拒絶査定不服審判とは
知的財産権・エンタメ拒絶査定不服審判について教えてください。
拒絶査定不服審判とは、特許審査や延長登録の審査の結果拒絶査定を受けた特許出願人が、不服を申し立てる審判手続です。手続的には、審査の続審としての性質を有し、また、審判官は、単に査定を取り消すだけでなく、自ら特許をすべき旨の決定をすることもできます。拒絶査定不服審判の請求と同時に補正がなされたときは、審判官による審理の前に審査官が審査をし、特許査定をすることもできます。
解説
拒絶査定不服審判とは
拒絶査定不服審判とは、特許審査の結果拒絶査定を受けた特許出願人が、不服を申し立てる審判手続です。拒絶査定不服審判は審査の続審としての性質を有しており(特許法158条)、拒絶査定の違法性を判断するのではなく、出願に対して特許査定をすべきか否かを判断の対象とします。
拒絶査定不服審判の請求
拒絶査定不服審判は、拒絶査定の謄本の送達の日から3か月以内に請求する必要があります(特許法121条1項)。共同出願の場合には、出願人全員が共同して審判請求をする必要があります(特許法132条3項)。共同出願にかかる拒絶査定不服審判の審決取消訴訟の原告適格については、「審決等取消訴訟の提起と訴訟要件」を参照ください。
前置審査
拒絶査定不服審判の請求人は、審判請求と同時に、補正をすることができます。審査段階では、なるべく補正をせずに広い権利の獲得を目指し、拒絶査定を受けてから、拒絶理由を解消するための補正をする取扱いが認められているのです。
この場合、拒絶査定不服審判の審理は開始されず、改めて審査官が審査を行います(特許法162条)。拒絶査定に応じて出願人が補正をする場合には、それまで特許審査をしてきた審査官が審査をする方が効率的だからです。このような審査手続は、「前置審査」と呼ばれます。実務的には、前置審査によって、しばしば審判官による審理が行われる前に手続が完了します。
前置審査において、補正によっても拒絶理由が解消されていないと認められたときは、拒絶査定不服審判の審理が行われます。
拒絶査定不服審判の審査と審決
拒絶査定不服審判の審理は、3名または5名の審判官からなる合議体により、書面審理によって進められます(特許法136条1項、145条2項)。
上述のとおり、拒絶査定不服審判の審理は、特許査定をすべきか否かを対象とするものであり、審判請求に理由があるときは、審判官は、特許をすべき旨の決定をします(特許法159条3項、51条)。法律上は、拒絶査定を取り消し、審査官に差し戻すことも可能ですが(特許法160条)、実務では、差戻しはあまり行われていません。
審判請求に理由がないときは、不成立審決がなされます。また、審判段階で新たな拒絶理由が発見されたときは、拒絶理由通知が発せられ、補正の機会が与えられます。その結果、拒絶理由が解消されないときは、不成立審決がなされます。
不服申立て
拒絶査定不服審判において不成立審決がされたとき、当該審決に不服のある出願人は、知的財産高等裁判所において審決取消訴訟を提起することができます。
延長登録と拒絶査定不服審判
ここまで、特許審査の段階における拒絶査定に対する審判を前提に説明してきましたが、拒絶査定不服審判は、延長登録審査における拒絶査定に対しても請求することができます。延長登録については「特許権の存続期間延長登録とは」を参照ください。

弁護士法人イノベンティア 東京事務所
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