従業員を採用したときに必要となる労働保険・社会保険に関する手続について

人事労務

 新たに従業員を採用することとなりました。従業員を採用した時に必要な労働・社会保険などの手続を教えてください。また、手続を行うにあたり入社した従業員から提出をしてもらうものがあれば、教えください。

 法人の事業所に常時雇用される従業員を採用した場合、「健康保険・厚生年金保険および雇用保険の被保険者資格取得手続」が必要となります。  また、従業員の家族(75才未満)が扶養に入る場合は「健康保険被扶養者(異動)届」、20~59歳の配偶者が扶養に入る場合は「国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届」もあわせて提出が必要となります。

解説

目次

  1. 採用時に確認する従業員および家族の情報と提出書類
  2. 採用時の社会保険関係手続
  3. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届が必要となる従業員
    1. 常時使用される従業員は被保険者となる
    2. パートタイマー、アルバイトは被保険者となるか
  4. 健康保険被扶養者(異動)届の提出が必要となる被扶養者
    1. 被扶養者となる要件
    2. 生計を維持されているか判断する基準
    3. 配偶者が被扶養者となる場合の届出
  5. 雇用保険被保険者資格取得届が必要となる従業員
  6. マイナンバー制度に伴う個人番号の記載

採用時に確認する従業員および家族の情報と提出書類

 従業員の採用が決まったら、まずは労働条件通知書または雇用契約書を交わし、勤務形態、勤務時間および賃金などを決定します。
 その後、本人から提出してもらった以下の書類から必要な情報を確認します。

  • 履歴書
  • 個人番号カードもしくは通知カードの写し(※ 通知カードの場合は運転免許証やパスポートなどで本人確認が必要)
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 年金手帳(被扶養配偶者がいる場合は配偶者の分も必要)
     → 紛失している場合は年金手帳再交付申請書を提出
  • 雇用保険被保険者証

採用時の社会保険関係手続

 従業員採用後、次の労働・社会保険関係手続が必要となります。
 対象となる方など、詳細については後ほど解説します。

届出書 提出時期
1. 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 入社日から5日以内
2. 健康保険被扶養者(異動)届 入社日から5日以内
3. 国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届 健康保険被扶養者(異動)届に添付
4. 雇用保険被保険者資格取得届 入社日の属する月の翌月10日まで

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届が必要となる従業員

常時使用される従業員は被保険者となる

 適用事業所に常時使用される従業員(健康保険は75才未満、厚生年金保険は原則70才未満)はすべて健康保険・厚生年金保険の被保険者となります(健康保険法3条1項、厚生年金保険法9条)。
 入社日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の提出が必要です(健康保険法施行規則24条、厚生年金保険法施行規則15条)。

パートタイマー、アルバイトは被保険者となるか

 パートタイマー、アルバイトを採用した場合については、同じ事業所で同様の業務に従事する通常の労働者と比べ、以下の基準をそれぞれ満たしている場合は、原則として被保険者となります(昭和56年被保険者資格取扱基準)。

  • 1か月の所定労働日数が通常の労働者のおおむね4分の3以上である場合
  • 1日または1週の所定労働時間が通常の労働者のおおむね4分の3以上である場合

健康保険被扶養者(異動)届の提出が必要となる被扶養者

被扶養者となる要件

 次の要件に該当する場合、健康保険法の被扶養者となります(健康保険法3条7項)。

  1. 被保険者の直系尊属、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、弟妹で、主に被保険者により生計を維持されている
  2. 被保険者の3親等内の親族で(1に該当する場合を除く)、被保険者と同一の世帯に属し、主として被保険者により生計を維持されている
  3. 被保険者の事実婚の配偶者の父母および子で、被保険者と同一の世帯に属し、主に被保険者により生計を維持されている
  4. 3の配偶者が亡くなった後における父母および子であって、被保険者と同一の世帯に属し、主に被保険者により生計を維持されている

 該当した場合、事実発生から5日以内に、「健康保険被扶養者(異動)届」の提出が必要です(健康保険法施行規則38条)。

生計を維持されているか判断する基準

 生計を維持されているかどうかの認定は、原則として以下の基準によって判断されます(昭和52年4月6日保発第9号)。  

  • (i) 被保険者と同一の世帯に属している場合
    1. 年間収入が130万円未満(60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満の場合は、被扶養者と認定されます。
    2. 1の要件のうち、被保険者の年間収入の2分の1未満という要件を満たさない場合であっても、被保険者の年間収入を上回らず、被保険者がその世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるときは、被扶養者と認定される場合があります。
  • (ii) 被保険者と同一の世帯に属していない場合
     年間収入が130万円未満(60歳以上、またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合は、被扶養者と認定されます。

配偶者が被扶養者となる場合の届出

 また、20~59歳の配偶者が上記の要件を満たし被扶養者となる場合は、国民年金第3号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3号該当)届の提出も必要となります(国民年金法7条1項)。

雇用保険被保険者資格取得届が必要となる従業員

 新規採用した65才未満の従業員は、原則として雇用保険の被保険者となります。
 パートタイマー、アルバイトを採用した場合には以下の要件をいずれも満たした場合、原則として被保険者となります(ただし昼間にアルバイトをする学生は、一部を除き原則被保険者にはなりません)(雇用保険法4条1項、6条1項から3項)。
 入社翌月の10日までに届出が必要です(雇用保険法施行規則6条)。

  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上

 なお、労災保険については、労働者であれば労働時間に関わらず被保険者となりますが、適用事業所としての届けを最初にしてあれば、その後の個別の加入手続は不要です。

マイナンバー制度に伴う個人番号の記載

 なお、マイナンバー制度導入に伴って、雇用保険手続に関しては平成28年1月以降、健康保険・厚生年金保険手続に関しては平成29年1月以降届出書への個人番号の記載が必要(被扶養者がいる場合は被扶養者の個人番号も必要)となりますので、今後は従業員を採用した場合には利用目的を説明した上で個人番号を収集しなければならないことにも注意が必要です。

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