されるようになるという。金丸氏は「既存のVDRはアップロードされたドキュメントを見るだけ。我々は企業で使うドキュメントの管理をどう生産効率を上げるかといった点に着目している。AOSデータルームは次世代のVDRだ」と語った。
(取材、構成:BUSINESS LAWYERS編集部)