ハラスメント内部通報で通報者が匿名扱いを希望する場合の実務対応

危機管理・内部統制
佐藤 和哉弁護士 牛島総合法律事務所

 私は、ある会社で内部通報の窓口を担当しておりますが、ある従業員から「上司からひどいパワハラを受けているので会社として適切に対応してほしい」と内部通報がありました。ただ、当該従業員は「自分が内部通報をした事実は、当該上司には絶対に知られないようにしてほしい」とも述べています。会社として、どのように対応すればよいのでしょうか。

 パワハラの内部通報を受けているのですから、会社としては、これを放置することはできません。本来的には、当該従業員(被害者・通報者)および当該上司(行為者)から事情聴取するなど事実関係の調査をしたうえで、パワハラがあったと認定できる場合には当該上司に対して懲戒処分を行うなど、雇用管理上必要な措置を講ずる義務を負います(※)。しかし、通報者が、自らが内部通報をした事実は当該上司に知られないようにしてほしいとして、匿名扱いを希望している以上、会社としては通報者の秘密を守ることを第一に考えるべきです。したがって、事実関係の調査や雇用管理上必要な措置の実施も、通報者の秘密を漏らさない限度で行う必要があり、何をどこまで実施すべきなのか、事案毎に最適な対応策(具体的には後記4で詳述します)を検討するべきです。

(※): 2020年6月1日に施行された改正「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下「パワハラ防止法」といいます)30条の2第1項。ただし、中小企業主については、雇用管理上必要な措置を講ずる義務は2022年4月1日から適用となり、それまでの期間は努力義務にとどまります。

解説

目次

  1. はじめに
  2. ハラスメントの内部通報があった場合に会社がとるべき本来的対応と留意すべきポイント
  3. 匿名扱いの希望があった場合に生ずるジレンマ
    1. 通報者が匿名扱いを希望する理由
    2. 通報者の秘密保持の徹底について
    3. 通報者の秘密保持を徹底すれば事実関係の調査等が制約を受けるというジレンマについて
  4. ジレンマに対処するための実務上の対応策
    1. 配置転換を行う
    2. ハラスメント研修を実施する
    3. 同じ行為者からハラスメントを受けている他の従業員からの内部通報を促す
    4. 行為者に対する聞き取りに同意するよう通報者を説得する
    5. 行為者の解雇を検討する
  5. まとめ

はじめに

 ハラスメントの内部通報については、通報者 1 が、通報の対象者であるパワハラ等の行為者(本稿において「行為者」といいます)からの報復をおそれ、自らが通報した事実が行為者に知られないようにしてほしいとして、匿名扱いを希望することが多く見受けられます。このような場合に、会社がかかる匿名扱いの希望を無視ないし軽視して対応すると、通報者が行為者から報復を受けて二次被害が生じてしまったり、当該会社の内部通報制度に対する従業員の信頼が損なわれてしまうなど、重大な結果をもたらすおそれがあります。しかし、他方で、通報者が匿名扱いを希望していることを理由に、事実関係の調査や行為者への対応をとることを怠れば、同種のハラスメントが繰り返され、職場環境が著しく悪化するおそれがあるというジレンマがあります。

 本稿では、まず、ハラスメントの内部通報があった場合の本来的な対応について概観し(下記2)、通報者から匿名扱いの希望があった場合に上述のようなジレンマが生じるメカニズムについて敷衍(ふえん)したうえで(下記3)、会社としてどのような対応策をとっていくべきかについて検討します(下記4)2

ハラスメントの内部通報があった場合に会社がとるべき本来的対応と留意すべきポイント

 ハラスメントの内部通報があった場合に、会社としてとるべき対応の典型的な流れについては、下図のように整理することが可能です。

ハラスメント内部通報時の対応の流れ

ハラスメント内部通報時の対応の流れ

 上記①の事実関係の調査において重要となるのは、行為者に対しても聞き取りを行って、弁明の機会を与えるべきであるという点です。通報者の側に誤解や悪意があったり、行為者の側に正当な言い分がある場合もあります。事実関係を正しく認識するためにも行為者から話を聞くべきですし、法的にも、従業員に対して懲戒処分をする場合には、特段の事情のない限り当該従業員に対してあらかじめ弁明の機会を与えるべきであるとされています 3

