社会保険の加入に関する下請け指導ガイドラインとは

人事労務

 建設業を営んでいます。元請業者から現場ごとに「従業員名簿」の提出を要求されます。労災保険、雇用保険は加入していますが、社会保険は未加入のため、完全に記入することができません。またこの間、国土交通省から「指導書」が届きました。社会保険に加入しなければ、建設業の許可も元請業者からの仕事もなくなってしまうと思うと、社会保険に加入する以外に道はないのでしょうか?

 社会保険未加入を理由に、ただちに建設業許可が取消されるといったことはありませんが、社会保険の適用事業所であれば「指導書」が出され、期限内での加入などの対応を求められます。これを怠った場合、最終的に年金事務所の立入調査・強制加入、許可行政庁からの監督処分といった事態もあり得ます。

 また、公共工事を中心に未加入の事業者を現場に入場させないといった対策も取られており、建設事業者として今後も事業継続するのであれば、社会保険加入はもはや避けられない状況といえます。

解説

目次

  1. 建設業の社会保険加入ガイドラインが出された経緯と内容
  2. 社会保険加入に向けた対応
  3. 社会保険に加入しないで事業を続けることは難しい
  4. まとめ

建設業の社会保険加入ガイドラインが出された経緯と内容

 建設産業においては健康保険、厚生年金保険および雇用保険について、本来加入すべきであるにもかかわらず、適正に加入していない事業者が多数存在してきました。このため、以下の状況が生じています。

  1. 労働者の医療・年金などの公的社会保障が確保されない。
  2. 若年入職者減少の一因となっている。
  3. 法令を遵守し適正に法定福利費を負担している事業者ほど、受注競争上不利になる。

 国土交通省はこうした建設産業の状況の打開に向けて建設業法施行規則を改正し、これに関連して「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」(平成24年7月4日策定、平成27年4月1日改訂)を定めています。このガイドラインでは、建設業の社会保険加入について、元請企業が負うべき役割と責任、下請企業が負うべき役割と責任などが定められています。

 このガイドラインが出た平成24年当時は、「平成29年度までに事業者単位では許可業者の加入率100%、労働者単位では少なくとも製造業相当の加入状況を目指すべきである」とされており、約5年の期間で加入対策を行うことになっていました(平成24年1月 中央建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会 中間とりまとめ)。

社会保険加入に向けた対応

 この期間中、元請企業・下請企業が一体となって加入対策を進めていました。行政庁は建設業許可業者に対して許可申請・更新申請などの機会に加入状況を確認し、未加入の場合には指導書を出して、一定期限内での加入対応を求めています。
 ガイドラインが出されてから年数も経過し、対応期限まであと1年程度になっていますが、平成28年1月以降に建設業許可更新期限となる事業者のうち、社会保険未加入の事業者は約5万件あるといわれています。
 そこで、平成27年11月、国交省はこれらの業者に建設業許可の更新時期を待たずに指導書を発送する、異例ともいえる対応をしています。

 社会保険未加入の当事者である事業者には、早急な加入が求められますが、一方で工事を発注する発注者や元請企業に対しても、下請企業に対して法定福利費を含めた見積書を提出させ、その見積りに基づいて発注するといった対応が求められます。

社会保険に加入しないで事業を続けることは難しい

 ここまで記してきた加入対策により、平成29年3月末時点で許可業者の社会保険加入率は100%となり、公共工事の現場から未加入の事業者は「不良不適格事業者」として排除されることになるでしょう。この動きは公共工事だけではなく、民間工事にも波及拡大していくことが予想されます。
 加入に際しては、賃金報酬に対し約15%の法定福利費負担が発生することになります。これまで未加入であった事業者には厳しい状況となるかもしれませんが、建設事業者として今後も営業を続けるためには、各従業員の加入の要否を見て負担のシミュレーションを行い、事業計画を見直す必要があります。  

まとめ

  • 社会保険の加入に関する下請け指導ガイドラインは元請企業にも、下請企業にも役割と責任を求めている
  • 国土交通省は、平成29年の社会保険加入率100%に向けて厳しい対応を取っている
  • 建設業を続ける限り、社会保険に加入しないことは難しい状況

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