組物の意匠制度とは
知的財産権・エンタメ当社ではオーディオプレーヤーとスピーカーを組み合わせたオーディオ機器セットを販売しています。スピーカー単体は新規のデザインではありませんが、オーディオプレーヤーを加えたオーディオ機器セットは新しいデザインを採用します。模倣品を販売されないためにどのような手段を採ることができますか。
組物の意匠登録出願をすることが考えられます。
解説
組物の意匠制度とは
同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定めるもの(「組物」)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができます(意匠法8条)。
上記の「経済産業省令で定める組物」は、意匠法施行規則8条および意匠法施行規則別表第2で定められており、「一組の洗面化粧台セット」「一組のオーディオ機器セット」「一組の自動車用フロアマットセット」など56種類あります。
「一組のオーディオ機器セット」であれば、オーディオプレーヤー、スピーカーといった個々の製品ではなく、オーディオプレーヤーとその両サイドのスピーカー2つのセット全体を1つの意匠として登録するというものです。
組物の意匠の登録要件
平成10年の意匠法改正前には、一つ一つの物品が意匠登録の要件を満たす必要がありましたが、改正後は、組物全体について要件を満たせば登録できることになりました。
そして、組物の意匠と認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)経済産業省令で定めるものであること(意匠法8条、意匠法施行規則8条、別表第2、意匠審査基準72.1.1.1)
上記の56種類に含まれないものは、組物として意匠登録することはできません。
(2)構成物品が適当であること(意匠法8条、意匠法施行規則8条、別表第2、意匠審査基準72.1.1.2)
定められた構成物品以外のものや、不適切なものが含まれている場合、定められた構成物品の一つしか記載されていない場合は、構成物品が適当ではなく、登録が認められません。
(3)組物全体として統一があること(意匠法8条、意匠審査基準72.1.1.3)
以下のいずれかに該当する場合は、組物全体として統一があるといえます。
- 構成物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合が、同じような造形処理で表されていることによって組物全体として統一があると認められる場合
- 構成物品が全体として一つのまとまった形状または模様を表すことによって組物全体として統一があると認められる場合
- 各構成物品の形状、模様もしくは色彩またはこれらの結合によって、物語性など観念的に関連がある印象を与えることにより、組物全体として統一があると認められる場合
組物の意匠の部分意匠・分割出願
組物は、組物全体として統一があることを理由に意匠登録を受けられるものですので、組物の意匠登録をしたうえで、構成物品を部分意匠として登録することはできません(意匠法2条で、意匠法8条は除外されています)。
また、構成物品の一部を取り出して分割出願することもできません(出願日が遡及せず、分割出願時に新たな出願が行われたものとして取り扱われることになります)。
組物の意匠と認められない場合の取扱い
組物の意匠登録出願がなされたものの、組物の意匠と認められなかった場合には、意匠法10条の2により、分割出願を行うことが可能です(出願日が遡及し、元の意匠登録出願時にしたものとみなされます)。

弁護士法人イノベンティア
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