公開会社の株式に譲渡制限を付す方法
コーポレート・M&A当社は、非上場の株式会社ですが、過去に上場を目指していたこともあり、発行する全部の株式の譲渡制限を外しました。しかしながら、その後、上場は取り止めとなり、現在は、上場を考えていないため、再び譲渡制限を付したいと考えています。この場合の手続等を教えて下さい。
株式を譲渡制限とするためには定款変更が必要です。この場合の定款変更は、通常の特別決議よりも要件が加重された株主総会の特殊決議(会社法309条3項)によって行います。譲渡制限を付した後は変更登記を行うことが必要です。また、株券発行会社である場合は、株券提出手続も必要となります。なお、株式を譲渡制限とすることは、株主の権利に対する重大な制約となることから、反対株主には株式買取請求権が与えられます。
解説
株主総会の特殊決議による定款変更
株式会社は、発行する全部の株式の内容として、当該株式を譲渡により取得することについて当該株式会社の承認を要すること(「譲渡制限」といいます)を定める場合、そのことを定款で定めることが必要とされています(会社法107条2項1号)。
そこで、公開会社(株式の譲渡制限のない会社)が譲渡制限を付するためには、定款変更を行い、譲渡制限の規定を設ける必要があります。
定款変更は、通常の場合は、特別決議、すなわち、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で定めることで3分の1以上とすることが可)以上を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2(定款で定めることでこれを上回る割合とすることが可)以上の多数の賛成(会社法309条2項11号)によって行います。
しかしながら、譲渡制限を付すことは、株主の権利に重大な制約を課すことになるため、特殊決議、すなわち、議決権を行使することができる株主の頭数の半数(定款で定めることでこれを上回る割合とすることが可)以上であって、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の2(定款で定めることでこれを上回る割合とすることが可)以上の多数の賛成によって行います。
このように譲渡制限を付する定款変更については、通常の特別決議よりも重い要件での株主総会決議(特殊決議)が必要です。
株券提出手続
譲渡制限の定めがあることは、株券を発行している会社の場合、株券に記載しなければならない事項です(会社法216条3号)。
そのため、会社は、株券に記載をするために、株主に株券を提出させるための手続を行う必要があります(ただし、株式の全部について現実に株券を発行していない会社を除きます)。
具体的には、会社は、譲渡制限を付する定款変更の効力発生日の1か月前までに、効力発生日までに会社に対して株券を提出しなければならない旨を公告したうえで、株主および登録株式質権者に対して通知をしなければなりません(会社法219条1項1号)。なお、この公告・通知は、株主総会に先立ってできるものと解されています(相澤哲編著『立案担当者による新・会社法の解説』(別冊商事法務No.295)192頁以下参照)。
会社は、効力発生日後に、株券を提出した株主に対して、譲渡制限の記載のある株券を交付します。他方、提出されなかった株券は、効力発生日に無効となります(会社法219条3項)。
登記手続
譲渡制限の定めがあることは、「発行する株式の内容」として登記しなければなりません(会社法911条3項7号)。
したがって、譲渡制限の定めを設けた場合、変更の効力が発生した日から2週間以内に変更の登記を行います(会社法915条1項)。
反対株主による株式買取請求
譲渡制限を付する定款変更が行われる場合、反対株主は、会社に対し、保有する株式を「公正な価格」で買い取ることを請求(以下「株式買取請求」といいます)できます(会社法116条1項1号)。
この権利を行使するためには、株主は、株主総会に先立って反対の旨を通知し、かつ、株主総会において反対の議決権行使を行う必要があります。そのうえで、定款変更の効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までに株式買取請求を行います(会社法116条5項)。
株式買取請求がなされた場合、会社と株主は、株主が保有する株式の価格について協議を行うことになりますが、効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、会社または株主は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てを行うことができ、この場合、裁判所が、「公正な価格」を決定することになります(会社法117条2項)。

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