電子データ・電子ファイルに含まれる情報

IT・情報セキュリティ

 電子データや電子ファイルにはどのような情報が含まれていますか。

 電子データは、パソコン等の電子計算機の処理に使われるデータであり、電磁的記録媒体に保存される「電磁的記録」をいいます。電子データの集まりを電子ファイルと呼びますが、電子データは電子ファイルと同じと考えてもほとんどの場合、差し支えありません。

 電子ファイルを電磁的記録媒体に記録して裁判の証拠として提出する場合と、印刷した書面を証拠として提出する場合とでは、メタデータが含まれるかが異なるため、電子ファイルを電磁的記録媒体に記録して提出する意味は大きいといえます。一方、電子ファイルに含まれるメタデータや、ファイルシステムが管理しているプロパティ情報は、改ざんの容易性から、必要な改ざん防止措置が取られていなければ、改ざんされた可能性を考える必要があります

解説

目次

  1. 電子データと電子ファイル
  2. メタデータとプロパティ情報
  3. メタデータの削除

電子データと電子ファイル

 電子データとは、パソコン等の電子計算機の処理に使われるデータであり、電磁的記録媒体に保存される「電磁的記録」のことをいいます。電子データの集まりを電子ファイルまたは単にファイルと呼び、ファイルとして構成されていないものを電子データと呼ぶ場合もありますが、電子データはファイルと同じと考えてもほとんどの場合、差し支えありません。

 電磁的記録は、民事訴訟法3条の7第3項カッコ書きで「電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるもの」と定義されています 1

 また電磁的記録媒体に記録するファイルの形式は、電磁的記録の用途により、テキスト形式や拡張子、文字数、文字コードなどが規定されているものもあります 2

 ファイルは、電子計算機で電子データを扱う時の基本単位となり、プログラムやその一部を構成するモジュールなどを記録したプログラムファイルと、文書や数値、データベースや画像、音楽などを記録したデータファイルに大別できます。電子計算機で扱えるすべての電子データは、ファイルとして記録されます。

プログラムファイルとデータファイルの例

プログラムファイルとデータファイルの例

 ファイルを紙に印刷した場合には、ファイル内に保存されていたメタデータが印刷されません(後述)。そのため、厳密にいえば、この印刷された紙媒体はファイルに含まれる情報をすべて表示したものとはいえないことになります。

 ファイルを電磁的記録媒体に記録して裁判の証拠として提出する場合 3 と、ファイルを印刷した書面を証拠として提出する場合とでは、メタデータが含まれるかどうかが異なるため、ファイルを電磁的記録媒体に記録して提出する意味は大きいといえるでしょう。もっとも、ファイル自体は電磁的記録であり、そのままでは可読化・可視化できないため、最終的にはディスプレイに表示させたり、紙媒体に印刷したりする必要があります 4。この際、通常メタデータはディスプレイや紙媒体に印刷されないため、必要な場合にはこれを表示する必要があります。また、民事訴訟において、電磁的記録媒体を証拠として提出した場合には、準文書(民事訴訟法231条)として提出したことになるため、裁判所や相手方の求めがあるときは、ファイル内容を説明した書面を提出する必要があります(民事訴訟規則149条)。また、相手方が電磁的記録媒体の複製物を求めたときは、これを交付する必要もあります(民事訴訟規則144条)。

メタデータとプロパティ情報

 メタデータとは、通常、ファイルが印刷された紙媒体にはそもそも印刷されない情報であり、パソコンを使用している使用者が意図せずにコンピュータ等の情報システムやソフトウェアにより自動的に作成および付与される情報のことをいいます。また、メタデータは「ファイル自身に関連する情報(属性情報)」とも定義されます 5。このメタデータは、ファイルを開いて編集などを行わない限り、ファイルをコピーして別のパソコンで確認したとしても、通常変更されることはありません。

 他方、ファイルには、パソコンのOSのファイルシステムが付加する情報があります。これには、作成日時、更新日時、アクセス日時のタイムスタンプと呼ばれる日時情報や、ファイルを保存したユーザ名などがあり、タイムスタンプと合わせてプロパティ情報と呼ばれます。しかし、このプロパティ情報は、ファイルを開く、編集する、コピーするなどをすれば、更新・変更され、ファイルを別のパソコンにコピーすれば、そのパソコンにログインしているユーザが当該ファイルを保存したという内容に変更されます。

 たとえば、あるコンピュータに保存されているファイルを、別のパソコンにコピーした場合、このファイルの作成日時は、コピーした日時に変更されてしまう場合があります。そのため、ファイルを証拠として保全する場合には、このプロパティ情報が表示されている状態をスクリーンショットなどにより画像データとして保全するか、タイムスタンプを変更させないように保全する必要があります。

 対象とするファイルのタイムスタンプを変更させないようにするには、圧縮ファイルとして保存し、圧縮ファイルを別のパソコンにコピーしてから、解凍(展開)することなどの操作が必要です。

 また、ファイルやフォルダのタイムスタンプは、パソコンのOSが管理している時刻情報に基づいて付加されるため、正確な日時との誤差がないか、ローカルタイム 6 やサマータイム 7 が関係してずれていないかの確認が必要な場合もあります。

