公益通報者保護法に基づく指針の解説
危機管理・内部統制
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュースNo.187」の「特集」の内容を元に編集したものです。
消費者庁は、10月13日、「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」を公表しました。
昨年6月に公益通報者保護法の一部を改正する法律(以下、「本法律」といいます。)が成立・公布され、来年6月1日に施行されることが見込まれています。「公益通報者保護法に基づき事業者がとるべき措置に関する指針」では、本改正により事業者に義務付けられた内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置についての具体的内容を定めた指針(以下、「指針」といいます。)の概要等についてご紹介しました。このたび、当該指針の解説(以下、「本解説」といいます。)が公表されましたので、本特集ではその一部をご紹介します。
本解説の内容も踏まえつつ、自社の内部通報体制と社内規程に不十分な点がないか確認していただき、本法律の施行日までに必要な整備を行っていただくことが望ましいと考えられます。本解説も本法律の施行時から適用されます。
はじめに - 本解説の目的 -
公益通報者保護法(以下、「法」といいます。)11条1項及び2項は、公益通報対応業務従事者を定めること及び事業者内部における公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとることを事業者に義務付けています。
事業者がとるべき措置の具体的な内容は、事業者の規模、組織形態、業態、法令違反行為が発生する可能性の程度、ステークホルダーの多寡等によって異なり得るため、指針では、事業者がとるべき措置の個別具体的な内容ではなく、事業者がとるべき措置の大要が示されています。
措置の個別具体的な内容については、各事業者において、指針に沿った対応をとるためにいかなる取組等が必要であるかを主体的に検討した上で、内部公益通報対応体制を整備・運用することが必要です。本解説は、事業者における検討を後押しするため、指針を遵守するに当たって参考となる考え方や指針が求める措置に関する具体的な取組例等を示すものです。
本解説の概要 - 指針の解説 -
(1)従事者の定め(法11条1項関係)
従事者として定めなければならない者の範囲
指針本文 | 「事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。」 |
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指針の趣旨 |
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指針を遵守するための 考え方や具体例 |
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従事者を定める方法
指針本文 | 「事業者は、従事者を定める際には、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くことが従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならない。」 |
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指針の趣旨 |
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指針を遵守するための 考え方や具体例 |
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(2)内部公益通報対応体制の整備その他の必要な措置(法11条2項関係)
部門横断的な公益通報対応業務を行う体制の整備
◾︎ 内部公益通報受付窓口の設置等
指針本文 | 「内部公益通報受付窓口を設置し、当該窓口に寄せられる内部公益通報を受け、調査をし、是正に必要な措置をとる部署及び責任者を明確に定める。」 |
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指針の趣旨 |
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指針を遵守するための 考え方や具体例 |
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その他に推奨される 考え方や具体例 |
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内部公益通報対応体制を実効的に機能させるための措置
◾︎労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知に関する措置
指針本文 | 「法及び内部公益通報対応体制について、労働者等及び役員並びに退職者に対して教育・周知を行う。また、従事者に対しては、公益通報者を特定させる事項の取扱いについて、特に十分に教育を行う。」 |
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指針の趣旨 |
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指針を遵守するため の考え方や具体例 |
<労働者等及び役員並びに退職者に対する教育・周知について>
・コンプライアンス経営の推進における内部公益通報制度の意義・重要性 ・内部公益通報制度を活用した適切な通報は、リスクの早期発見や企業価値の向上に資する正当な職務行為であること ・内部規程や法の要件を満たす適切な通報を行った者に対する不利益な取扱いは決して許されないこと |
<従事者に対する教育について> 従事者に対する教育については、例えば、定期的な実施や実施状況の管理を行う等して、通常の労働者等及び役員と比較して特に実効的に行うことが求められる。法12条の守秘義務の内容のほか、例えば、通報の受付、調査、是正に必要な措置等の各局面における実践的なスキルについても教育すること等が考えられる。 |
◾︎内部規程の策定及び運用に関する措置
指針本文 | 「この指針において求められる事項について、内部規程において定め、また、当該規程の定めに従って運用する。」 |
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指針の趣旨 |
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その他に推奨される 考え方や具体例 |
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