 ただし、ハラスメントの内部通報については、行為者に対して聞き取りを行えば、行為者が「誰が内部通報をしたのか」を認識ないし推測できてしまうという問題があります。パワハラの行為者に対する聞き取りでは、たとえば、「あなたは、◯月◯日の◯時頃、X会議室で、部下であるA氏に対して『小学生でもわかるようなことがなぜわからないのか』『会社を辞めたらどうか』などと言いませんでしたか」などと、行為者による特定の従業員に対する特定の言動について行為者の認識を聞くことになります 4。それゆえ、聞き取りを行う者が誰が内部通報をしたのかを行為者に伝えなかったとしても、行為者は、「A氏が内部通報をしたのであろう」と推測することができてしまうのです。

 パワハラ防止法では、事業主は、従業員が内部通報を行ったことや聞き取りに応じたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをしてはならない旨が規定され(パワハラ防止法30条の2第2項)、また、事業主は、そのような不利益取扱の禁止を就業規則に定めるなどして、従業員に周知・啓発しなければならない(厚生労働省のいわゆる「パワハラ防止指針」4の(4)ロ) とされています 5

 しかし、そのような周知・啓発を行ったとしても、行為者が通報者に対して有形・無形の報復等を行うリスクは残りますので、その点に対する十分な配慮が必要になります。

 具体的には、通報者に対して、以下の3つの点を説明したうえで、そのような聞き取りを実施することに同意してもらえるかどうかを尋ねるべきです 6(消費者庁「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(平成28年12月9日。以下「消費者庁ガイドライン」といいます)III., 1.,(1)参照)。

  1. 会社として、行為者に対して通報者から聞き取った事実関係をベースにした聞き取りを行いたいと考えていること
  2. そのような聞き取りを行えば、通報者の特定につながり得る情報を行為者に開示せざるを得ないこと
  3. その場合、通報者を認識ないし推測した行為者が報復等を行うリスクを否定できないこと

匿名扱いの希望があった場合に生ずるジレンマ

通報者が匿名扱いを希望する理由

 実務上、ハラスメントの通報者が、匿名扱い 7 を希望することは非常に頻繁に見られます。通報者の立場からすれば、自身が通報した事実を行為者に知られれば、当該行為者 8 との人間関係が悪化し、その後の仕事がやりにくくなるのではないかとか、仕事を取り上げられたり、人事評価で意図的に低い評価を付けられたりするなど、有形・無形の報復を受けるのではないか、といった恐怖を感じるのはきわめて自然なことです。

通報者の秘密保持の徹底について

 通報者が匿名扱いを希望しているにもかかわらず、それを無視して行為者に対する聞き取りを行えば、それがきっかけで、行為者が通報者を特定して報復するなどの二次被害が生じるおそれがあります。また、現実に二次被害が生じなかったとしても、通報者において、「会社は自分を守ろうとしてくれない」「内部通報などするものではない」などのネガティブな感情を抱き、それを他の従業員にも話すことが想定され、そうなれば、その会社の内部通報制度に対する信頼が著しく損なわれるおそれがあります。

 そこで、従前より、内部通報の実務上、通報者の意向を最大限尊重して、通報者の秘密保持を徹底すべきであるとされてきました。消費者庁ガイドラインでも、以下の措置を講じることにより秘密保持の徹底を図るべき旨が規定されています(同ガイドラインIII., 1.,(1))。

通報者の所属・氏名等や当該事案が通報を端緒とするものであること等、通報者の特定につながり得る情報は、通報者の書面や電子メール等による明示の同意がない限り、情報共有が許される範囲外には開示しない

 さらに、令和4年(2022年)6月までに施行される改正公益通報者保護法が、公益通報の対応業務に従事する者に守秘義務を課し、その違反には刑事罰による制裁を設けている点には、十分な注意が必要になります 9