 このようにファイルに含まれている情報(メタデータ)とパソコンのOSが管理している情報(プロパティ情報)とは異なることに注意する必要があります。

 ファイルに保存されているメタデータは、ソフトウェアやファイル形式ごとに異なります。たとえば、JPGファイルに含まれるEXIF情報 8 はデジタルカメラ等で撮影した写真の画像データの中に保存されているメタデータであり、画像データの作成日時や各種設定値などが保存されます。また、ソフトウェアによっては、メタデータだけではなく、非表示データ(指定することによって表示させることが可能なものもあります)が含まれているものもあります。例としてWordファイルのメタデータ、非表示データやJPGファイルのメタデータを下表に示します。

Wordファイルのメタデータ、非表示データやJPGファイルのメタデータ

ファイルの種類 メタデータや非表示データの種類
Wordファイル メタデータ タイトル、作成者、管理者、会社名、分類、キーワード、コメント、作成日時、更新日時、印刷日時、最終保存者、改訂番号、編集時間、ページ数、段落、行数、単語数、文字数、文字数(スペースを含む)など
非表示データ コメント、変更履歴、バージョン、インク注釈、ヘッダー、フッター、透かし、隠し文字、カスタムXMLデータなど
JPGファイル メタデータ
(EXIF)
AF選択ポイント、Aspect比、Exifバージョン、F値、ISOオート、ISOスピードレート、イメージサイズ、イメージタイプ、オリジナルデータ作成日時、カテゴリー、コントラスト、サムネイル画像、シャッタースピード、シャープネス、セルフタイマー長、センサー方式、デジタルズーム、ファイル作成日時、ファイル番号、フォーカスモード、フラッシュモード、ホワイトバランス、マクロモード、メーカー、モデルID、イメージID、レンズタイプ、レンズ焦点距離、彩度、撮影モード、最大レンズ口径、最大絞り、最小絞り、最短焦点、最長焦点、測光モード、焦点単位/mm、焦点面解像度単位、画像の向き、画像幅、画像高さ、自動露出設定、露光モード、露出モードなど

メタデータの削除

 このようなメタデータや非表示データは、プライバシーに関する情報にも該当し得るため、ソフトウェアによっては削除する機能が用意されています。

 メタデータやパソコンのOSのファイルシステムが管理しているプロパティ情報の日時等の変更・改ざんは、専門家による高度な知識や技術がなくても、その手法をインターネット上で容易に入手することができますし、特殊なソフトウェアを使用することで、容易に一括して行うことができます。このようにファイルに含まれるメタデータやファイルシステムが管理しているプロパティ情報は、必要な改ざん防止措置が取られていなければ、常に改ざんされた可能性を考える必要があります 9

 メタデータやプロパティ情報の改ざんが問題となった事件について、「電子ファイルを裁判の証拠として扱ううえでの留意点(電子ファイルの真正性)」で紹介します。


  1. 刑法7条の2も「この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう」と同様に定義されています。 ↩︎

  2. たとえば、商業登記規則35条の2第1項1号に規定する「法務大臣の指定する」電磁的記録の方式等を定めた、平成27年法務省告示第140号(「商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)第35条の2第1項第1号に規定する電磁的記録の方式等」)1の2(1)は、「電磁的記録媒体に記録するファイルの形式等は、以下のとおりとする」とし、ファイルは、テキスト形式で記録すること、文字コードは、シフトJISを使用し、すべて全角文字で作成することなどが規定されています。 ↩︎

  3. 電子ファイルを裁判所に提出するには、当該電磁的記録をCD-R等の電磁的記録媒体に記録して提出することになります。 ↩︎

  4. 現行法上、電磁的記録媒体を証拠として取り調べるための明確な規定がなく、解釈・運用に委ねられています。実務上、電磁的記録媒体に保存された電子ファイルを印刷した書面を書証として取り調べるか、電磁的記録媒体そのものを準文書(民事訴訟法第231条)として取り扱い、原本である電磁的記録媒体を法廷でパソコンを用いて可読化する方法によって取り調べられています。今後、裁判手続等のIT化が促進すれば、電磁的記録媒体を介さず、直接電子ファイルを証拠として提出し、裁判所が取り調べるようになることが考えられます。 ↩︎

  5. 町村泰貴、白井幸夫編「電子証拠の理論と実務」(2016、民事法研究会)27頁、佐々木良一編著「デジタル・フォレンジックの基礎と実践」(2017、東京電機大学出版局)145頁-146頁参照。 ↩︎

  6. ローカルタイムは、国や地域に共通の地域標準時のことをいいます。たとえばUTC(協定世界時:Coordinated universal time)を基準とし、JST(日本標準時:Japan Standard Time)はUTCを9時間進めた日本における標準時のことであり、「+0900(JST)」や「(UTC+0900)」と表示されることもあります。しかし、メタデータやプロパティ情報に記録されている時刻は、通常UTCとして記録されており、使用地域を日本と設定しているパソコン上にて表示する場合は、日本の標準時間である9時間進めた時刻に自動で変換して表示される場合があります。そのため、使用地域を日本以外に設定したパソコン上で作成されたファイルのメタデータ等を確認する場合は、注意が必要です。 ↩︎

  7. サマータイムは、1年で夏を中心とする季節に明るい時間帯を有効活用する目的で、その国の標準時を1時間進める制度のことをいいます。 ↩︎

  8. Exchangeable image file formatの略です。 ↩︎

  9. 小坂谷聡、上原哲太郎「刑事手続におけるデジタル証拠の改ざん防止措置について」(平成29年6月、DICOMO2017)も同様のことを述べています。 ↩︎

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