自社の製品名を用いた他者による登録ドメインの登録取り消し、移転にかかる対応方法

IT・情報セキュリティ
上田 愛 株式会社電通

 当社で長らく販売している製品のホームページを作成しようとしたところ、個人の方により製品名のドメインがすでに取得されていました。この場合、登録の取り消しや、ドメインの移転を求めることはできますか。

 不正な目的によるドメイン名の登録や使用に対しては所定の機関に裁定の申立を行うことで登録の取り消しまたは移転を求めることが可能です。並行して、不正競争防止法2条1項19号に規定されるドメイン名不正使用行為として、差止請求(不正競争防止法3条)、損害賠償(不正競争防止法4条)を裁判上で請求していくことも考えられます。

解説

目次

  1. ドメイン名とは
  2. ドメイン名の管理体制
  3. ドメイン名の紛争処理について
    1. 「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」にもとづく裁定
    2. 「統一ドメイン名紛争処理方針 (UDRP) 」にもとづく裁定
  4. 不正競争防止法との関連について
    1. 不正競争防止法違反の要件
    2. 不正競争防止法違反に該当した場合の効果
  5. まとめ

ドメイン名とは

 ドメイン名は数字であるIPアドレスをアルファベットで表示したものですが、インターネットにおいてはウェブサイトのアドレスの役割を果たしていることから、今日では事業者がインターネット上でビジネスを行ううえで極めて重要な価値を持つに至っています。一方で、特許庁に対する出願、審査が必要となる商標とは異なり、早い者勝ちで誰でも自由に登録でき、先行して取得した人のものとなるため、ドメイン名をめぐって多くのトラブルが発生しています。

ドメイン名の管理体制

 こうしたドメイン名については公共性の担保や紛争解決の必要性から、ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)を頂点とした管理機関が置かれています。具体的には、「.com」「.net」といった国や地域の概念のない世界中を対象としたドメイン名(gTLD)についてはICANNが、「.jp」や「.kr」といった国別のドメイン(「ccTLD」)については各国の機関が管理しています。日本において「.jp」については一般社団法人ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が従来管理を行っていましたが、現在ではJPNICから株式会社日本レジストリサービス(JPRS)に管理が移管され、JPNICは紛争処理や公共性の担保に関する業務を担う体制になっています。

ドメイン名の紛争処理について

 一定の要件を満たしている場合、所定の紛争処理機関による裁定の手続きを利用して、短期間、低コストでの紛争解決を図ることが可能です。ただし、裁定は法的拘束力を持たないとされており、紛争解決処理の開始前、係属中または終結後のいずれの段階でも裁判所に対する出訴が可能です。よって、ドメイン紛争処理機関により一度裁定がなされても、裁判を提起されることも考えられます

「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」にもとづく裁定

 JPNICは日本知的財産仲裁センターをJPドメイン名に関する紛争処理機関と認定しています。JPNICは「JPドメイン名紛争処理方針(JP-DRP)」および「JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則」を公表しており、日本知的財産仲裁センターは申し立てに対してJP-DRPにもとづいて解決しています。申立にあたっては以下の3点を立証する必要があります(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター「JPドメイン名紛争処理方針」(2017年7月1日)。

  1. 登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  2. 登録者が、当該ドメイン名に関係する権利または正当な利益を有していないこと
  3. 登録者の当該ドメイン名が、不正の目的で登録または使用されていること

「統一ドメイン名紛争処理方針 (UDRP) 」にもとづく裁定

 問題となるドメイン名がgTLDだった場合ICANNの指定する機関(たとえばWIPO仲裁調停センター)に申立てることで紛争解決が可能です。この紛争解決については、ICANNの公表している「統一ドメイン名紛争処理方針 (UDRP) 」に則って行われることになります。申立にあたっては以下の3項目のすべてを立証する必要があり、商標を有していない場合はこの手続きの採用は難しい点に留意が必要です。

  1. 申立の対象となっているドメイン名が、申立人が権利を有する商標と同一または混同を引き起こすほど類似していること
  2. 登録者が、そのドメイン名登録について権利または正当な理由がないこと
  3. 登録者のドメイン名が悪意で登録かつ使用されていること

不正競争防止法との関連について

 平成13年の不正競争防止法改正によりドメイン名の不正な使用や登録は、不正競争の1類型として認められています。不正競争防止法の規制対象となる不正使用行為は事業者による行為に限定されないため、以下の要件を満たせば不正競争防止法違反を主張できることになります(不正競争防止法2条1項19号)。

  1. 不正の利益を得る目的で、または他人に損害を加える目的
  2. 他人の特定商品等表示と同一もしくは類似のドメイン名
  3. 使用する権利を取得し、もしくは保有し、またはそのドメイン名を使用すること

不正競争防止法違反の要件

(1)図利加害目的

 単にドメイン名の取得、使用等の過程で些細な違反があった場合は、「不正の利益を得る目的」に含まないとされています。「不正の利益を得る目的」とは、たとえば、当該ドメイン名を不当に高値で購入させる目的、顧客吸引力を不正に利用する事業上のフリーライド、あるいはウェブサイト開設の妨害やブランド事業者としての価値を毀損するような有害サイトでの使用等などが考えられます(「mp3.co.jp」ドメイン名事件(東京地裁平成14年7月15日判決・判タ1099号291頁))。

(2)他人の特定商品等表示

 人の業務にかかる氏名、商号、商標、標章その他の商品または役務を表示するものを指します。企業名、ブランド名、商品名などはこれにあたります。

不正競争防止法違反に該当した場合の効果

 不正競争防止法の規制対象となる不正使用行為があった場合、差止請求(不正競争防止法3条)、損害賠償(不正競争防止法4条)を求めることができます。差止めには登録抹消請求権が含まれるとされますが(「dentsu」ドメイン事件(東京地裁平成19年 3月13日判決)、移転請求権までは認められていないことに留意が必要です。また、営業上の信用を害されたといえるような場合には信用回復措置を求めることも考えられます(不正競争防止法14条)。なお、前述のように紛争処理機関の裁定は法的な拘束力をもたないため、事前に不正競争防止法違反として訴えを起こすこともできますし、裁定後その内容に不満があった場合に訴えることもできます。

まとめ

 設例のように製品の名称をドメイン名として第三者に登録されてしまった場合、使用態様を不正といえるものか確認のうえ、使用中止を求める警告レターを送付します。それでも使用を中止しない場合には、訴訟を提起するか、ドメイン名の種類に則した紛争処理機関に対し申し立てを行うかを、費用、期間、効果といったメリットとデメリットを考慮し決定していく必要があります。

 特に、ドメイン紛争処理機関による処理については一度裁定がなされても、裁判を提起されうる点は留意が必要です。設例では該当製品は長期間の販売実績がありますが、登録者が個人であるため使用態様が不正といえるかの検討が必要になると考えられます。

 また設例では、該当製品名の商標登録の有無が明らかではありませんが、万が一商標登録がされておらず、かつUDRPを採用する機関での紛争処理が必要となった場合、訴訟の提起が必要となり、不正競争防止法違反が認められてもドメイン名の即座の移転は難しいと考えられます。

(監修:株式会社電通 法務マネジメント局 弁護士 高橋 基行)

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