金融機関から見た私的整理のメリット・デメリット

事業再生・倒産

 当社は、公共事業の請負を中心とするゼネコンなのですが、最近の不況の影響で資金繰りが厳しく、金融機関に私的整理の申入れをしようと思います。ただ、金融機関から見て私的整理にメリットがなければ、法的整理を迫られるだけなのかと心配しています。金融機関にとって、貸付先(債務者)が、再建手法として法的手続ではなく私的整理を選択することに、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

 私的整理は、法的整理と比べ、①信用不安・風評被害を抑えられること、②不良債権としての扱いを避けられること、③手続費用が安価ですむといった点でメリットがあります。
 他方、デメリットとしては、裁判所の関与のない手続であるため、透明性・公平性の担保が困難なことや、強制力のない手続であるため、債権者間の足並みが揃わず、一部の債権者の反対によって手続が頓挫する可能性があります。

解説

目次

  1. 金融機関から見た私的整理のメリット(法的手続との比較)
    1.  信用不安・風評被害を避ける
    2. 不良債権としての扱いの要否
    3.  手続費用
    4.  債務者側から見たメリット
  2. 金融機関から見た私的整理のデメリット
    1. 私的整理のデメリットの内容
    2. 解消されつつあるデメリット

金融機関から見た私的整理のメリット(法的手続との比較)

 信用不安・風評被害を避ける

 法的整理を選択すると、支払いをストップする対象が取引債権者にまで及び、世間一般に法的整理を行った事実が広まるので、信用不安・風評被害が広がり、工事中の現場がストップして混乱を招く、公共事業の指名停止がなされるなど、事業価値の毀損を招くことがあります。
 これに対し、私的整理を選択すれば、貸付条件変更や債務免除等を依頼する対象を金融債権者に限定することで、取引先その他の関係者に私的整理の実施を知られずに済むため、風評被害等を避けることができ、上場廃止や公共事業に関する指名停止、事業に関連する諸契約の更新に支障が出ないなど、事業価値の維持を図ることで、金融機関としても、結果的に法的整理よりも多額の債権回収を見込める可能性があることがメリットであると考えられます。

不良債権としての扱いの要否

 平成24年11月1日付の金融担当大臣談話にもあるとおり、金融庁は、金融機関に対し、貸付条件の変更等や円滑な資金供給に努めるべきとしており、金融円滑化法の期限到来後も、貸し渋り・貸し剥がしの発生や倒産の増加といった事態が生じないよう、金融機関を検査・監督する旨を表明しています。
 この談話においては、金融検査マニュアル等における中小企業向け融資で貸付条件の変更等を行っても不良債権とならないための要件は恒久措置とされていますので、「経営改善計画が1年以内に策定できる見込みがある場合」や「5年以内(最長10年以内)に経営再建が達成される経営改善計画がある場合」は、金融機関にとって、債務者に対する貸金は不良債権に該当しないことになります。

 貸金が不良債権になると、金融機関は引当てを検討するなど種々の対応を迫られることにもなります。法的整理の場合には、貸金の全部または一部が自動的に不良債権になりますので、この観点からも、私的整理による方が金融機関にメリットがあることとなります。

 手続費用

 一般に私的整理は、法的整理と比較した場合、手続費用が比較的安価で済むケースが多いといえます。

 債務者側から見たメリット

 債務者サイドから見た、一般的な私的整理のメリット・デメリットは、「私的整理とはどのような手続きか」を参考ください。

 これを金融機関側から見た場合にも、対象債権者(金融機関)以外に手続が公表されないことによって債務者の信用不安を回避し、事業価値が維持することができるため、中長期的な視野に立てば、金融機関にとっての経済合理性もあると考えられます。
 このほか、上場ステータスの維持(なお、私的整理のメニューによっては適時開示基準に該当する場合がありますので、留意が必要です)や指名停止の回避などをすることもでき、市場や工事現場などを混乱させずに事業を維持できることとなります。これらは債務者にとってのみならず、金融機関としても大きなメリットとなるものと考えられます。

金融機関から見た私的整理のデメリット

私的整理のデメリットの内容

 他方で、私的整理は裁判所や、裁判所から選任された監督委員・管財人が債務者の監督を行う手続ではないため、金融機関から見た場合に透明性に乏しく、以前には、債務者の不当な対応により公平性・合理性が損なわれる事例も多かったために、そもそも金融機関が私的整理に応じる事例自体が少ない状態にありました。
 また、強制力のない手続であるため、債権者間の足並みが揃わず、一部の債権者の反対によって手続が頓挫する可能性がある点は、債務者にとってのみならず、金融機関にとってもデメリットであると考えられます。

解消されつつあるデメリット

 しかし、近年では、各種の準則型私的整理手続が整備され、これによって透明性・公平性の確保がしやすくなったこと、純粋私的整理であっても、誠実義務を負う弁護士等の専門家が関与することにより透明性・公平性の確保がしやすくなったことから、このようなデメリットも解消されつつあるところです。
 弁護士等の専門家をうまく活用することで、私的整理による再建を検討しやすい環境にあるといえるでしょう。

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