「年次有給休暇」について就業規則に定める際の留意点

人事労務
小島 彰社労士 こじまあきら社会保険労務士事務所

 就業規則では、「年次有給休暇」に関してどのような定めをおくべきでしょうか。また、「年次有給休暇」に関する就業規則を作成する際に注意すべきポイントを教えてください。

 年次有給休暇とは、労働者に有給で与えられる休暇のことで、「年休」とも呼ばれています。年次有給休暇の発生要件や取得手続のほか、時季変更権、年次有給休暇の計画的付与などについて押さえておくことが求められます。

解説

目次

  1. 年次有給休暇
  2. 年次有給休暇の比例付与
  3. 年次有給休暇の取得手続
  4. 時季変更権の行使
  5. 基準日の設定と分割付与
  6. 年次有給休暇の計画的付与
  7. 年次有給休暇の消滅
  8. 時間単位の年次有給休暇

第6章 休暇等


(年次有給休暇)
第49条 採用日から6か月間継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤した従業員に10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した従業員に、以下の表の通り勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
2 前項の出勤率の算定に当たっては、年次有給休暇を取得した期間、産前産後の休業期間、育児・介護休業法に基づく育児休業期間・介護休業期間、および、業務上の傷病による休業期間は出勤したものとして取り扱う。会社の都合により休業した日、および、休日出勤日は所定労働日の日数から除外する。
3 年次有給休暇の付与は、1日を単位とする。
4 年次有給休暇の期間は、所定労働時間労働したときに支払われる通常の賃金を支給する。
5 当該年度において新たに付与した年次有給休暇の全部または一部を取得しなかった場合には、その残日数を翌年に限り繰り越すことができる。
6 第1項の規定に従い、10日以上の年次有給休暇が付与された従業員は、1年のうちの5日について、必ず年次有給休暇を取得しなければならない。

(年次有給休暇の比例付与)
第50条 前条の規定にかかわらず、週所定労働時間が30時間未満で、週所定労働日数が4日以下または年間所定労働日数が216日以下の従業員に対しては、以下の表の通り勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
週所定
労働日数
1年間の
所定労働日数
勤続期間
6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年
6か月
以上
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 10日
2日 73日〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜
72日
1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
(年次有給休暇の取得手続)
第51条 前2条の年次有給休暇は、従業員が所定の届出用紙にてあらかじめ時季を指定して請求するものとする。ただし、従業員が請求した時季に年次有給休暇を取得させることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に取得させることがある。
2 急病等で当日やむを得ず年次有給休暇を取得する場合は、必ず始業時刻の15分前までに、所属する部の部長に連絡をしなければならない。この場合、医師の診断書の提出を求めることができるとともに、本項の手続による年次有給休暇の取得が度重なる場合には、年次有給休暇の取得を認めないことがある。

(年次有給休暇の計画的付与)
第52条 前条の規定にかかわらず、労使協定を締結することにより、各従業員の有する年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、あらかじめ時季を指定して取得させることがある。

(時間単位の年次有給休暇)
第53条 時間単位の年次有給休暇(以下「時間単位年休」という)に関する労使協定を締結した場合には、従業員が有する年次有給休暇(前年からの繰越分を含む)のうち5日の範囲内において、従業員の希望に応じて、時間単位年休を付与する。
(1)時間単位年休付与の対象者は、すべての従業員とする。
(2)時間単位年休を取得する場合における、1日の年次有給休暇に相当する時間数は8時間とする。
(3)時間単位年休は、2時間単位で付与する。
(4)従業員が取得した時間単位年休に対しては、1時間当たり、健康保険法第99条第1項に定める標準報酬日額に相当する金額をその日の所定労働時間数で除して得られる金額の給与を支給する。
(5)上記以外の事項については、規則第49条の定めるところによる。

年次有給休暇

 年次有給休暇(年休)とは、一定期間継続して勤務した労働者に対し、権利として保障された休暇です(労働基準法39条)。年次有給休暇については、労働しない日に賃金が支払われる「有給」の休暇であることと、目的を問わず自由に取得できることが特徴です。

  • 年次有給休暇の発生要件
    年次有給休暇の発生要件は、労働者が6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤することです。この要件を満たすことによって、所定の日数分の年次有給休暇が当然に発生します。
    ここで「継続勤務」については実質的に判断され、労働者が同一企業に在籍していればよいとされています。たとえば、定年退職者の嘱託としての再雇用、パートタイム労働者から正社員への勤務形態の変更、在籍出向などの場合、労働関係が中断していない限り、継続勤務として扱われます。一方、転籍の場合は同一企業に在籍していないことになるため、継続勤務として扱われないケースもあります。

    「全労働日」とは、労働義務がある日をいいます。そのため、労働義務がない日(休日など)は、全労働日に含みません。一方、業務上の疾病による療養のための休業期間、産前産後の休業期間、育児・介護休業法に規定する育児・介護休業の取得期間は、全労働日には含まれますが、出勤したものとみなされます。その他、年次有給休暇を取得した期間も、同様に出勤したとして扱います。
  • 年次有給休暇の成立要件

