延長登録無効審判とは

知的財産権・エンタメ

 延長登録無効審判について教えてください。

 延長登録無効審判とは、特許権の存続期間の延長登録を無効にすることを求める審判手続です。延長登録無効審判を請求できるのは利害関係人に限られ、また、延長登録は現状医薬品と農薬についてのみ認められている制度であるため、延長登録無効審判は、多くの場合、特許権を有する先発医薬品メーカーを被請求人として、後発医薬品メーカーによって請求されます。

解説

目次

  1. 延長登録無効審判の概要
  2. 延長登録無効審判と特許無効審判との関係
  3. 延長登録無効審判の請求の理由
  4. 延長登録無効審判の請求
  5. 延長登録無効審判の審理と審決
  6. 不服申立て

延長登録無効審判の概要

 延長登録無効審判とは、特許権の存続期間の延長登録を無効にすることを求める審判手続です。

 延長登録とは、許認可を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を回復することを目的として、その期間について、20年の存続期間満了後5年を上限として、特許の存続期間の延長を認める制度です。現状では、医薬品と農薬の発明についてのみ、延長登録が認められています。詳細は、「特許権の存続期間延長登録とは」を参照ください。

延長登録無効審判と特許無効審判との関係

 延長登録無効審判は、特許権の存続期間の延長登録を無効にするもので、特許そのものを無効にするものではありません。延長された存続期間においても、特許発明の新規性や進歩性の欠如などを理由にした審判を請求するときは、特許無効審判によることになります。特許無効審判の詳細は「特許無効審判の概要と無効理由」を参照ください。

延長登録無効審判の請求の理由

 延長登録無効審判の請求の理由は、以下の5つです(特許法125条の2第1項)。

  1. 発明の実施に許認可が必要であったとは認められないとき(特許法125条の2第1項1号)
  2. 発明の実施について許認可がなされていないとき(同項2号)
  3. 延長された期間が発明を実施できなかった期間を超えているとき(同項3号)
  4. 特許権者でない者の出願に対して延長登録がされたとき(同項4号)
  5. 共同出願違反(同項5号)

 ここに列挙された延長登録の無効理由は、延長登録の拒絶理由(特許法67条の3)に対応するものです。それぞれの内容については、「特許権の存続期間延長登録とは」を参照ください。

延長登録無効審判の請求

 延長登録無効審判は、利害関係人だけが請求することができます(特許法125条の2第2項)。一般的には、後発医薬品メーカー(ジェネリック医薬品)が、特許権を有する先発医薬品メーカーを相手取って請求することが多い審判手続です。

 延長登録無効審判は、存続期間満了後でも請求することが可能です(特許法125条の2第3項、同法123条3項)。

延長登録無効審判の審理と審決

 延長登録無効審判の審理は、特許無効審判と同様、3名または5名の審判官のもと、当事者対立構造で(特許法136条1項)、口頭審理の形式により行われます(特許法145条1項)。

 審理の結果無効審決がなされたときは、存続期間の延長は初めからされなかったものとみなされます(特許法125条の2第4項本文)。ただし、延長された期間が発明を実施できなかった期間を超えていることを理由に、その超える期間について無効の審決がなされたときは、その超える期間について延長がされなかったものとみなされます(同項ただし書)。

 延長登録無効審判において、不成立審決がなされたときは、一事不再理が働き、当事者または参加人は、同一の事実および同一の証拠に基づいて再度延長登録無効審判を請求することはできなくなります(特許法167条)。

不服申立て

 延長登録無効審判の審決に不服があるときは、知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起することができます。

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する