公認会計士による会計監査における弁護士確認状

ファイナンス
門倉 洋平弁護士 S&Nパートナーズ法律会計事務所

会計監査をお願いしている公認会計士から、当社と関係のある弁護士に対して確認状を発送したいので連絡先を教えてほしいと言われたのですが、どのように対応すれば良いのでしょうか。

公認会計士は、職業的専門家として守秘義務を負っていますので、弁護士の連絡先を教えて構いません。むしろ、適切な会計監査を実施してもらうという観点からは、協力することが望ましいと考えられます。

解説

目次

  1. 会計監査で公認会計士は何を確かめたいのか
  2. 弁護士への確認により確かめたいこと
  3. 公認会計士はどうやって確かめるのか
  4. 弁護士確認状を送付するまでの一般的な流れ
    1. 公認会計士が会社から訴訟事件等の報告を受けている場合
    2. 公認会計士が会社から訴訟事件等の報告を受けていない場合
  5. 弁護士から会社への問い合わせがあった場合の対応方法
  6. おわりに

会計監査で公認会計士は何を確かめたいのか

 公認会計士による会計監査商法監査または金商法監査)においては、会社が作成した財務諸表等に重大な虚偽表示がなく、適正なものであるか否かがチェックされることになります。
 例えば、現金や預金については財務諸表に計上されている金額だけ現実に存在するのか(実在性)、買掛金や未払金については財務諸表に計上されていないものは存在しないか(網羅性)等を確かめます。

弁護士への確認により確かめたいこと

 仮に、監査対象会社が損害賠償請求を受けており、民事訴訟において被告となっているとします。訴訟手続は、最終的に判決が言い渡されて終結する場合もあれば、途中で双方が歩み寄り、和解することにより終結する場合もあります。
 公認会計士の立場からは、訴訟の進み具合に従って、会社が適切な会計処理等を行っているかを確かめることになります。

 例えば、損害賠償金の支払義務が認められることが確実な状況であれば、会社が財務諸表に相応の引当金を計上しているかを確認することになりますし、また、損害賠償義務を負う可能性は高いが金額は不明であるという場合には、会社が偶発事象として必要な注記をしているかを確認することになります。

公認会計士はどうやって確かめるのか

 会社の訴訟事件等の代理人を受任している弁護士に対し、訴訟事件等の内容訴訟の進捗度合および今後の見通し等の質問事項を記載した確認状を送付することが一般的です。
 また、訴訟事件等の網羅性を確認するため、確認対象とした事件等以外の訴訟事件等を受任しているか否かという質問事項を含めることもあります。そして、確認状の返戻により受けた回答をもとに、必要に応じて、追加で弁護士へのヒアリングを実施して、会社が必要な会計処理や注記等を行っているか否か確かめることになります。

弁護士確認状を送付するまでの一般的な流れ

公認会計士が会社から訴訟事件等の報告を受けている場合

 当該訴訟事件等について会社を代理している弁護士に対して確認状を発送します。この場合、会社担当者としては、公認会計士から確認状の発送先の問い合わせを受けることが想定されます。公認会計士は、職業的守秘義務を負っていますし、公認会計士には適切な会計監査を実施してもらう必要があります。このため、公認会計士から発送先等の問い合わせを受けた場合には、発送先を伝えることが望ましいと考えられます。

公認会計士が会社から訴訟事件等の報告を受けていない場合

 この場合、公認会計士は、販売費および一般管理費の明細や、営業外費用の明細を精査し、例えば、法律事務所や弁護士への支出が費用計上されている場合には、会社担当者へのヒアリングを実施した上で、または、そのようなヒアリングを実施せずに直接、弁護士確認状を発送することがあります。

 また、会社の顧問弁護士に対しては、現に訴訟事件等の代理を委任していない場合であっても、訴訟事件等の網羅性を確かめる観点から、確認状を発送することが一般的です。この場合、公認会計士から、顧問先法律事務所の担当弁護士名等の問い合わせを受けることが想定されますが、会社担当者としては、公認会計士に対して上記4-1と同様に必要な情報を伝えることが望ましいと考えられます。

弁護士確認状を送付するまでの一般的な流れ

弁護士から会社への問い合わせがあった場合の対応方法

 確認状の送付を受けた弁護士は、第一義的には公認会計士へ直接回答することになりますが、会社担当者としては、弁護士から弁護士確認状に関する問い合わせを受けることも想定されます。この場合、確認状の送付は会社の意向ではなく、監査人である公認会計士の意向により実施されていることを説明して、対応をお願いすることになります。

おわりに

 以上のとおり、会計監査を実施する公認会計士が、弁護士確認という手続を通じて何を確認したいのかという点を理解しておけば、会社担当者の立場としてどのような対応を取ればよいのかが整理されると考えます。

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