  • 年次有給休暇の日数
    年次有給休暇の発生要件を満たした労働者については、採用後、暦月で6か月を経過した日に10日の年次有給休暇が発生します。その後2年間は、勤務期間1年ごとに1日ずつを10日の休暇日数に加算し、それ以降は、勤続期間1年ごとに2日ずつを加算していき、最大日数は20日となります。このため、勤続期間6年6か月の経過をもって最大日数である20日の年次有給休暇を取得することになります。

    年次有給休暇が発生する労働日は、原則として暦日(0時~24時までの24時間)計算によります。そのため、一昼夜交代勤務制のように1勤務が2日にわたる場合に年休を取得すると、2労働日分を消化したことになります。ただし、交代制における2日にわたる1勤務または常夜勤勤労者の1勤務については、その勤務時間を含む継続24時間を1労働日として年次有給休暇を与えることができます。なお、年次有給休暇日の賃金は、労働基準法39条7項において、就業規則その他の定めにより、平均賃金または所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金とされています。ただし、労使協定がある場合には、規定例のように標準報酬日額とすることができます。

  • 年次有給休暇の起算日
    年次有給休暇の起算日は労働者の雇入れ日ですが、その発生日が労働者ごとに異なり、管理が煩雑になります。そこで、管理をシンプルにするため、特定の締切日を設定することが認められています。具体的には、継続勤務6か月未満の者に対し、特定の締切日までの間で6か月に達しない期間を出勤したとみなす方法で、これにより、全労働者に年次有給休暇を統一的に付与することができます。

年次有給休暇の比例付与

 パートタイム労働者やアルバイトなどの年次有給休暇は、所定労働日数が週4日を超える者、所定労働日数が年216日を超える者、所定労働日数が週4日以下でも所定労働時間数が週30時間以上の者に対しては、正社員と同じ日数の年次有給休暇の付与が必要です。

 これに対し、所定労働日数や所定労働時間数が少ない場合は、これに応じて比例的に年次有給休暇を付与できます。これを比例付与といいます。具体的には、週4日以下に該当した上で、週30時間未満の者または年216日以下の者は、規定例のように、所定労働日数に比例した形で減じられた日数分の年次有給休暇が付与されます。

年次有給休暇の取得手続

 労働者は取得した年次有給休暇の行使の手段として、年次有給休暇の取得日を具体的に指定する時季指定権をもっていますが、法律上、時季指定の手続きは規定されていません。しかし、会社側にも業務の都合があり、直前に時季指定がなされると代替要員を確保できず、通常の業務に支障をきたすことにもなりかねません。そのため、労働者が年次有給休暇にかかる休暇届を提出する前に、直属の上司に取得日を打診し、内諾をもらっておくことがよく行われています。ただ、法律上は、時季指定権の行使について会社側の承諾は不要である点に留意が必要です(会社側は後述する時季変更権の行使が可能です)。

 「年次有給休暇を取得しようとする日の3日前までに、会社に休暇届を提出する必要がある」など、時季指定を休暇予定日の一定日数前に行わなければならないと定める規定は、相当日数を超えた日に時季指定を求めるようなものは許されないものの、業務上、合理的な範囲内の日数であれば、かまわないものとされています。
 これに対し、欠勤後にその欠勤を年休に充当するという事後の時季指定はできず、会社側に年休取得の効果を強制することはできないとされています。ただし、直属の上司などの同意を条件として、事後の時季指定を任意に認めることを就業規則に定めることは可能です。

時季変更権の行使

 労働基準法は、労働者が時季指定権を行使した場合でも、事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与える(振り替える)ことができると定めています。使用者のこのような権利を時季変更権といいます。年次有給休暇の時季指定は労働者が自らの権利として一方的に行うことができますが、使用者側の経営上の都合にも配慮が必要であるため、使用者には時季変更権が認められています。

 時季変更権の行使事由である「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するには、当該労働者の年休取得日(時季指定日)の労働がその者の担当業務の運営にとって不可欠であり、かつ代替要員を確保するのが困難であることが必要です。そのため、業務運営に不可欠な者からの時季指定であっても、使用者が代替要員確保の努力をしないまま直ちに時季変更権を行使することは許されません。

 これに対して、勤務割を変更することが可能な状態になかったと客観的に判断できる場合には、代替要員確保をするための具体的行為をしなくてもよいとされています。ただ、人員不足のために代替要員の確保が常に困難であるという状況であれば、労働者の時季指定により業務の一部が遂行できないおそれがあったとしても、事業の正常な運営を妨げる場合にはあたらないといえます。一方、労働者が長期かつ連続の期間にわたる時季指定をした場合は、使用者において代替要員を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障をきたす可能性が大きくなるため、使用者による時季変更権行使の裁量の幅が広くなり、時季変更権が認められやすくなります。

