消費者契約法による取消しの対象となる、断定的判断の提供とは

取引・契約・債権回収
古川 昌平弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所 吉村 幸祐弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 当社は、不動産販売会社です。
 築浅の中古マンションを販売した顧客から「マンションの購入に当たり、担当者から『子供の教育に適した土地であるから、少なくとも数年間のうちは値上がることはあっても値下がることは絶対ない』との説明を繰り返し受けたため、このマンションを購入したが、実際に住んでみると、学校も公園もなく、子供の教育に適した土地ではないと感じている。まだ住んで1年しか経過していないが、別の不動産会社に確認したところ、このマンションの価格は購入時に比べてかなり値下がりしている模様である。」との理由で、マンションの売買契約の申込みを取り消したいとの主張を受けています。
 当社の担当者に確認したところ、そのような説明をしたことなどないと述べており、顧客にはその旨を丁寧に説明しようと考えていますが、万一、担当者が、顧客の主張するとおりの対応をしていた場合、マンションの売買契約の申込みは取り消されるのでしょうか。

 担当者が主張のとおり対応していた場合には、将来における変動が不確実な事項について、断定的判断を提供しており、契約の申込みを取り消せると判断されるおそれがあります(消費者契約法4条1項2号)。

解説

目次

  1. 断定的判断の提供による取消しとは何か・その要件
  2. 断定的判断の対象事項にあたるか
  3. 「断定的判断」の提供にあたるか
    1. 設例の検証
    2. 断定的判断と表現
  4. おわりに

断定的判断の提供による取消しとは何か・その要件

 消費者契約法は、

  • 事業者が「勧誘をするに際し」、
  • 「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき」
  • 断定的判断を提供」し、
  • 消費者が「当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認」をした結果、契約の申込み・承諾の意思表示をしたとき、

 消費者は、その契約を取り消すことができると規定しています(消費者契約法4条1項2号)。
 なお、この取消権には行使期間がありますが、この点については「平成28年6月公布! 改正消費者契約法のポイントと対策 (第2回)」をご参照ください。この類型は、一般的に、「断定的判断の提供」として整理されています。

 上記設例における顧客の主張は、「勧誘をするに際し」の要件を満たしますので、担当者が、上記2つ目の事項について「断定的判断を提供」したか否かが問題となります。

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 (略)

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2~5 (略)

断定的判断の対象事項にあたるか

 断定的判断の対象である「将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項」とは、消費者の財産上の利得に影響するものであって将来を見通すことがそもそも困難なものをいうとされています(消費者庁消費者制度課編『逐条解説消費者契約法〔第2版補訂版〕』〔商事法務、2015年〕116頁)。
 上記設例の顧客の主張で問題視されている中古マンションの価格も、これに含まれ、断定的判断の対象事項であると考えられます。
 なお、対象事項が財産上の利得に影響するものに限定されるかという点については議論がありますが、大阪高裁平成16年7月30日判決・LEX/DB文献番号25437403は、上記逐条解説と同じく限定されることを前提に判示しています。

「断定的判断」の提供にあたるか

設例の検証

 「断定的判断」とは、確実でないものが確実であると誤解させるような決めつけ方をいうとされています(消費者庁消費者制度課編『逐条解説消費者契約法〔第2版補訂版〕』〔商事法務、2015年〕117頁)。
 上記設例において担当者が顧客の主張どおり対応していた場合、担当者の「少なくとも数年間のうちは値上がることはあっても値下がることは絶対ない」との説明は、「断定的判断」の提供に該当します。

 担当者のこの説明により消費者が誤認したという場合には(この事実は消費者が立証する必要があります)、断定的判断の提供がなされたとして、消費者契約法に基づき取り消される可能性があります。

断定的判断と表現

 なお、「断定的判断」について、「絶対に」や「必ず」といった表現が不可欠であるとは考えられていません。このため、上記設例のように「絶対に」といった表現をしなくても、確実でないものが確実であると誤解させるような決めつけ方をすれば、断定的判断の提供と判断される可能性がありますので、留意が必要です。

 他方、断定でない内容や個人的な見解を告知することは「断定的判断」には含まれません。上記設例でいえば、「子供の教育に適した土地であるから、将来値上がりするかもしれない」との表現が用いられていた場合は、「断定的判断」には該当しません。

 ただし、断定的判断の提供に該当するかどうかは紙一重であり、仮に、実際には「かもしれない」といった表現を用いていたとしても、契約締結経緯やその後の事情等に照らし、断定的判断を提供したとの事実が認定されるおそれは否定できません。マンションの価格のように、将来における変動が不確実な事項の説明に際しては、注意が必要です。

おわりに

 以上のように、断定的判断の提供に該当するか否かは、どのように伝えたかによって判断が異なり得ます。
 したがって、顧客から上記設例のような主張を受けた場合には、担当者が顧客に対して伝えた内容を具体的に確認し、適切に対応する必要があります。この確認・対応を行えるようにするため、業務の通常の過程において、適宜、担当者が顧客と対応した際のやり取りを書面・データ等により記録化することが重要であるといえます。

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