通報者の秘密保持を徹底すれば事実関係の調査等が制約を受けるというジレンマについて

 行為者への聞き取りについて通報者からの同意を得られない場合に、通報者の秘密保持を徹底すれば、行為者に対する聞き取りを行うことは事実上不可能となります。そのため、事実関係の確認や行為者に対する弁明の機会の付与ができないままとなり、行為者に対する注意・指導や懲戒処分を行うことも困難になるという事態が生じます。そうなれば、内部通報の対象となったハラスメントは放置され、その同じ行為者が、通報者や他の従業員に対して同種のハラスメントを繰り返すことにもなりかねません。

 そして、行為者によるハラスメントが悪質で深刻なものであればあるほど、通報者が行為者からの報復をおそれる度合いも高まり、行為者に対する聞き取りに対する同意を拒む動機が強まる結果、事実関係の確認などができないままハラスメントが放置されるリスクが余計に高まることになります。

ジレンマに対処するための実務上の対応策

 以下においては、上記3-3で述べたような、通報者の秘密保持を徹底すれば事実関係の調査等が制約を受けるというジレンマへの対応策として考えられるものをいくつかご説明します。これらの対応策は、どれか1つを実施すればよいというものではなく、事案の重大性や性質、職場の状況、通報者の意向なども踏まえつつ、ケースバイケースで、複数の対応策を組み合わせるなどして、会社にとってベストな対応策を見極める必要があります。

配置転換を行う

 内部通報の対象となったハラスメントの疑いのある言動にかかる事実関係の確認ができない状況であっても、将来のハラスメントの被害を予防するため、通報者または行為者を配置転換させることが考えられます。この場合、行為者に、内部通報をきっかけとした配置転換であることを知られないようにするため、通常の人事異動の体裁をとるなどの工夫が必要です。また、通報者を配置転換させる場合には、通報者が「ハラスメントの被害を受けている自分がなぜ異動させられなければならないのか」といった不満を持つことが想定されますので、会社として様々な事情を考慮して最善を尽くした結果であることをあらかじめ説明しておくべきです。

ハラスメント研修を実施する

 ハラスメント研修は、内部通報にかかる事実関係の確認ができない状況でも実施可能であり、また、その内容が適切なものであれば、行為者に対する一定の教育効果ないし牽制効果が期待できると考えられます。なお、行為者が、ハラスメント研修は自身に対する内部通報をきっかけとして行われるものであると認識した場合には、通報者を特定しようとするリスクもありますので、ハラスメント研修の対象者を、たとえばすべての管理職とする、あるいは、将来に向けてハラスメント研修を定期的に実施するなどの工夫をすることも考えられます。

同じ行為者からハラスメントを受けている他の従業員からの内部通報を促す

 通報者からの聞き取りの結果、行為者が、通報者以外の従業員に対してもハラスメントをしている疑いが生じるケースも多く見られます。そのような場合、行為者の周辺のできるだけ多くの従業員に対して、「職場環境について問題に感じていることはないか」などと抽象的な質問 10 をして、当該行為者からハラスメントを受けている旨の話が出てきた場合には、内部通報として会社に対応を求めるよう促すことが考えられます。

 当初の通報者以外の多くの従業員から、当該行為者からハラスメントを受けたとの内部通報がなされた場合には、当該行為者に対して、たとえば、以下のように注意・指導することが考えられます 11

多くの従業員から内部通報がなされた場合の注意・指導の例

「◯人以上の従業員から、あなたからパワハラを受けたとの内部通報を受けました。内部通報をした従業員は皆、自身が内部通報したことをあなたに知られたくないと言っていますので、内部通報をした従業員の所属・氏名や内部通報の対象となったパワハラの具体的内容を開示することはできませんが、あなたのパワハラについて◯人以上の従業員から内部通報があったことは間違いありません。あなたの言動について反省して、問題があれば改めるようにしてください」

 このように、多数の従業員から内部通報がなされれば、通報者が一人だけの場合に比して、行為者がハラスメントをしたとの主張が通報者の誤解や悪意に基づくものである可能性は低くなりますし、行為者において誰が通報者なのか特定し難くなるというメリットがあります(ただし、基本的には、各通報者に対して、会社として行為者に対してそのような注意・指導をすることを説明し、了解を得たうえで行うべきです)12

