育児・介護休業法に基づく紛争解決の援助・調停とは

人事労務

 育児・介護休業法に定めのある紛争解決の援助・調停とは何ですか。また、それぞれの制度の特徴と利用方法を教えてください。

 育児・介護休業法上、育児休業などに関する労働者と事業主との間の紛争の解決を目的として、「労働局長による紛争解決の援助」と「紛争調整委員会による調停」の2つの制度が定められています。

解説

目次

  1. 労働局長による紛争解決の援助
  2. 紛争調整委員会による調停

労働局長による紛争解決の援助

 育児休業などに関する紛争の当事者は、労働局長に、その解決について援助(助言、指導または勧告)を求めることができます(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」52条の4第1項)。援助を受けるための費用はかかりません。また、訴訟手続と異なり、関係者以外に援助の内容が公開されることはありません。

 援助を求めることができるのは、紛争の当事者である労働者または事業主です。いずれか一方からの求めで構いません。労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする不利益取扱いは禁じられています(育児・介護休業法52条の4第2項)。

 援助の対象となる紛争は、育児・介護休業法中の下記の事項に関する事業主の措置についての紛争です。

  1. 育児休業(2章)
  2. 介護休業(3章)
  3. 子の看護休暇(4章)
  4. 介護休暇(5章)
  5. 所定外労働の制限(6章)
  6. 時間外労働の制限(7章)
  7. 深夜業の制限(8章)
  8. 所定労働時間の短縮措置(23条)
  9. 所定労働時間の短縮措置に関する不利益取扱い禁止(23条の2)
  10. 育児休業などに関するハラスメントの防止措置(25条)
  11. 労働者の配置に関する配慮(26条)

 援助の申し出は、都道府県労働局に設置されている雇用環境・均等部(室)に行います。その後、雇用環境・均等部(室)が当事者から事情を聴取するなどし、問題解決に必要な助言などの援助を行います。

 労働者も事業主も、雇用環境・均等部(室)からの助言などに従うことは強制されません(この点は裁判所による判決と大きく違う点です)。あくまでも自発的な受入れによる解決が必要となります。

 厚生労働省が公表している「平成30年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での法施行状況」において、労働局長による紛争解決の援助については、下記のとおりの実績とされています。

  • 平成30年度における申立受理件数は132件、うち育児関係が115件
  • 申立の内容では、育児休業に係る不利益取扱いが62件(育児関係の申立のうち53.9%)と最も多い
  • 平成30年度中に援助を終了した132件のうち、92件(69.7%)について労働局長が助言・指導・勧告を行った結果、解決した

紛争調整委員会による調停

 育児休業などに関する紛争の当事者は、労働局長に、紛争調整委員会による調停を求めることができます(育児・介護休業法52条の5第1項)。調停のための費用はかかりません。また、訴訟手続と異なり、関係者以外に調停の内容が公開されることはありません。

 調停の申請をすることができるのは、紛争の当事者である労働者または事業主です。いずれか一方からの申請で構いません(ただし、参加するかどうかは他方当事者の自由になります)。労働者が紛争の調停の申請をしたことを理由とする不利益取扱いは禁じられています(育児・介護休業法52条の5第2項)。

 調停の対象となる紛争は、上記1の紛争解決の援助制度の対象と同じです。

 調停の申請は、雇用環境・均等部(室)に行います。調停手続自体は独立した第三者機関である紛争調整委員会により行われ、実際の調停のための会議は3名の調停委員により行われます。弁護士、大学教授、家庭裁判所家事調停委員、社会保険労務士などの労働問題の専門家が調停委員となっていることが多いです。調停委員は、当事者からの事情聴取等を行い、調停案を作成し、受諾勧告(受け入れることを勧めること)をします。調停では、出来事が法律に違反するかを判定するというよりも、むしろ結果として生じている損害の回復について現実的な解決策を提示することに重きが置かれます。

 労働者も事業主も、紛争調整委員会が作成した調停案を受け入れる義務はありません(この点は裁判所による判決と大きく違う点です)。また、調停のために出頭する義務もありません。あくまでも自発的な話合い・受入れによる解決が必要となります。調停が成立した場合、当事者間で和解契約が成立したものと取り扱われます。調停条項への違反があった場合には、別途訴訟手続などで違反の責任を追及することになります。

 厚生労働省が公表している「平成30年度雇用環境・均等部(室)における法施行状況について」において、紛争調整委員会による調停については、下記のとおりの実績とされています。

  • 平成30年度における申請受理件数は4件
  • 調停の実施結果を見ると、調停を開始した4件のうち調停案の受諾勧告を行ったものは2件で、その2件については調停案を当事者双方が受諾し、解決した

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する