ベトナム消費者保護法の概要と消費者との契約で確認すべき条項

国際取引・海外進出
原 智輝 弁護士 明倫国際法律事務所

 ベトナムにおける消費者保護法について消費者との関係や契約書の内容など注意すべき点はありますか。

 ベトナムの消費者保護法は消費者との契約について方式、内容など強行規定を設けているほかに、消費者の個人情報の取扱いにも言及している点に注意が必要です。

解説

目次

  1. ベトナム消費者保護法の概要
  2. 消費者との契約が無効となる場合
  3. 訪問販売時のクーリングオフ制度

ベトナム消費者保護法の概要

 ベトナムにおいて、消費者権利保護法(No.59/2010/QH12)は、2010年から制定され、消費者保護の基本的な法規範文書となっています。他方、消費者保護に関しては、個別の事例に応じて、食品安全法(2018年改正版)、広告法(2012年)、商法(2005年)、競争法(2018年)など様々な特別法を参照する必要もある点に留意が必要です。

 本稿では、消費者保護法のなかで、消費者と契約を締結する場面で問題となる条項等を紹介します。

 消費者保護法の保護の1つに、消費者の情報保護規定が置かれている点がまず注目されます(消費者保護法6条)。なお、本法でいう消費者とは、個人等が、消費または生活目的で商品を購入し、サービスを利用する場合を指しています(消費者保護法3条1項)。

 本条では、事業者が商品取引やサービスを利用した際に、消費者の情報が保護されることを明記しており、消費者情報の収集、使用目的の通知、目的内の使用、情報収集、使用、譲渡時の安全性および正確性の確保、消費者自ら情報修正措置を講じることができるようにすること、原則として消費者情報の第三者提供の禁止などを規定しています。

 また、事業者としては、消費者との契約の場面で、明確でわかりやすい契約書を作成し、契約言語を原則としてベトナム語にすること、その他電子的取引の場合には商品・サービスを販売・提供する組織・個人は、契約締結前に消費者が契約書をすべて読めるような環境を提供しなければならない(消費者保護法14条)などの義務を負っています。

 契約条項の解釈の場面では、解釈が分かれる場合、消費者側に有利な解釈をするものとされている点にも注意が必要です(消費者保護法15条)。

消費者との契約が無効となる場合

 契約内容については、次のような場合には契約が無効となるとされています。

a  商品・サービスを販売・提供する組織・個人の責任が排除される場合
e.g.「本製品の使用により乙(消費者)の健康・財産が損害される場合にも、甲(売主)はその責任を負わない」旨の条項


b  消費者の提訴・起訴権が制限・排除される場合
e.g.「本契約に起因するあらゆる紛争は、(売主の所在地である)X地方裁判所だけで訴えることができる」旨の条項


c  消費者が、契約書に詳細な記述がない商品・サービスを購入・利用した場合において、商品・サービスを販売・提供する組織・個人が、事前に承認した契約書の条件、または商品・サービスの販売・提供における規則・規定を一方的に変更可能とする場合
e.g.「本基本契約は、甲の事情により変更されることがあり得る。この場合に、甲は、履行日から30日間前に変更内容を公開するものとする」旨の条項


d  商品・サービスを販売・提供する組織・個人が一方的に義務を果たさない消費者を判断する場合
e.g.「甲(売主)の判断により乙(買主・消費者)がその義務を履行しなかったとみなされるとき、甲は契約を解除することができる」旨の条項


e  商品・サービスを販売・提供する組織・個人によって、商品納品・サービス提供の時点で価格が設定または変更される場合
e.g.「本契約製品の価格は、甲により、市場価格の変動に伴い、引渡の時点で変更され得る」旨の条項


f  契約書の内容の解釈を商品・サービスを販売・提供する組織・個人のみが行う場合
e.g.「本契約の条項に関して、当事者間の理解が異なる場合は、甲(売主)の理解を正解の解釈とみなす」旨の条項


g  商品・サービスを販売・提供する組織・個人が第三者を通して商品・サービスを販売・提供する場合において、商品・サービスを販売・提供する組織・個人の責任が規定されていないとき
e.g.「丙により販売される甲の製品の使用により乙の健康・財産が損害される場合にも、甲はその責任を負わない」旨の条項


h  商品・サービスを販売・提供する組織・個人が自分の義務を果たさないのに対して、消費者は自分の義務を果たなければならない場合
e.g.「甲が本契約に定まる義務を履行していなくても、それは乙の代金支払義務を免除する理由にならない」旨の条項


i  消費者の承認がなくても商品・サービスを販売・提供する組織・個人の権利・義務が第三者へ譲渡される場合
e.g.「本契約に定める甲の権利義務は、乙の同意がなくても、第三者に譲渡することができる」旨の条項

訪問販売時のクーリングオフ制度

 訪問販売の場合は、クーリングオフ期間が設けられており、その期間は3日間とされています。そのため、訪問販売契約の締結の場合は、買主(消費者)は3日以内に契約を一方的に解除することができることになります。なお、政令によりこの期間内に、売主は、買主に対して支払いや義務履行を求めてはいけない(政令99/2011/ND-CP号第19条)とされています。

 訪問販売時以外の場合は、クーリングオフ制度の適用はありませんが契約締結までの流れにおいて売主に多くの義務(説明義務や契約条項研究期間設定義務や約款登録義務など)を規定することで対応が図られています。

この実務Q&Aを見ている人はこちらも見ています

無料会員登録で
リサーチ業務を効率化

1分で登録完了

無料で会員登録する