道路運送車両法改正で事業者等に求められる自動運行装置等の保安・整備の概要と影響

IT・情報セキュリティ
柴山 将一弁護士 日本橋柴山法律事務所

 当社では自動運転車を事業に取り入れることを検討しています。このたび道路運送車両法が改正されたと聞いたのですが、その概要と影響について教えてください。

 今回の道路運送車両法改正では、自動運転に関する改正が行われました。
 自動車の保安基準の対象となる装置に「自動運行装置」が追加されたほか、自動車分解整備事業者が地方運輸局長の認証を受けて行う従来の「分解整備」の対象装置に「自動運行装置」が加えられ、名称が「特定整備」に改められています
 自動運転システムのバージョンアップ等のアップデートは「特定改造等」と定義され、これを行う際には事前に国土交通大臣の許可を受ける必要があります
 今回の道路運送車両法の改正は、自動車メーカーや部品メーカーはもとより、自動車販売業者や自動車整備業者、エンドユーザーに至るまで大きな影響を及ぼします。

解説

目次

  1. 道路運送車両法改正までの経緯
  2. 保安基準の対象となる装置に「自動運行装置」を追加
  3. 自動車の電子的な検査に必要な技術情報の管理に関する事務を行わせる法人に関する規定
  4. 分解整備の範囲の拡大および点検整備に必要な技術情報の提供義務
  5. 自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設
  6. 今後の影響

道路運送車両法改正までの経緯

 道路運送車両法は、自動車の構造・装置等の保安上・環境保全上の技術基準(保安基準といいます)について定め、自動車の安全性確保と自動車の登録・検査の制度を設けるとともに、自動車の整備等について規定しています。

 ただ、保安基準に適合しない自動車は「運行の用に供してはならない」(道路運送車両法41条)ため、保安基準に定めのない自動運転技術を使用する自動運転車はそのままでは公道を走行することができませんでした。

 そこで、「官民ITS構想・ロードマップ2016」で限定地域での無人自動走行移動サービスの公道実証実験の実施が謳われたことを受けて、道路交通法を所管する警察庁では「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」を公表し、道路運送車両法を所管する国土交通省は平成29年2月に、所定の安全確保措置等を条件として「道路運送車両の保安基準」55条に基づく基準の緩和を認めて、このような公道実証実験を可能にしました。さらに、国土交通省は平成30年に遠隔型自動運転システムを搭載した自動車の基準緩和認定制度を創設しました。

 そして、「官民ITS構想・ロードマップ2018」「自動運転に係る制度整備大綱」を受けて、公道実証実験の段階より2020年頃からの自動運転の本格実用化を念頭に置き、自動化レベル3および4(自動運転レベルについては「自動運転に関わる事業を営むにあたり検討すべき主な法令やガイドライン」を参照)の自動運転車を対象とする「自動運転車の安全技術ガイドライン」を公表、安全性に関する基本的な考え方や要件としての10項目を掲げました。

 この他にも諸々の検討が進められ、「最近の自動車技術の進展に鑑み、自動車の安全性の確保及び自動車による公害の防止その他の環境の保全を図るため、一定の条件の下で自動車を自動的に運行させることができる装置を保安基準の対象装置として追加するとともに、当該装置に組み込まれたプログラム等の改変による自動車の改造に係る行為についての許可制度を創設する・・・等の措置を講ずる必要がある」ことを理由に改正案が提出され、令和元年5月17日に改正法が成立、同年5月24日に公布されました。

 具体的な改正内容は次のとおりです(自動運転に関係する改正についてのみ)。

保安基準の対象となる装置に「自動運行装置」を追加

 自動運転に係る機器等に関する用語として「自動運行装置」を新設し、改正後41条1項20号・41条2項は「自動運行装置」を以下のように定義しました。

プログラム(電子計算機(入出力装置を含む。この項を除き 、以下同じ。)に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう 。以下同じ。)により自動的に自動車を運行させるために必要な、自動車の運行時の状態及び周囲の状況を検知するためのセンサー並びに当該センサーから送信された情報を処理するための電子計算機及びプログラムを主たる構成要素とする装置であつて、当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件で使用される場合において、自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能を有し、かつ、当該機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を備えるものをいう。

