部分意匠制度とは
知的財産権・エンタメ当社は文房具を製造販売するメーカーですが、当社が開発している新製品のボールペンは、ペン先のデザインに特徴があります。他社にまねされないようにするためには、どうすればよいでしょうか。
新製品全体の形状について意匠登録出願するほか、ペン先の部分について、部分意匠登録出願を行うことが考えられます。
解説
部分意匠制度とは
意匠法2条1項では、「『意匠』とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」と定められています。
かつて、意匠登録の対象は製品全体のみであり、製品の一部(「物品の部分」)は意匠登録制度の対象外でしたが、平成10年の意匠法改正前により、対象となりました。
部分意匠登録制度により、製品の一部のみを模倣された場合にも、保護を受けることが可能になりました。
部分意匠の内容
部分意匠の登録を行う際には、「物品の部分」のみならず、全体像を開示します。具体的には、物品のうち、意匠登録の対象とした特徴的部分を実線で、それ以外の部分を破線で描き、登録対象を特定します。
部分意匠の保護範囲
それでは、部分意匠を模倣された場合には、当該部分以外の形状(破線の部分)がまったく似ていなくても、意匠権侵害といえるのでしょうか。
この点については、当該部品のみが独立して権利の対象で、それ以外の形状(破線の部分)が似ていなくてもよいという考え方もありえますが(独立説)、判例は、当該部品は物品全体の要部にすぎないので、物品全体の形状も見て部分意匠の類似範囲を判断すべきである(要部説)としています。
具体的には、「部分意匠制度は、独創的な創作がなされた物品の部分に係る意匠を保護する必要性から立法されたものである(意匠法2条1項参照)が、部分といっても、あくまでベースとなった物品の形状全体との関係における部分であるから、部分意匠の形態のみならず、物品全体の位置、大きさを勘案しながら部分意匠の類似の範囲を判断すべきである。」と判示されています(知財高裁平成23年3月28日判決)。
そのため、部分意匠登録部分が類似していても、物品全体における位置や大きさがまったく異なるような場合には、意匠権侵害といえない可能性があります。
部分意匠と損害賠償
部分意匠は、物品の一部を対象とするものですので、部分意匠の意匠権侵害に基づく損害賠償請求について、裁判所は、当該部分意匠の寄与度を考慮し、損害賠償の金額を認定することが多いようです。
部分意匠を取得した後に全体意匠も取得したり、関連意匠を活用するなど、他の意匠登録制度と併用することで、より保護の範囲および損害賠償の範囲を広くすることも可能となります。

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