銀行・事業会社が資金決済サービスを行う場合にはどのような規制を受けるか

ファイナンス
西脇 英司弁護士 渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

 銀行または一般の事業会社が、資金決済サービスを提供する場合、どのような法規制に注意する必要がありますか?

 資金決済サービスの提供にあたっては、提供主体や資金決済サービスの提供方法などに応じて様々な法規制がありますが、特に、銀行法、資金決済に関する法律、出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締に関する法律、割賦販売法、貸金業法、犯罪による収益の移転防止に関する法律や外国為替及び外国貿易法などに注意が必要です。

解説

目次

  1. 資金決済サービスについて
  2. 資金決済サービスを規制する法令
    1. 銀行法による規制
    2. 資金決済法による規制
    3. 出資法による規制
    4. 割賦販売法
    5. 犯罪収益移転防止法
    6. 外国為替及び外国貿易法

資金決済サービスについて

 「資金決済」とは、一般に、資金の支払による債権債務関係の解消をいいますが、資金決済サービスにおいては、単に資金を決済するだけでなく、資金の受入れや、資金の融資、為替取引(資金の移動)などの様々なサービスが決済に付随して提供されることが想定されており、様々な規制の適用とその境界が問題になります。

 資金決済サービスの典型としては、銀行が提供する預金の振込みや預金の引落しなどがあげられますが、一般の事業会社も様々な資金決済サービスを提供することが考えられます。

 資金決済サービスを提供する際には、主に次に掲げる各法令に注意が必要です。

資金決済サービスを規制する法令

銀行法による規制

銀行以外の事業会社への規制

 「資金決済」とは、資金の支払による債権債務関係の解消であり、資金決済サービスの典型的なものとして、 銀行預金の振込み預金の引落しサービスなどがあげられます。
 こうした預金の受入れや為替取引を含むサービスは、銀行法の規制により、 原則として銀行だけが提供できる こととされ、銀行の営業免許をもたない事業会社が、他の法令上の根拠なく、為替取引等の銀行の固有業務を利用した資金決済サービスを提供すると、罰則が適用される可能性があります(銀行法61条、出資法2条1項、8条など)。

銀行への規制

 他方、銀行も、預金の受入れや為替取引業務を利用して、自由に資金決済サービスを提供できるわけではありません。なぜならば、銀行は、銀行法に基づく他業禁止義務を負っており、銀行本体が提供できる資金決済サービスの範囲は他業禁止義務に反しない範囲に限定されるからです(銀行法12条、10条、11条)。
 また、銀行法上、銀行または銀行持ち株会社が子会社とできる会社も限定されており、 銀行が子会社を通じて他業を営むことも制限されています (銀行法16条の2など)。

銀行子会社の業務範囲に関する制度改正の流れ

 しかし、このような銀行本体の他業禁止または銀行の子会社の業務範囲の規制は、銀行による利便性の高い資金決済サービス等の提供を阻害する一因となっています。

 このため、現在、「銀行が提供するサービスの向上に資する業務又はその可能性のある業務」を行うための子会社等への出資については、認可を受けることにより、出資を行うことができる旨の法改正が検討されているところです。

資金決済法による規制

 平成22年4月1日に施行された資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます)は、収納代行業務、代引業務などの為替取引を利用するサービスの他、プリペイド式の決済サービス、電子マネーなどの前払式支払手段を利用するサービスを提供する者を規制し、利用者の保護をはかっています。
 前述のとおり、為替取引は銀行だけに許された業務でしたが、 少額の取引であれば、資金移動業者として登録を受けることにより、資金決済法の規制のもとで、為替取引を行うことができる ようになりました(資金決済法2条、37条)。

 なお、銀行業が免許制であるのに対し、 資金移動業は登録制であり、また、資金移動業者について、銀行のような自己資本比率規制、業務範囲規制、子会社規制、株主規制等は設けられておらず、資金移動業者として登録は、銀行の免許を取得することに比べ容易といえます。

出資法による規制

 出資法は、 出資金の受入れや預り金などを業として行うことを原則として禁止しています (出資法1条1項、2条1項など)。
 一般の事業者が、資金決済サービスを提供する際には、一時的ですが事業者に資金が滞留すると考えられるため、出資法の「預り金」規制に違反しないかに注意する必要があります。

割賦販売法

 資金決済サービスがクレジットカード取引プロセスにおいて提供される場面では、そのプロセスに介在して付加価値を提供する事業会社も存在します。

 カード発行会社を兼ねない「アクワイアラー(加盟店契約会社)」やアクワイアラーと加盟店の間に代理店や取次として介在する「ペイメントサービスプロバイダー(以下「PSP」といいます)」がそうした会社にあげられます。

 この場合、クレジットカード取引に関する法規制である割賦販売法の規制についても注意する必要があります。

 クレジットカード取引に関して、経済産業省は、割賦販売法の改正を準備しています(産業構造審議会 商務流通情報分科会「報告書 ~クレジットカード取引システムの健全な発展 を通じた消費者利益の向上に向けて~」(平成27年7月3日))。

 改正法案では、以下の内容が検討されており、今後法規制は強化される方向です。

アクアイワラー 登録制の導入・適切な管理の義務
PSP 任意的登録制の導入
  • 登録PSPにはアクワイアラーに準じた規制を課す
  • 登録PSPとの間でだけ取引を行うアクワイアラーには登録要件・行為規制を一部軽減

犯罪収益移転防止法

 銀行、資金移動業者、両替業者などの特定事業者は、以下の義務があります(犯罪収益移転防止法4条、6条、7条、8条、10条)。

  1. 取引時の本人確認
  2. 本人確認記録・取引記録の作成・保存
  3. 疑わしい取引の届出
  4. 体制整備(研修の実施等)

 資金決済サービス業者が、上記の特定事業者に該当する場合には、資金決済サービスを提供する際に、これらの本人確認等の義務を負うと考えられます。
 なお、インターネット取引の場合においても本人確認書類を郵送等でやりとりしなければならないことは、事業上の高いハードルと考えられます。

外国為替及び外国貿易法

 資金決済サービスは、クロスボーダーの資金移動を伴う場合が少なくないと考えられますが、この場合には、外国為替及び外国貿易法の規制に注意する必要があります。
 また、同法も、資産凍結等経済制裁措置の実効性確保のため、銀行等および資金移動業者に対して本人確認義務及び本人確認記録の作成・保存義務を課しています。

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