外国人従業員が転職する際に雇用企業が行う手続き

人事労務
佐野 誠 株式会社ACROSEED

 当社で働いていた外国人従業員が国内の同業他社へと転職するため、近く退職することとなりました。当社はどのような手続きを行う必要がありますか。

 外国人従業員の転職に際して雇用企業は、退職する外国人従業員の氏名、在留資格、在留期間等をハローワークに届け出ることが必要です。届け出を怠った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。

解説

目次

  1. 外国人従業員の転職時に行うハローワークへの届出
  2. 外国人従業員本人が行う在留カードの手続き
  3. 円満退職でなかったとき
  4. 在留資格取消制度とは
  5. 外国人従業員の入社辞退と在留資格認定証明書の扱い
  6. 退職時の誠実な対応が次の採用につながる

外国人従業員の転職時に行うハローワークへの届出

 外国人従業員が転職する場合、「外国人雇用状況の届出」に基づいて、転職する外国人の氏名、在留資格、在留期間等をハローワークを通して厚生労働大臣に届け出ます(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、以下「雇用対策法」28条)。

 これには日本国籍を持たない「外交」「公用」「特別永住者」以外の在留資格の外国人労働者が該当し(雇用対策法施行規則10条)、届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金(雇用対策法40条1項2号)の対象となりますので、注意してください。

 なお、現在の雇用先企業が出入国在留管理庁に対して届け出るべき申請等は特にありません

外国人従業員本人が行う在留カードの手続き

 一方、外国人従業員本人は、在留カードに関連して出入国在留管理庁に対して「契約機関に関する届出」を行うこととなります。これは契約機関との契約の終了から14日以内に行うものとされており(出入国管理及び難民認定法、以下「入国管理法」19条の16第2号)、出入国在留管理庁が外国人従業員の退職を確認する方法として利用されています。

 この届出を怠った場合には、公的義務を履行していないとの理由で、次回の在留期間更新時に許可される在留期間が短縮されたり、場合によっては不許可となることも考えられます。外国人従業員は在留資格の手続きには気を配っていることが多いですが、在留カードの届出に関しては気が回らないケースも見られるため、ひと言注意してあげると良いでしょう。

円満退職でなかったとき

 しばしばトラブルとなるのが、円満退職でなかった場合です。雇用企業としては社員として働けるように雇用契約を交わし、その後、在留資格の手続きをしてあげたにもかかわらず、手続き完了後すぐに外国人従業員が退職してしまうようなケースです。

 在留資格を手に入れるために自社が利用されたと認識した雇用企業から、「自社で取得した就労可能な在留資格を取り消してほしい」との相談が筆者に寄せられることもあります。しかし、このような場合に雇用企業として取るべき手段はありません。在留資格の許可取得後すぐに雇用先を辞めたとしても、そのためにすぐに在留資格が取り消されるわけではないからです。

 とはいえ、現在では前述した在留カードの届出が義務付けられており、雇用企業が何もしなくても出入国在留管理庁はその事実を把握することができます。仮に、退職した外国人従業員が何も届出をしなかった場合には次回の更新時に何らかのペナルティを受ける可能性が非常に高くなります。

在留資格取消制度とは

 そのほか、在留資格取消制度も設けられています(入国管理法22条の4の1項)。これは、現在与えられている在留資格に該当する活動を正当な理由なく、3か月以上行っていない外国人に対しては出入国在留管理庁がその在留資格を取り消すことができるとされる制度です(入国管理法22条の4の1項6号)。すべてのケースで取消となるとは限りませんが、現在では法制度も整備されており、偽りや不正な手段で在留資格を手に入れた場合には、相応の措置が取られています。

外国人従業員の入社辞退と在留資格認定証明書の扱い

 そのほか、類似するケースとしては、海外から人材を呼び寄せるために在留資格認定証明書の交付申請を行い、在留資格認定証明書が発行された後に採用を辞退される場合があります。このケースは比較的頻繁にみられます。外国人従業員の人生にとって、母国から日本に移り住むことは大きな決断を伴います。そのため、渡航直前に自ら考え直したり、家族の反対に遭うなどして、来日および入社を取りやめる例がみられるようです。

 このような場合についても、原則として雇用企業が行うべきことはありません。不要となった在留資格認定証明書は、そのまま廃棄しても法律上の問題等はありません。しかし、出入国在留管理庁はその外国人が日本に入国することを前提として審査を行っているため、可能であれば不要となった在留資格認定証明書を返却することをお勧めします。

 これは義務ではありませんが、このような丁寧な対応を行うことで審査官の信頼を得られれば、次回の在留資格等の申請がスムーズに進むことも考えられます。逆に何度も在留資格認定証明書の申請を行っているものの、それに該当する外国人のほとんどが日本に入国していないような場合には、企業の管理能力が疑われかねません。「使用しなくなった在留資格認定証明書を返却したい」と伝えれば、出入国在留管理庁では問題なく受け取ってくれるはずです。くれぐれも丁寧な対応を心がけてください。

退職時の誠実な対応が次の採用につながる

 外国人従業員の退職にあたっては、諸手続きを含め、最後まで誠実な対応を心がけましょう。日本に在住する外国人のコミュニティは非常に親密であり、うわさ話やSNSなどにより雇用先企業の情報が拡散するスピードは想像以上のものがあります。

 やや極端な例ではありますが、技能実習生が職場でパワハラやセクハラなどを受けた場合、情報はほんの1時間後には本国の実家や送出し機関などに到達しています。その情報が多くの外国人求職者に知れ渡り、次回の採用時にそのような企業が忌避されるケースもあります。

 逆に、企業が最後まで適切な対応を行うことで、退職する従業員が自身の後任として友人や知人を紹介してくれるケースもよくみられます。また、退職後の従業員と同じ国籍を持つ外国人がその企業に応募したいと考えた際に、元従業員である退職従業員が相談を受ける可能性も考えられます。

 良い対応も、悪い対応もすべて自社に戻ってくると考え、最後まで外国人従業員の事を思いやる気持ちを忘れないでください。

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