私的整理とはどのような手続きか

事業再生・倒産
本澤 順子弁護士 木下・脇田虎ノ門法律事務所

 私はある会社の経理担当者ですが、財務諸表を見る限り、自分の会社は近いうちに立ち行かなくなるだろうと思います。「××会社倒産」という言葉が新聞一面を賑わすこともありますが、倒産とはどのような意味ですか。このような場合、裁判所に破産の申立てをしないといけないでしょうか。

 「倒産」という言葉は、幅の広い概念です。「倒産状態」という意味では、一般に、債務者が経済的に破たんし、債権者に対し債務(売掛金や金融債権)を約定の弁済期に弁済が出来なくなった状態を意味します。また、「倒産手続」という意味では、破産手続、民事再生手続のように事業を清算・再建するための手続を総称して、このように言われることがあります。
 倒産状態に陥った事業の清算・再建のためには、裁判所に申立てを行い破産・民事再生などの手続をすること(「法的整理」といいます)が必須ということはありません。いわゆる「私的整理」として、裁判所での手続を利用せずに債権者と協議をし、再建の方法を模索するということも考えられます。
 今では、私的整理手続のいくつかはルール化(準則化)され、実際の過去事例も集積されており、一般的な手続として社会に浸透しています。

解説

目次

  1. 法的整理と私的整理
    1. 倒産状態への対処
    2. 私的整理
  2. 法的整理と私的整理のメリット、デメリット
    1. 法的整理のメリット、デメリット
    2. 私的整理のメリット、デメリット
  3. 私的整理の活用事例
    1. 私的整理手続の種類と共通点
    2. 私的整理手続の特徴
    3. 私的整理の留意点
  4. おわりに

目次

  1. 法的整理と私的整理
    1. 倒産状態への対処
    2. 私的整理
  2. 法的整理と私的整理のメリット、デメリット
    1. 法的整理のメリット、デメリット
    2. 私的整理のメリット、デメリット
  3. 私的整理の活用事例
    1. 私的整理手続の種類と共通点
    2. 私的整理手続の特徴
    3. 私的整理の留意点
  4. おわりに

法的整理と私的整理

倒産状態への対処

 経済的に破たんした(破たんする恐れがある)債務者は、何も対策をとらないまま事業を続けていると、いずれ資金繰りに窮し、債権者と約束した時期に弁済ができなくなってしまい、さらには、債権者から預金や設備機械などの差し押さえを受けるなどして、立ち往生してしまいます。
 このような状態を回避すべく、債務者は、一定のルールに則って債権者への弁済を一時停止し、返済案を策定し、債権者からの同意を得た返済案に従って弁済を行うことが必要となります。
 この場合、裁判所を利用して法的整理を行うこともできますが、それ以外にも、特定の債権者との間で協議を行い、今後の弁済の方法についてリスケジュール(支払時期の延期)、債権カット(一部の債権放棄)をしてもらうための手続をとることも可能です。

私的整理

 事業者が経営破たんした(破たんしそうになっている)場合に、債権者と債務者の間で資産負債の整理について協議を重ね、清算または再建に向けた事後処理の方針を決定し、進めていくためのプロセスを、一般に「私的整理」といいます。先の「倒産」と同様、「私的整理」も明確な定義のない幅の広い概念で、一般には、法的整理手続以外の事業再建手続を幅広く含むものと解されています。

 私的整理手続は法的整理手続と違って、法律で定められたルールはありませんが、その手続と最も深い関係にある機関から一定の指針(ガイドライン、準則)が示されていることが多く、その進め方について関係者が一定の共通認識を持てるようにしています。
 そして、このような法的整理、私的整理のプロセスを経て、債務者は、事業の再生、清算、代表者の生活の再建などを目指すことになります。