(傍線 BUSINESS LAWYERS編集部)

 そして、この「自動運行装置」を保安基準の対象装置に追加しました(道路運送車両法99条の3第1項)。これによって、「自動運行装置」を備える自動運転車が道路運送車両法上「運行の用に供する」ことのできる自動車として正面から認められるに至りました。

自動車の電子的な検査に必要な技術情報の管理に関する事務を行わせる法人に関する規定

 国土交通省では、自動運転技術等に使用される電子装置に対する検査手法についての検討を重ね 1、電子装置の状態を監視するとともに故障を記録する「車載式故障診断装置」(OBD:On-Board Diagnostics)を活用した検査を行っていくことが定められ、その検査に必要な技術情報の管理に関する事務を独立行政法人自動車技術総合機構に行わせることを規定しました。(道路運送車両法74条の2)

OBDを活用した自動車検査のイメージ

OBDを活用した自動車検査のイメージ 2

分解整備の範囲の拡大および点検整備に必要な技術情報の提供義務

 自動車の主要構成部分である原動機等の脱着を伴う整備・改造を「分解整備」といい、当該整備には専門的な技能を要することから自動車分解整備事業を営むには地方運輸局長の認証が必要です。

 この分解整備の対象装置に「自動運行装置」が加えられ(国土交通省は、カメラ・レーダー等のセンサーの交換・修理を例としてあげています)、さらに対象装置の作動に影響を及ぼすおそれのある整備・改造にも拡大され、名称も「特定整備」と改められることになりました(道路運送車両法49条2項)。「自動車特定整備事業」を営むには地方運輸局長の認証が必要であることは変わりありません。

 それと同時に、自動車メーカー等から、「特定整備」を行う事業者等に対して、点検・整備をするにあたって必要な型式固有の技術上の情報を提供するよう義務付けがなされました(道路運送車両法57条の2)

新たに対象となる整備・改造の例

新たに対象となる整備・改造の例 3

自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設

 自動運転では、パソコン等と同様に、そのシステムのバージョンアップ等のアップデートが行われ、不具合の修正や性能アップが図られることになります。つまり、「自動運行装置」等に組み込まれたプログラムの改変による改造が行われることになりますが、この改造により保安基準に適合しなくなるおそれが生じることから、このような改造(改変するプログラムの提供も含む)を「特定改造等」として、事前に国土交通大臣の許可を受けなければならないものとしました(道路運送車両法99条の3)

 この許可を受けた業者は、特定改造等の適確な実施を確保するために必要な事項を遵守しなければならず、国土交通大臣は当該遵守が認められないときには必要な措置を命じることができ、さらに一定の要件に該当するときには特定改造等の停止や許可の取り消しもできます(道路運送車両法99条の3第6項、第7項)

 また、この許可に関する事務の一部を独立行政法人自動車技術総合機構が担うことになりました(道路運送車両法99条の3第8項)。

今後の影響

 以上のとおり、今回の道路運送車両法の改正は、自動車メーカーや部品メーカー等のみならず、自動車販売業者や自動車整備業者、そしてエンドユーザーにもおおいに影響があります

 自動運転システムに係る機器等が「自動運行装置」として、自動車の一装置として規定されることに伴う変化とともに、自動車の電子化の進展を色濃く反映しています。

 自動車の点検・整備・改造も、より高度に、より専門的になることは避けられず、自動車整備業者はこの環境の変化に合わせて技術や知識のアップデートを図っていく必要があります

 今後、今回の改正の施行に向けて、国土交通省令等で諸条件や事項が定まっていくことから、保安基準や道路運送車両法施行規則などの改正にも注視していくことが必要です。

自動運転と社会変革――法と保険
  • 参考文献
  • 自動運転と社会変革――法と保険
  • 著者:明治大学自動運転社会総合研究所 監修、中山 幸二=中林 真理子=栁川 鋭士=柴山 将一 編
  • 定価:本体 3,000円+税
  • 出版社:商事法務
  • 発売年月:2019年7月

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