TOBの対象となる有価証券とは

ファイナンス
藤田 俊輔弁護士 弁護士法人北浜法律事務所

 有価証券の買付けを行おうとする場合に、公開買付け(TOB)によらなければならないとされている有価証券には、どのようなものがありますか。

 公開買付け(TOB)の対象となる有価証券は、金融商品取引法に定められており、典型例としては、金融商品取引所に株式を上場している会社が発行する株式、新株予約権、新株予約権付社債等があります。ただし、無議決権株式や、議決権株式へ転換できる権利や条項がない有価証券は、TOBの対象には該当しません。

解説

目次

  1. 公開買付け(TOB)とはどのような制度か
  2. TOBの対象となる有価証券
    1. 法令の定める要件
    2. 「株券等」に該当する有価証券
    3. 「議決権のない株式」に関する留意点
  3. まとめ

公開買付け(TOB)とはどのような制度か

 ある会社A社が、他の会社B社の支配権の取得等を目的として、B社の株式を大量に買い集めようとする場合に、A社は、公開買付け(take-over bid 以下では「TOB」といいます)という方法を用いることが義務付けられることがあります。

 TOBとは、ある会社の株式等の買付けを行う場合に、その株式等を保有する者に対して、同一条件で売却する機会を提供すべく、公告を使って広く勧誘し、取引所金融商品市場の外で買付けを行うことをいいます(金融商品取引法27条の2第6項)。

公開買付け(TOB)

 市場外で株式等を大量に買い集める際に、TOBによることが義務付けられる理由としては、株式等の大量の買い集めによって対象会社の支配権に変動が生じると、株価の変動や会社の経営方針の変更など少数株主への影響が少なからず生じることから、すべての株主に公平に売却の機会が与えられるようにし、かつ、株主が売却を判断する際に必要な情報を提供するためといわれています。

金融商品取引法
(発行者以外の者による株券等の公開買付け)

第27条の2
6 この条において「公開買付け」とは、不特定かつ多数の者に対し、公告により株券等の買付け等の申込み又は売付け等(売付けその他の有償の譲渡をいう。以下この章において同じ)の申込みの勧誘を行い、取引所金融商品市場外で株券等の買付け等を行うことをいう。

TOBの対象となる有価証券

 TOBの実施は、あらゆる有価証券の買い集めにおいて義務づけられるものではありません。では、TOBの対象となる有価証券には、どのようなものがあるでしょうか。

法令の定める要件

 金融商品取引法その他の関係法令の定めによれば、TOBの対象となる有価証券は、以下の要件をいずれも満たすものとして整理することができます。

  1. 有価証券報告書の提出義務を負う者等が発行した有価証券であること

  2. 法令に列挙された種類の有価証券(株券、新株予約権証券等)のいずれかに該当すること

  3. 2の有価証券が議決権株式であるか、または、議決権株式の交付を受けられる権利・条項が付されていること

 1は発行者の属性に基づく要件であり、2,3は有価証券の内容に基づく要件となっており、2,3の要件をいずれも満たす有価証券のことを「株券等」と定義されています(金融商品取引法27条の2第1項、金融商品取引法施行令6条1項)。

 以下では、この「株券等」に該当する有価証券の内容についてご説明します。

「株券等」に該当する有価証券

 法令上、TOBの対象となる有価証券の種類については、株券、新株予約権証券、新株予約権付社債券等の有価証券などと限定的に列挙されています(金融商品取引法施行令6条1項各号。要件1)。

 また、これらの列挙された有価証券に該当する場合であっても、株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式等(「議決権のない株式」)については、「株券等」に該当しないとされています(金融商品取引法施行令6条1項柱書。要件3)。

 この「議決権のない株式」に含まれるものとしては、無議決権株式や、無議決権株式のみを取得できる新株予約権および新株予約権付社債などが定められています(発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令2条)。なお、 無議決権株式であっても、当該株式の取得と引き換えに議決権株式の交付を受けられる権利や条項がある株式は「株券等」に該当し、TOBの対象となります。

 このように、TOB規制の趣旨が、株券等の大量買い集め行為によって対象会社の支配権に変動が生じ、株主等へ影響を及ぼすことに配慮したものであるため、買い集め行為によって会社の支配権に変動を及ぼさない無議決権株式などの「議決権のない株式」については、TOB規制の対象から除外されています。

「株券等」に該当する有価証券

「議決権のない株式」に関する留意点

 「議決権のない株式」と聞くと、無議決権株式についてはすべてTOBの対象から除外されるようにも思われます。しかし、前述のとおり、無議決権株式であっても、その株式の取得と引換えに議決権のある株式の交付を受けられる旨が定められている株式については、潜在的に会社の支配権に変動を生じさせうるため、TOBの対象となる「株券等」に該当することになります(発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令2条1号)。

 他方、 種類株主総会において議決権を有する株式であっても、普通株主総会の議決権がない株式については、普通株主総会における議決権株式の交付を受ける権利・条項が付されたものでない限り、TOBの対象となる「株券等」には該当しないと解されており(金融商品取引法施行令6条1項)、この点にも注意が必要です。

まとめ

 TOBの対象となる有価証券については、金融商品取引法だけでなく、施行令や内閣府令も参照する必要があるため、何がTOBの対象となり、何が対象から除外されるかは、一見して判断が難しいものと思われます。有価証券の買い集めにあたっては、上記の整理を参考に、その買い集め行為がTOB規制の適用対象となるか否かを慎重に検討する必要があります。

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