「特定技能」の外国人材を企業に紹介する際の留意点

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社は東京で人材派遣や紹介などの事業を行っています。本年度より設けられた新しい在留資格「特定技能」を活用して、外国人材の紹介事業を本格的に拡大していきたいと考えています。特定支援というサービスも提供しなければならないと聞いていますが、気を付けるべき点を教えてください。

 「特定技能」の在留資格を持つ労働者を採用する企業は、「特定支援」として定められた来日外国人向けの生活サービスを提供しなければなりません。人材紹介会社は「登録支援機関」の登録をすることで、特定支援のサービスを代行できるほか、人材紹介、在留資格手続きまでを一貫して提供することが可能となります。しかし、「特定技能」以外の在留資格については、申請取次資格を持たない専門家以外の手続代行が認められていないため注意が必要です。

解説

目次

  1. 「特定技能」の現状
  2. 「特定技能」と人材ビジネス
  3. ビジネスとしての特定支援サービス
  4. 特定技能と在留手続き
  5. 行政書士との業務提携

「特定技能」の現状

 在留資格「特定技能」については、すでに制度はスタートしているものの、本格的な運用までにはやや時間を要する見込みです。

 その理由として、特定技能人材については「特定分野」と呼ばれる建設、介護、飲食などの14の業界ごとに受入れが行われますが、それぞれの業界において特定技能人材として認定するための試験がほとんど実施されていないことがあげられます。

 各業界が準備を急いでいますが、「特定技能」の在留資格で実際に外国人が日本に入国、滞在を始めるのは、2019年の秋ごろから2020年初頭と見込まれています。

 また、現在は特定技能人材の受入れを希望する企業側も様子見の状況であり、動きが活発化するのは2020年にずれ込むと見込まれています。現時点では、特定技能を活用した外国人材の紹介事業がただちにビジネス化できる段階とは言えませんが、事前に準備を整え、スタートダッシュを切れる体制を築いておくことが重要です。

「特定技能」と人材ビジネス

 「特定技能」と比較される在留資格に「技能実習」があります。「技能実習」では多くの場合、「団体管理型」(参照:「現地で採用した外国人社員を研修のために日本に呼び寄せる方法」)での受入れとなり、第一次受入れ機関となる事業協同組合などが現地での採用面接の手配から在留手続き、入国後の技能実習生のケアなども行っていました。そのため、人材会社などのサービスを必要とする例はほとんど見られませんでした。

 しかし、「特定技能」の場合には、受け入れる日本企業が外国人労働者を直接採用し、雇用しなければなりません。ノウハウを持つグローバル企業にとってはそれほど高いハードルではありませんが、そもそも「特定技能」は日本人労働者の採用が難しい業界に特定されており、当然に中小企業が想定されています。中小企業が海外で人材を採用する、あるいは国内で外国人従業員を募集することは非常に難しく、その点において人材会社のサービスが役立つものと考えられます。

ビジネスとしての特定支援サービス

 もう1つ注目されている点に「特定支援」があります。企業が特定技能人材を採用する際には、特定支援として定められている来日外国人向けの生活サービスを提供しなければなりません(出入国管理及び難民認定法2条の5第5項、6項、8項)。特定支援のサービスには主に以下があげられます。

主な特定支援サービス
  • 空港への送迎
  • 入国前のガイダンス
  • 住居の手配
  • 携帯電話の手配
  • 銀行口座の開設
  • 日本滞在中の相談対応 など

 「特定技能」は、もともと海外在住者が来日することを前提とする制度であるため、このようなサービスの厳格な実施が義務付けられています。

 この「特定支援」は雇用企業が直接実施してもかまいませんが、前述したように中小企業では十分な対応ができるとは限りません。そのような場合には「登録支援機関」として登録された企業に代金を支払い、これらのサービスを代行してもらうことができます。なお、「登録支援機関」への登録には一定の要件が求められますが、業種などの制限はなく、人材サービス会社でも十分に登録が可能です(法務省入国管理局「特定技能外国人受入れに関する運用要領」平成31年3月)。

 中小企業が特定技能人材の紹介を依頼する場合には、紹介から採用をもって業務終了となるケースも考えられますが、特定支援を含めた一貫したサービス提供を求められるケースが多いものと見込まれます。人材の採用を実現しても、「特定支援」で求められる法的な義務が果たせなければ、雇用を断念せざるを得ないためです。

 「特定支援」で求められる各サービスは人的労働の割合が大きく、採算を取るためにはそれに見合った料金設定にする必要があると考えられます。しかし、サービス向上による価格の維持を目指しても、企業側には、「法的義務を果たすために利用する」といった側面もあり、積極的に高いサービスを求めるかどうかは、各企業の姿勢により異なるものと考えられます。

 また、すでに3000社以上の「特定支援機関」が登録されている状況では、価格競争が避けられないとも考えられます。効率性を追求して、低価格でも収益を出せるビジネスモデルを作ることが求められるでしょう。

特定技能と在留手続き

 特定技能人材など、外国人の人材紹介を行う際には、在留手続きへの対応が肝要となります。外国人材を紹介して採用が決まったのはよいが、就労可能な在留資格が許可されず、結果として日本で就労できないことも考えられるためです。

 そのため、人材紹介会社としては、採用後の在留手続きも配慮しなければ責任をもって外国人材を企業に紹介することができません。在留資格には多くの種類がありますが「特定技能」については、雇用企業や前述した「登録支援機関」は一定の条件のもとで在留資格手続きを代行することが認められます。

 以上のように、特定技能人材のみを扱う場合には、登録支援機関となることによって人材紹介、特定支援サービス、在留資格手続きまでを一貫して提供することが可能です。しかし、「特定技能」以外の在留資格「技術・人文知識・国際業務」などについては、入国管理の実務に通じた行政書士などの専門家に依頼する必要があるため注意が必要です。

行政書士との業務提携

 外国人材紹介のビジネスパートナーとして行政書士を選ぶ際には、事務所の収益モデルを注意深く見定める必要があります。行政書士事務所は、中心とする顧客ごとに大きく3つのタイプに分けることができます。

対象顧客の種別でみる行政書士事務所の特徴

中心となる顧客 特徴
①個人 永住権の取得、国際結婚、起業支援などが中心
②グローバル企業の出向者など アメリカのリロケーション会社などの指示を受けて定型業務を数多くこなす
③法人・個人を問わない 法人・個人を問わず、総合事務所として、幅広く外国人法務を扱う

 外国人の人材紹介においては、ベトナム人のエンジニアしか扱わない、外国人留学生のアルバイトのみ扱う、というように一定の業界で決まった職種以外は扱わない場合を除いて、実に様々な状況が考えられます。過去に在留申請が不許可になった経歴がある、在留資格に該当するか疑わしい、人材のステータスから適した雇用方法を知りたい、といった多様な状況に対して、経験や他社事例から的確なアドバイスができる事務所を選ぶことが重要です。

無料会員にご登録いただくことで、続きをお読みいただけます。

1分で登録完了

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する