会社危機に際しての法的倒産手続を選択するポイント

事業再生・倒産
大島 義孝弁護士 東京ベイ法律事務所

 会社が危機的状況に陥ったので法的倒産手続を選択する場合、どのような方針で手続を選択する必要がありますか。

 まずは事業の再建が可能であるかを検討し、可能であれば再建型の手続を選択し、困難であれば清算型の手続を選択します。
 再建型/清算型のうち具体的にいかなる手続を選択すべきかは、管理型かDIP型か、手続期間や手続費用のほか、担保権を実行された場合の影響や資金繰りの状況をふまえて選択することとなります。
 また、法的手続と私的手続のいずれによって再建ないし清算手続を進めるかという点についても検討が必要となります。
 いずれにしても、事業再生分野に高い知見を有する専門家の助力を得ながら綿密な検討が必要となります。

解説

目次

  1. 再建型か清算型か
  2. 事業の再建が可能か検討する視点
    1. 事業自体の営業利益が黒字であること
    2. 資金繰りが続くこと
    3. 責任をもって経営を担う担い手がいること
  3. どの再建型法的手続を選択するか
  4. まとめ

再建型か清算型か

 法的倒産手続は大きくわけて「再建型の手続」と「清算型の手続」に分類されます。会社更生手続および民事再生手続が再建型の手続に該当し、破産手続および特別清算手続が清算型の手続に該当します。
 法的倒産手続のうち、再建型の手続を選択するか、清算型の手続を選択するかは大きな分岐点となりますが、まずは事業の再建が可能であるかを検討し、可能であれば再建型の手続を選択すべきでしょう。

法的倒産手続の分類

法的倒産手続の分類

事業の再建が可能か検討する視点

事業の再建が可能であるか否かは、以下のような点をふまえて慎重に検討すべきです。

事業自体の営業利益が黒字であること

 事業を再建するためには、一時的に棚上げするにしても将来にわたり旧債務を弁済していかなければならず、事業自体が黒字を生み出すのでなければ再建は困難です。
 したがって、現状において事業自体が営業黒字であること、仮にそうでなくとも再建のための諸施策を打てば確実に営業黒字になることが見込まれることが必要です。

資金繰りが続くこと

 営業が黒字だとしても、事業を継続して再建に導くためには資金繰りが続く必要があります。再建手続を申し立てた場合、原則として金融機関からの新規の資金調達は困難となります。
 一方、再建手続を進めるためには裁判所に納める予納金や弁護士などの専門家へ支払う費用が必要となります。
 また、申立てにより一時的に旧債務は棚上げとなりますが、仕入れや経費支払など事業継続のための資金は必要であり、仕入先から現金決済や前払金の要請にむやみに応じていれば、たちまち資金が枯渇することになります。
 さらに、租税公課や労働債務については、再建手続でも原則として減免を受けることはできませんので、これらについて多額の未納、未払がある場合には再建は困難です。不採算事業からの撤退や人員削減を予定している場合には撤退費用や退職金等も追加で必要です。
 したがって、会計士等の専門家の助力も得ながら当面(6か月程度)の保守的な資金繰りを作成して精査し、再建の可否を検討する必要があります。

責任をもって経営を担う担い手がいること

 事業を再建するために何よりも大切なことは、厳しい環境の下で事業の担い手となる者が、債権者や取引先に説明を行いながら失墜した信用を再構築し、同時に再建に向けて従業員を束ねていくことです。
 事業規模の見直しの過程でリストラなどの必要が生じる場合もあります。経営者が再建に対して意欲を持ち、困難に臨む覚悟がなければ、事業の再建はおぼつかないでしょう。
 もっとも、事業を支援するスポンサーが現れる確実な見込みがあれば、再建手続の中でスポンサーを選定のうえ事業を承継することも検討する余地があります。ただし、その場合であっても、スポンサーに対して事業を承継するまでの間、現経営陣が強い意志で再建手続を進めていく必要があります。

再建可能かどうかのチェックポイント
  • 事業自体の営業利益が黒字であること
  • 資金繰りが続くこと
  • 責任をもって経営を担う担い手がいること

どの再建型法的手続を選択するか

 再建型法的手続には、会社更生手続、民事再生手続がありますが、いずれの手続を選択すればよいか、いくつかの観点から慎重に検討する必要があります。

 詳細は各手続の項目で述べますが、一般に会社更生手続裁判所に選任された管財人が従前の経営陣に代わって事業運営を行う管理型手続を原則とし、する担保権者の担保権行使は拘束され、時間および費用もかかる重厚な手続であるとされるのに対し、民事再生手続従前の経営陣が引き続き事業運営を行うDIP型手続を原則とし、担保権は別除権として拘束されず、会社更生手続と比較すると時間および費用も少なくて済む簡易な手続であると言えます。

手続の種類 特徴
会社更生手続
  • 管理型手続
  • 担保権者の担保権行使を拘束する
  • 時間および費用もかかる重厚な手続
民事再生手続
  • DIP型手続
  • 担保権は別除権として拘束されない
  • 時間および費用の点においても少なくて済む

 ただし、最近はDIP型会社更生手続と呼ばれる民事再生手続に近い形態の会社更生手続を認める運用がなされており、両手続の違いは小さくなりつつあります。
 また、破産手続や特別清算手続の清算型法的手続に事業譲渡を組み合わせる手法により事業を再建する場合もあります。
 いずれにしても、会社の置かれた状況をふまえて慎重に手続を選択する必要があります。

まとめ

 以上のように、会社の危機に際して法的手続を選択する場合においては、事業を再建するか清算するかという点においてさまざまな手続の中からの選択が必要となりますが、実際に選択をする場面では事業再生分野に高い知見を有する専門家の助力を得ながら慎重に検討する必要があります。  

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