法的整理と私的整理のメリット、デメリット

法的整理のメリット、デメリット

 法的整理には、破産、民事再生、会社更生、特別清算といった方法があります。法的整理に共通して言えることは、法律に定められたルールに則り、プロセスが進められるということです。この場合、返済案(再生計画案)について債権者の一部が反対していても、返済案に従って、強制的に、全て債権者が有する債権のリスケジュールや債権カットを実現できます。この点が法的整理のメリットと言えます。
 法律に定められたルールに則り、プロセスが進められるため、公平性・透明性が確保できる一方で、裁判所における法定の手続きでは解釈や運用が硬直的であったり、手間や費用の負担が重かったりすることがあり、関係者に過度な負担をかける可能性があることが、デメリットと言えます。

私的整理のメリット、デメリット

 一方で、私的整理の場合については、特定の相手方と非公開に手続を進めることができ、柔軟かつ迅速に対応できる、結果的に手間と費用を抑えられるといったメリットを挙げることができます。
 私的整理の場合、債務者は、債務整理の協議を要請する債権者を、その判断で柔軟に定めることができ(例えば、関係者数が少なく多額の債権を持っている銀行などの金融債権者とのみ協議したい、といった場合)、逆に言えば、残りの債権者については、債権のリスケジュールや債権カットをしないままにしておく(例えば、取引債権者や、ポイントカードのポイント返還権を持つ一般消費者とは協議しない、といった場合)ことができます。
 もっとも、債務者が協議を要請する債権者の範囲や、整理後の債務処理の方法が恣意的であってはならず、債務者には同一の立場の債権者を平等に取り扱うことが求められます。私的整理手続においては、協議を要請する債権者の全員が同意しない限り、対象となる債権のリスケジュールや債権カットができず、事業再建は達成できないことになってしまいます。この点が、私的整理のデメリットと言えます。

法的整理と私的整理の比較
法的整理 私的整理
特徴 裁判所が手続を進めるので公平性、透明性が確保できる 特定の債権者と非公開で協議するので、公正さが疑われることもある
手間
費用
負担が重いこともある 比較的負担がかからない
債権者
同意
一部の債権者が反対しても返済案に従ってリスケジュールや債権カットが可能 債権のリスケジュールや債権カットのためには、協議の相手方となる債権者全員の同意が必要

私的整理の活用事例

私的整理手続の種類と共通点

 準則化された私的整理手続としては私的整理ガイドライン、中小企業再生支援協議会による支援協議会スキーム、事業再生実務家協会による特定認証ADR手続、地域経済活性化機構による手続などがあります。
 これら手続に共通することは、債務者は、対象となる債権者との間で、過去の経緯や現在の状況を踏まえ、将来に向けての債権関係(いつ、いくら支払うか)を整理し直すため、保有する財産の把握、その活用や処分の可能性、負担する債務の減免や猶予、その後の弁済の可能性、責任の取り方などについて、関係者で協議を行い、任意の合意に達することにより、その事業の再生や清算、生活の再建を目指すことになるという点です。

私的整理手続の特徴

 私的整理手続は、非公開のテーブルで特定の債権者とのみ協議することになりますので、公正さが疑われ、手続きが難航することもあります(ただし、今日は私的整理の準則化が進み、実際の事例・先例が集積されつつあり、ルールなきかつての私的整理と違って、準則化された私的整理は、この懸念を払しょくするよう設計されています)。 また、事実上、全債権者との同意を獲得するため結果的に弁済率を圧縮しにくいという点があります。

私的整理の留意点

 そして、債権者との協議が続きますので、その間、債務者は、交渉の相手方の債権を棚上げにすれば事業が継続できます。私的整理手続を行いつつ、債務者が事業を継続するためには、概ね、半年程度は資金ショートを避けられる資金的余裕が必要だと思われます。
 また、構造改革、営業強化、その他の経営改善の努力をし、スポンサー支援の可能性を加味してもなお、3~5年を目途に黒字化を果たせない計画となると、債権者の同意は得られにくいでしょう。

おわりに

 法的整理、私的整理のどちらの手続きが馴染むかは、債務者ごと、事案ごとに違います。倒産状態に至った場合には、事案の特徴を踏まえ、適切なプロセスを選択して手続を進めることが望まれます。

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