実務と理論から訴訟をサポート、三村小松法律事務所が誕生 レポート:三村小松法律事務所旗揚げセミナー

訴訟・争訟

目次

  1. 知財訴訟を勝つために押さえるべきポイント
  2. 訴訟弁護士による裁判を見据えた契約交渉サポート
  3. 権利行使を前提とした企業価値と知財戦略

訴訟に強い法律事務所を作りたい――
3人の法律家の強い思いから、新しいタイプの法律事務所が誕生した。

 知的財産権分野において、裁判官としての豊富な経験を有し、知財関連訴訟の理論と実務を知り尽くした三村量一 弁護士の呼びかけに応じたのは、三村弁護士も所属していた長島・大野・常松法律事務所で訴訟グループに所属し、「それぞれ専門分野を持つ弁護士とチームを組み、あらゆる訴訟を担当してきた」という訴訟のエキスパート・小松隼也 弁護士、知的財産権分野の研究者として国内随一の実績を誇る・玉井克哉氏の2人だ。これら3名のトップランナーによって訴訟実務に大きな強みを持つ法律事務所・三村小松法律事務所が設立された。

 本稿では、2019年11月26日に行われた旗揚げセミナーの模様をレポートする。

知財訴訟を勝つために押さえるべきポイント

 最初に登壇した三村量一 弁護士からは、知的財産権をめぐる訴訟に臨むために押さえておくべきポイントが示された。

三村小松法律事務所  三村量一 弁護士

三村小松法律事務所 三村量一 弁護士

 訴訟の第一段階として重要となるのが、「どの弁護士が企業の代理人を務めるか」である。三村弁護士は裁判官時代、「弁護士の実力が裁判の勝敗に直結する」例を多数見てきた。客観的な事実関係を中心に争われる知財訴訟は、弁護士の「力技」による逆転決着が多くはない分野だが、代理人の力量や経験等の不足により「勝てるはずの訴訟で負ける」ケースをしばしば見たという。

 それは、裏を返せば、相手方の代理人の構成や実力から訴訟の難易度を見極められるということでもある。三村弁護士は、「差止請求や損害賠償の請求など、依頼者の意向がどこにあるかを意識」し、「勝てる訴訟をきちんと勝つ」ためにアレンジした形で訴訟を遂行することの重要性を強調した。

 訴訟においては、「裁判官は誰か」という点も無視できない。長年にわたる裁判官としての経験から、個別の裁判官の特徴や傾向を熟知する三村弁護士は、「的確な見通しのもとで、テーラーメイドの訴訟を提供していきたい」と抱負を述べた。

訴訟弁護士による裁判を見据えた契約交渉サポート

 通常の企業間取引では、条件交渉の後に相手方から契約書が出た段階で弁護士に契約書レビューを依頼することも多いだろう。そのとき、弁護士から不利な条件や文言の修正についてアドバイスを受けたとしても、「すでに金額や条件がフィックスしており、いまさら引き戻すことは難しい」というケースもまた多いはずだ。

 長島・大野・常松法律事務所 訴訟グループにおける多数の訴訟経験を通じて、小松弁護士は確信したことがある。それは、契約書の作成段階から訴訟弁護士が関わり、「契約」や「約束事」などの取引内容を証拠として形に残すことで、企業のメリットを最大化できるということだ。

三村小松法律事務所 小松隼也 弁護士

三村小松法律事務所 小松隼也 弁護士

 取引先とトラブルとなり、契約文言の解釈をめぐって訴訟に至った場合、採用される証拠は主に次の6つである。

  • 担当者間のメールのやり取り(契約書のコメントを含む)
  • 会議の議事録
  • 担当者の手控えメモ
  • 口頭でのやり取り(録音などを含む)
  • 陳述書
  • 証人尋問(担当者 or 役員)

 これらの証拠が存在しないとき、裁判所は過去の事例から合理的な判断を下す。しかし、契約の初期段階から訴訟弁護士が関わり、実際の裁判で重要となる証拠、特に客観的証拠を1つひとつ評価しながら残していくことができれば、いざ紛争になった際に強いアドバンテージを持つことができる。それを交渉材料に、取引の金額や条件を自社に有利な形に引き寄せられる可能性は格段に高まってくる。

 いざ裁判となれば、裁判費用も重い負担だ。しかし、訴訟弁護士に裁判を見据えた契約交渉サポートを依頼した場合には、支払う弁護士費用は通常の法律相談に要する程度の額で済むという。これは、企業にとって合理的かつ魅力的な選択肢となるかもしれない。

権利行使を前提とした企業価値と知財戦略

 東京大学 先端科学技術研究センター教授・信州大学教授を務め、知財分野の研究者として国内屈指の実績を誇る玉井克哉氏は、知財の権利行使に熱心ではない点を日本企業の特徴としてあげた。

三村小松法律事務所 玉井 克哉氏

三村小松法律事務所 玉井 克哉氏

 多くの日本企業では研究開発がとりわけ重要視され、権利行使までを想定しているケースが多くない一方、欧米企業では、権利行使から逆算した形で研究開発が進められる例が少なくない。「研究開発においては権利行使を念頭に置き、知的財産権を戦略的に行使していくことが求められる」と玉井氏は言う。

 実際に、2019年4月には、ノキア社(フィンランド)が、特許をめぐってダイムラー社(ドイツ)をドイツで提訴した。すると2019年8月、ダイムラー社と提携関係にあるコンチネンタル社(ドイツ)が、ノキア社が参入するライセンスプラットフォームのAvanciに対しFRAND(Fair & Reasonable & Non-Discriminatory)条件 1 での全世界ライセンスを求め、米国カリフォルニア州で提訴。そこでドイツでの差止めの差止命令を請求すると、今度はドイツの裁判所がそれを禁ずる命令を出すなど、世界では非常に活発な動きが見られている。

 このように従来の知的財産法が想定していなかった分野において、法学は論文や判例研究を通して、法律の解釈や望ましい判例のあり方を、裁判所に対し働きかける役割を担う。そのような最先端の法学を企業の実務に応用するのが研究成果の検証であり、「クリエイティブな法解釈によって裁判所や立法者に影響を与えていくことが、日本の知財の活性化にもつながる」と玉井氏は結んだ。

左から三村小松法律事務所 玉井 克哉氏、小松隼也 弁護士、三村量一 弁護士

 各分野で実績を積んだ3人のスペシャリストをはじめとして、経験豊富な人材が結集した三村小松法律事務所。訴訟に重点を置いた新たなタイプの法律事務所の今後に注目が集まっている。また、三村小松法律事務所は、2月12日(水)に、米国の連邦巡回控訴裁判所で長官を務めたランドール・レーダー判事の来日を記念するセミナーの開催を予定している。

(取材・文:BUSINESS LAWYERS 編集部、写真:中澤真央)

【三村小松法律事務所主催セミナー概要】

【開催日】2020年2月12日(水)
15:30 開場
16:00 三村量一=玉井克哉「日本知財法のこれから―最近の立法と判例を踏まえて―」
17:00 ランドール・レーダー「知財から見た『米中貿易戦争』 
    ※逐次通訳つき質疑応答
18:30 レセプション

※詳細は三村小松法律事務所ウェブサイトでご確認ください。

  1. 標準規格に準拠するために必須の特許をライセンスするにあたり「公平、妥当かつ差別のない(fair, reasonable and non-discriminatory)」条件のこと。 ↩︎

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