行為者に対する聞き取りに同意するよう通報者を説得する

 通報者から聞き取った事実関係をベースにした行為者への聞き取りを行うことについて同意するよう、通報者に説得を試みることが考えられます。

 同意を無理強いすることは避けるべきですが、通報者だけの問題ではなく、同じ職場にいる他の従業員の安全にもかかわる問題であることを説明し、「報復等ではないかと疑われる場合にはすぐに知らせてもらえれば会社として適切な対応をする」旨を伝えるなどして、理解を求めることが考えられます 13

 ただし、通報者に会社を信用してもらうことが大前提になりますので、普段から、通報者や調査に協力した者に対する報復を禁ずる姿勢を明確にしておくことを含め、会社として、内部通報を健全に機能させたいと考えており、そのために、通報者や調査に協力した者の保護を最優先に考えていることを周知・徹底することが肝要になります。

行為者の解雇を検討する

 行為者の暴行・暴言やセクハラ等により、身の危険を感じて退職する者が相次いでいるような場合等には、職場秩序の維持や従業員の安全確保のために、行為者の解雇を検討せざるを得ない場合もあります。

 解雇を実施する際には、行為者に対して予あらかじめ弁明の機会を与えたほうが望ましいことは確かですが 14、しかし、通報者が匿名扱いを希望しているため、事前に弁明の機会をそれ与えることが難しい場合には、解雇の通知の直前に解雇理由を抽象的に説明して(ハラスメントの具体的な内容には言及せずに)弁明の機会を与える、という方法もあり得ます 15 16 17

まとめ

 内部通報制度は、適切に運用すれば、社内の問題を早期に合理的に解決できる仕組みですが、運用を誤れば、社内の問題を解決できないだけではなく、「内部通報に会社が適切に対応しなかった」という新しい問題が作り出されてしまうことになります。

 公益通報の担当者に守秘義務を科す改正公益通報者保護法の施行を前に、内部通報の担当者の負担とリスクは高まる一方であり、内部通報の実務に精通した弁護士との連携の必要性がますます高まっていると言えます。

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  1. 実務上、ハラスメントの目撃者等が内部通報を行う場合もありますが、本稿では、ハラスメントの被害者が内部通報を行うケース(被害者=通報者であるケース)を前提に検討しています。 ↩︎

  2. なお、本稿では議論を単純化するためにパワハラに焦点をあててご説明しますが、本稿の議論は、セクハラやマタハラについても同様にあてはまります。 ↩︎

  3. 菅野和夫「労働法〔第12版〕」(弘文堂、2019)717頁 ↩︎

  4. 仮に、行為者に対する聞き取りにおいて、相手方や具体的な行為の態様を特定しないまま、「あなたはパワハラをしたのではありませんか。何か弁明することはありませんか。」などと質問しても、行為者には誰に対するいかなる言動が問題にされているのかがわからないため、説明や反論をしようがなく、また、行為者に対して弁明を行う機会を与えたことにならないと考えられます。 ↩︎

  5. 令和2年厚生労働省告示第5号 ↩︎

  6. なお、会社が、内部通報の対象であるパワハラの目撃者等に対して聞き取りを行う場合にも、会社の調査に協力した目撃者等に対して行為者が報復を行うリスクがあることから、同様の配慮が必要になります。 ↩︎

