東京・新潟の弁護士会、初の災害協定 企業のBCP策定にどう生かすか

危機管理・内部統制

目次

  1. 信頼関係、人的関係の醸成を中心的なテーマにした取り組み
  2. 平常時から取り組みを開始することが重要

 9月14日、新潟県弁護士会と第二東京弁護士会が全国で初めて災害時に協力する協定を結んだ。
 自然災害が起きたとき、被災者が直面する法律問題は多岐にわたる。平成23年に発生した東日本大震災では1年間の間に40,000件を超える法律相談を実施(日本弁護士連合会集計、2012年5月分析)、法律支援制度の創設、改善によって被災者の法的ニーズに対応してきた。
 今回の協定締結によって、広域に連携した防災活動、大規模災害が発生した場合の両弁護士会による安否確認、業務継続対応が可能となる。

 会見で、第二東京弁護士会の伊東 卓会長は「災害発生時の初動対応と長期的に支援するうえでの課題について情報交換をし、首都直下地震の対応に生かしたい」と話し、新潟県弁護士会の兒玉 武雄会長は「第二東京弁護士会の会員はおよそ5,000人で人材も豊富、支援は心強い」と話した。

 自然災害発生時に、事業を継続させる課題を抱える企業においても、両弁護士会の取り組みは参考となりそうだ。協定締結の背景、効果と企業が参考とするべきポイントについて、協定締結の中心となった第二東京弁護士会災害対策委員会委員長で、BCP(事業継続計画)に詳しい中野 明安弁護士に聞いた。

信頼関係、人的関係の醸成を中心的なテーマにした取り組み

どのような経緯で協定締結に至ったのでしょうか。

 大規模災害の直後は被災者の人権が侵害されるリスクがあるので、弁護士・弁護士会は早期に基本的人権の擁護のための相談活動を行う必要があります。しかし、その際に弁護士会が機能不全に陥っていては役割を果たすことができません。そこで、災害時でも弁護士、弁護士会としての業務継続を果たし、被災者支援に尽力できる仕組みが必要と考えました。

 第二東京弁護士会は、首都直下地震等大規模災害が発生した際にも業務を継続し、司法機能の維持に貢献できるよう、以前から業務継続計画の策定や緊急時相談対応の弁護士名簿づくりなどに取り組んできました。

 この取り組みを一層強化するべく、広域に連携した防災活動、大規模災害時でもお互いに協力・支援をすることで被災者支援の取り組みができるよう、同時に被災しない地域であり、新潟県中越沖地震、糸魚川大規模火災などの災害時における被災者支援のノウハウを有する新潟県弁護士会に第二東京弁護士会から打診をしました。

協定締結によってどのような効果を期待しますか。

 まずは、新潟県弁護士会の有する被災時対応の知見、第二東京弁護士会の有するマンパワーを相互に活用して、広域に連携した防災活動、大規模災害時での業務継続対応および被災者支援の取り組みができることを期待します。そして、平常時から連携の取り組みを行っておくことから得られる「災害時に協力が得られやすい信頼関係や人的関係」が創出されることも期待しています。この関係を維持して若手の弁護士に受け継いでもらいたいですね。

このような協定は全国で初ということですが、どのような特徴がありますか。

 平常時から連携する弁護士会で、被災者支援を迅速的確に実施する場面を想定して防災活動などに取り組むことによって、信頼関係や人的関係を醸成することを中心的なテーマにしたという点が今回の大きな特徴です。

 これはダイビングなどにおけるバディシステムや、自治体間の相互応援協定などを参考としており、平常時に顔のわかる関係を構築しておくことが唯一、災害時にスムーズな意思疎通ができる方法と考えています。

第二東京弁護士会 伊東 卓会長、新潟県弁護士会 兒玉 武雄会長

記者会見時の様子(2017年9月14日):写真左から、第二東京弁護士会 伊東 卓会長、新潟県弁護士会 兒玉 武雄会長

平常時から取り組みを開始することが重要

弁護士会の取り組みは企業でも生かせるでしょうか。

 今回の取り組みは企業のBCP策定においても参考にしていただけることと思っています。災害発生時に自分たちの会社はどのような状況になるのだろうか、と想像を巡らすと、同業の企業の助けを借りたいと思うことや、サプライチェーンの取引先の助けを借りたいと思うこともあるでしょう。それらをスムーズに実現するためには、平常時から取り組みを開始することが非常に重要です。

 また、災害時には企業においても、事業の中断による契約の債務不履行とか従業員、顧客の負傷などの法律問題が多く発生します。その際に、顧問弁護士への相談は不可欠です。災害発生時の対応についてしっかり検討している弁護士が企業の顧問であれば、それは大変心強いと思います。

参考にされたという、ダイビングにおけるバディシステムも企業間では効果があるでしょうか。

 業界とか多数の会員のいる組合で対応を準備することも有効だと思います。ただ、業界の中でもノウハウの開示など難しい問題がありますので、信頼できる会社間で強い信頼関係を構築することが非常に有効な対策となります。バディシステムだと誰か他の人がやってくれるだろうという考えにはなり得ません。そのため、責任意識がとても明確となるメリットがあります。

今後、どのような発展を目指していくのでしょうか。

 相互に信頼関係を構築して、いざというときの支援活動に活かしていくための合意をしておく、そして、迅速的確な対応ができるように平常時から信頼関係・人的関係の醸成に努める。このことは弁護士、弁護士会だけのテーマではありません。事業継続を考えるすべての企業、業界として採用すべき取り組みだと思います。今回の取り組みを1つの参考にして、多くの企業、業界で災害時のパートナーを探し、関係構築に努めていただきたいですね。

第二東京弁護士会 伊東 卓会長、新潟県弁護士会 兒玉 武雄会長

この特集を見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する