強制執行を行うために必要な債務名義とは

取引・契約・債権回収

 支払いの遅滞が続いている債務者からの申出があり、分割弁済を受けることで合意しましたが、途中でまた支払いが滞るおそれがあると考えています。そこで、将来、強制執行することを想定した準備をしておきたいと思いますが、どのような手続をとればよいのか教えてください。

 強制執行を行うためには、債務名義が必要です。実務上、よく利用される債務名義として、①確定判決もしくは仮執行宣言付判決、②執行認諾文言付の公正証書、③和解調書があります。

解説

目次

  1. 債務名義とは
  2. 確定判決もしくは仮執行宣言付判決
  3. 執行証書
  4. 確定判決と同一の効力を有するもの
  5. 執行認諾文言付公正証書の利用にあたっての留意点
    1. 公正証書を作成する費用と労力
    2. 送達証明書の取得

目次

  1. 債務名義とは
  2. 確定判決もしくは仮執行宣言付判決
  3. 執行証書
  4. 確定判決と同一の効力を有するもの
  5. 執行認諾文言付公正証書の利用にあたっての留意点
    1. 公正証書を作成する費用と労力
    2. 送達証明書の取得

債務名義とは

 履行遅滞となっている債務者からの申出があり、分割弁済を約束していたにもかかわらず、債務者がこれを怠ったような場合、今度は任意の交渉・合意に止めず、法の力を借りて債務者の財産から強制的な回収の実現を図ることを期待するでしょう。しかし、強制的な回収行為は、債務者に不利益を与える側面もありますので、それを認めるだけの合理的な理由の存否を確認する必要があります。そこで、民事執行法は、債務者に対する請求権の存在を公に証明し、これに基づき強制執行する根拠となる文書を要求しています。これを債務名義といいます(民事執行法22条)。

 債務名義の種類としては、①確定判決(民事執行法22条1号)、②仮執行宣言付判決(民事執行法22条2号)、③執行認諾文言付の公正証書(執行証書、民事執行法22条5号)、④確定判決と同一の効力を有するもの(裁判上の和解調書、調停調書等)(民事執行法22条7号)等があります。

【債務名義のイメージ】

債務名義のイメージ

確定判決もしくは仮執行宣言付判決

 確定判決および仮執行宣言付判決は、いずれも「判決」ですので、これを得るためには裁判所に訴えを提起し、債権者の主張の全部または一部が認容される必要があります
 判決はその確定を待って執行力が生じるのが原則ですが、相手方が控訴するとその確定が先延ばしになります。そこで、裁判所は勝訴した原告の不利益にも配慮して、判決確定前であっても「仮執行の宣言」(民事訴訟法259条)を行うことができ、これに基づいて債権者は判決確定前であっても強制執行を行うことが認められています。

執行証書

 公正証書は一定の要件を満たすと債務名義としての効力が認められます。これを執行証書と呼びます。具体的には以下の要件を満たす必要があります。

  1. 金銭の一定額の支払い等を目的とする請求について公証人が作成した公正証書であること。
  2. 債務者がただちに強制執行に服する旨の陳述(これを「執行認諾文言」といいます)が記載されていること。

確定判決と同一の効力を有するもの

 裁判上の和解には、訴訟上の和解(民事訴訟法89条)と訴え提起前の和解(民事訴訟法275条)とがあり、いずれの場合にも和解が成立してそれが調書に記載されると確定判決と同一の効力を有し(民事訴訟法267条)、債務名義になります

執行認諾文言付公正証書の利用にあたっての留意点

公正証書を作成する費用と労力

 たとえば分割弁済の合意をする際に、その合意内容を執行認諾文言付の公正証書で作成すると、万一、債務者が分割弁済を怠ったような場合に、改めて訴訟手続等を経ることなく、すぐに強制執行に着手でき、実務上も利用価値が高くなります。
 ただし、公正証書の作成には費用が必要となることや、債務者に公証役場への同行もしくは執行認諾文言付の公正証書を作成することについて明確に記載し、債務者の実印を捺印した委任状(加えて印鑑証明書の添付も必要)が必要となる等、私的に合意書を作成する場合と比較すると、作成の労力は多いといえます。
 したがって、常に公正証書の作成にこだわるのではなく、長期分割の場合や支払総額が大きい場合に限るなど、事案に応じて適切に利用することが肝要です。

送達証明書の取得

 また、実際に執行認諾文言付公正証書を債務名義として強制執行に着手する際には、公正証書を作成した公証役場に申立てをし、これを債務者に送達することが必要です。もっとも、債務者が分割弁済を怠った時になっていざ公正証書を送達しようとしても、債務者が行方不明になっている等円滑な送達ができないことがあります。そこで、公正証書を作成する際に、あわせて債務者への送達を公証人に申し立てておき、あらかじめ送達証明書を取得しておくというような工夫も実務上は大切となります。

無料会員にご登録いただくことで、続きをお読みいただけます。

1分で登録完了

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する