 年次有給休暇をどのように利用するかは、労働者の自由であるため、労働者は時季指定権を行使する際に利用目的を告げる必要はありません。そして、労働者が時季指定をする際、使用者が利用目的を尋ねて休暇の可否を決めるというように、年次有給休暇の取得を使用者の許可の下におくことは許されません。ただし、時季指定をした労働者全員に休暇を取得されると事業の正常な運営を妨げる場合に、使用者がどの労働者に対し時季変更権を行使するのかを判断するため、任意に利用目的をたずねることは認められます。

基準日の設定と分割付与

 年次有給休暇の付与にあたり「基準日」を設定し、管理上の負担を軽減する「斉一的取扱い」を採用することが認められています。実務上は、毎年4月1日または10月1日を基準日とし、その日に全労働者に対し一斉に年次有給休暇を付与するケースが多いようです。新入社員などについては、法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えずに、その日数の一部を法定基準日(労働基準法に規定に基づいて年休が付与される日)以前に付与することもできます(分割付与)。

 なお、2018年成立の労働基準法改正で、2019年4月以降は、10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、使用者が、法定基準日から1年以内に、時季を指定して5日以上の有給休暇を与えることが義務づけられます(斉一的取扱いによる基準日を設定している場合は、基準日から1年以内に5日以上の有給休暇を与えることが義務づけられます)。ただし、労働者の時季指定による年次有給休暇の日数分や計画年休の日数分は、使用者の時季指定義務の対象から除かれます。たとえば、計画年休の日数分が5日、労働者の時季指定による年次有給休暇の日数分が3日である場合、使用者は残った2日分について時季指定義務を負うことになります。

年次有給休暇の計画的付与

 労働基準法は、労使協定によって年次有給休暇を与える時季についての定めを置けば、その定めに従って与えることができると定めており、これを計画的付与といいます。ただし、労働者の個人的に利用するための年次有給休暇も必要であるため、5日分は個人が自由に取得できるようにしておき、5日を超える部分について計画的付与が認められます。計画的付与の方式としては、①事業場全体での一斉付与方式、②班別の交替制付与方式、③年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式、などがあります。

年次有給休暇の消滅

 年次有給休暇は1年間で消化するのが原則です。しかし、一般的には、当該年で取得されなかった年次有給休暇の繰越しを認め、2年の時効にかからない限り、翌年以降も行使できるという取扱いがなされています。繰越しが認められると、労働者が有する年次有給休暇は、当該年の分と前年からの繰越し分が混在することになります。この場合、繰越し分を先に消化するのか、当該年に取得した分を先に消化するのか、いずれの方法によるかを明確に記載するようにします。

 年休権(年次有給休暇を取得する権利)の消滅については、当該年に消化しきれなかった年次有給休暇について、使用者による買い上げが認められるかという問題がありますが、積極的に買い上げることは認められていません。また、事前に賃金などの対価を支払い、年休権を放棄させる行為については、年次有給休暇の制度を無に帰するおそれがあるため、労働者が合意していたとしても認められません。

 しかし、年休権が時効や退職によって未消化のまま消滅しようとするときに、それに代わる金銭を支払うことは違法ではないと考えられています。その他、年休権の2年の消滅時効を会社が独自に延長し、何年間かにわたって行使できるとする方法も考えられます。この方法は労働者に有利であるため許されます。ただし、独自に延長した分は労働基準法上の年次有給休暇ではなくなるため、会社独自に取扱いの方法を決めて運営する必要が生じます。

時間単位の年次有給休暇

 年次有給休暇は時間単位で取得することもできます(時間単位年休の制度)。ただし、時間単位で取得できるのは、前年からの繰越分も含めて年5日が限度とされています。また、分単位の端数は1時間に切り上げて取得させなければなりません。たとえば、1日の所定労働時間が8時間の会社であれば、1日分の有給休暇に相当する時間数を8時間とすることができます。一方、1日の所定労働時間が7時間30分の会社では、30分の端数が出てしまいます。この場合、有給休暇1日の時間数を7時間とすることはできず、1時間に満たない時間数は1時間に切り上げる必要があります。

 時間単位年休の制度を導入するためには、労使協定を締結し(届出は不要です)、就業規則で定める必要があります。労使協定では、【a】時間単位年休の対象労働者の範囲、【b】時間単位年休の日数(前年繰越分を含めて5日以内が限度)、【c】有給休暇1日の時間数(1日の所定労働時間数を下回らないこと)、【d】1時間以外の時間を単位とする場合の時間数、を定めます。なお、必ずしも1時間単位とする必要はなく、2時間単位、3時間単位などとすることもできます。

計画年休制度

©小島彰 本記事は、小島彰監修「事業者必携 働き方改革法に対応! 就業規則の作成・見直し実践マニュアル」(三修社、2019年)の内容を転載したものです。
事業者必携 働き方改革法に対応! 就業規則の作成・見直し実践マニュアル

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