パートタイム労働者の待遇決定で考慮した事項の説明

人事労務
岩元 昭博弁護士 丸の内総合法律事務所

 パート社員から、「自分の待遇は正社員とかなりの違いがあるようだが、どのような事項を考慮して待遇が決められたのか説明して欲しい」と求められました。このような求めに対して、会社として説明をしなければならないのでしょうか。その場合、どのような事項について説明をする必要があるのでしょうか。

 事業主は、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者からの求めがあった場合には、待遇全般につき差別的取扱いに関する決定をするにあたって考慮した事項を、上記以外のパートタイム労働者からの求めがあった場合には、待遇のうち「賃金」、「教育訓練」、「福利厚生施設」等に関する事項に関する決定をするにあたって考慮した事項を、それぞれ説明する義務があります。
 「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の判断基準については、「パートタイム労働者と正社員の差別的取扱いの禁止」をあわせてご覧ください。

解説

目次

  1. 事業主の説明義務
    1. 説明義務の内容
  2. 説明義務の趣旨
  3. 説明すべき具体的内容
    1. どのような内容を説明すればよいか
    2. どのように説明をすればよいか
  4. おわりに

※本QAの凡例は以下のとおりです。

  • パートタイム労働法:短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  • パートタイム労働指針:事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成19年厚生労働省告示第326号)

事業主の説明義務

説明義務の内容

 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働法」といいます)14条2項では、事業者は、パートタイム労働者から求めがあった場合には、パートタイム労働法6条、7条および9条から13条に定める以下の事項に関する決定をするにあたって考慮した事項について説明をすることを義務付けています

パートタイム労働法 説明事項
6条 労働条件の文書交付等による明示に関する事項
7条 就業規則の作成・変更の際の過半数代表者からの意見聴取に関する事項
9条 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止に関する事項
10条 賃金の決定に関する事項
11条 教育訓練に関する事項
12条 福利厚生施設に関する事項
13条 通常の労働者への転換を推進するための措置に関する事項


 以上をまとめると、

  1. 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の場合には、その待遇の差別取扱全般について
  2. 上記1以外のパートタイム労働者の場合には、「賃金の決定」、「教育訓練」、「福利厚生施設」などの事項について

これらの事項に関する決定をするにあたって考慮した事項についての説明義務があることになります。

パートタイム労働法6条、7条および9条から13条に定める事項に関する決定をするにあたって考慮した事項についての事業者の説明義務

 また、事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成19年厚生労働省告示第326号。以下「パートタイム労働指針」といいます)では、事業主は、パートタイム労働者から求められたときには、パートタイム労働法14条2項で定める事項以外の待遇に関する事項についても説明するように努めるものとされています(パートタイム労働指針第3・2(1))。

 なお、パートタイム労働者が説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをすることは禁じられており、事業主は、パートタイム労働者が不利益な取扱いをされることをおそれて説明を求めることができないことがないようにしなければならないとされています(パートタイム労働指針第3・3(2))。
 事業主がこの説明義務に違反した場合であっても、罰則規定は設けられていませんが、説明義務違反に対して厚生労働大臣(都道府県労働局長)は改善等の勧告等を行うことができ、事業主がこの勧告に従わなかった場合には、公表の対象となります(パートタイム労働法18条)。

説明義務の趣旨

 上記のような説明義務が課された趣旨は以下の点にあります。
 すなわち、パートタイム労働者の中には、フルタイム労働者との待遇の格差があることの理由が分からず、自身の待遇について不満を抱く人も少なくなく、これによりパートタイム労働者の労働意欲の減退を招く事態が生じることがあります。
 パートタイム労働者に待遇について納得して働いてもらうことで、仕事に対する意欲の向上が図られ、結果として、事業主にとっても生産性が高まるというメリットがもたらされることになります。
 そこで、事業主には、パートタイム労働者から求められた場合には、待遇の決定にあたって考慮した事項について説明することが義務付けられているものです。

説明すべき具体的内容

どのような内容を説明すればよいか

 事業主には、この説明義務に基づき、説明を求められた事項について具体的に説明することが必要とされており、例えば、賃金の決定方法についての説明を求められた場合には、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験といった要素について、どの要素をどのように考慮ないし評価して賃金を決定したか具体的に説明することが求められます。そのため、「あなたはパートタイマーなので賃金は時給○○円です。」といった程度の説明では不十分であり、説明義務を果たしたことにはなりません。
 また、教育訓練福利厚生施設に関していえば、どのような理由からどの制度や施設が利用でき、利用できない制度・施設についてはなぜ利用が認められないのか理由を説明する必要があります。

どのように説明をすればよいか

 なお、パートタイム労働者から求めがあった場合には、原則としてその都度説明をしなければならず、説明会形式などでまとめて説明を行えばそれ以上の説明をしなくてもよいということにはなりません
 もっとも、パートタイム労働者が事業主からの説明に納得をするまで説明をすることまで求められているものではありませんので、特段事情の変化がないにもかかわらず、同じ労働者から同じ事項について繰り返し説明が求められるような場合には、原則として説明義務は生じないと解されています。このような場合には、実務上は、「前回ご説明したとおりです。」といった回答をすることになるでしょう。

おわりに

 いずれにしても、事業主には、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者に対しては待遇の差別取扱全般について、それ以外のパートタイム労働者については待遇のうち一定の事項に関して、その待遇を決定するにあたって考慮した事項について説明する義務があるということを十分理解のうえ、説明義務違反を生じさせないように注意する必要があります。

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する