  7. 内部通報自体、通報者の氏名を明かさずに行われることもありますが、本稿では、通報者が自らの氏名を明かして内部通報しているケースを前提にしています。 ↩︎

  8. たいていの場合、行為者は、通報者の上司等、通報者の身近で仕事をしている通報者より立場が強い者。 ↩︎

  9. 令和4年(2022年)6月までに施行される予定である改正公益通報者保護法は、公益通報の対応業務に従事する者に、かかる業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らさないという守秘義務を課し(同法12条)、かかる義務の違反に対して刑事罰(30万円以下の罰金)を科すことを規定しています(同法21条)。
    公益通報者保護法の保護が及ぶ通報対象事実は、刑事罰の対象となる犯罪行為などに限定されるため、必ずしも、すべてのハラスメント事案についてこの改正法が適用されるわけではありません。
    しかし、パワハラについては暴行罪(刑法208条)や侮辱罪(刑法231条)などに該当する可能性があり、セクハラについては強制わいせつ罪(刑法176条)などに該当する可能性があります。また、内部通報の対象となっている行為がそのような犯罪行為に該当するか否かは調査してみなければわかりません。そのため、ハラスメントの内部通報の担当者は、改正公益通報者保護法が施行された後に、同法が適用されて守秘義務が課される可能性があること(換言すれば、通報者の同意なく通報者を特定させる情報を漏らした場合には、通報者から同法違反であるとして刑事告訴されるリスクがあること)を前提に、内部通報に対応する必要があることになります。
    なお、消費者庁の「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会の報告書(案)」では、「ハラスメント事案等で被害者と公益通報者が同一の事案においては、公益通報者を特定させる情報を共有する際に、当該公益通報者からの書面による承諾をとることが望ましい」旨が述べられています(同報告書(案)11頁)。 ↩︎

  10. なお、このような質問をする際に、最初の通報者から当該行為者によるハラスメントについての内部通報があった事実を開示することは、最初の通報者から同意を得ていない限り、避けるべきです。質問の相手方に対して、質問内容などを秘密にするよう求めたとしても、質問内容などが漏洩されて当該行為者に伝わってしまうリスクがあるためです。 ↩︎

  11. 場合によっては、懲戒処分を実施することも検討する余地があると考えられます。その場合には、弁明の機会を付与することは必須なのか、あるいは、抽象的なやりとりをもって弁明の機会を付与したと言い得るのか、等を検討する必要があります。 ↩︎

  12. なお、内部通報の具体的内容を行為者に開示しない場合、行為者においては、自身の言動のいかなる部分が問題とされているのか認識し難い場合も多いと思われますので、行為者にハラスメント研修を受けさせたり、専門家によるカウンセリングを受けさせるなどの施策と組み合わせることも有益と考えられます。 ↩︎

  13. 通報者ないし行為者の配置転換を行ったうえであれば、同意を得られやすくなると考えられます。 ↩︎

  14. 特に、就業規則上、懲戒処分の前に弁明の機会を与える旨の規定がある場合には、弁明の機会を与えずに行われた懲戒処分は無効となると考えられています(たとえば、東京高裁平成16年6月16日判決・労判886号93頁(千代田学園(懲戒解雇)事件)等)。 ↩︎

  15. 極端な場合には、弁明の機会を与えずに解雇することを検討せざるを得ない場合もあり得ます。 ↩︎

  16. 裁判例においても、セクハラを理由とする懲戒解雇の事案で、事前に弁明の機会を与えれば、セクハラの被害者に有形、無形の圧力が加えられると推認できる場合には、懲戒解雇の通告と同時に行為者に対して弁明の機会を与えたことはやむを得ない措置であり、問題とされたセクハラ行為の概略を伝える程度の事実の告知であっても、事情聴取に応じた者を秘匿するためにはやむを得なかった旨判示したもの(東京地裁平成17年1月31日判決・判タ1185号214頁(日本HP社セクハラ解雇事件))があり、参考になります。 ↩︎

  17. なお、職場秩序の維持や従業員の安全確保のために、急いで解雇する必要性が高く、事実関係の裏付けが十分に取れていないまま解雇通知をせざるを得ないような場合には、懲戒解雇ではなく、普通解雇を選択することも検討すべきです。なぜなら、一般に、懲戒解雇よりも普通解雇のほうが解雇が無効と判断されるリスクが小さいことに加え、懲戒解雇の場合は解雇通知の時点において会社が認識していた事実しか懲戒解雇の根拠にできないのに対して、普通解雇の場合には、解雇通知時点に存在していた事実であれば、解雇通知後に会社が認識した事実であっても、解雇の正当性を基礎付ける事実として主張できるためです。ただし、解雇された従業員の請求に応じて解雇理由証明書(労働基準法22条)を交付した場合には、使用者において、解雇理由証明書に記載のなかった事由を解雇理由として主張することは原則として許されないと考えられているため(広島高裁令和2年2月26日判決)、注意が必要です。 ↩︎

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