破産会社に貸与している車両や設備機械を返してもらうには

事業再生・倒産
宮本 聡弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所 小林 俊介弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 当社は、当社の所有する建設工事用の車両や機械をレンタルする事業を営んでいます。当社は2か月前に建設工事業を営むA社との間で、建設機械(パワーショベル)1台について、「レンタル期間:3か月間、レンタル料:月額50万円、当社が建設機械の保守修繕義務を負う」との約定でレンタル契約を締結し、引渡しを済ませたのですが、先日、裁判所からA社が破産手続開始決定を受けたという通知を受領しました。

 A社からは過去2か月分のレンタル料について約定どおり支払を受けていますが、現時点で残りの1か月分(弁済期が未到来)のレンタル料の支払を受けていません。

 当社は、A社が破産したため、どさくさに紛れて当社のパワーショベルが紛失しないかと懸念しています。当社はA社から今すぐにでもパワーショベルを引き揚げたいと考えているのですが、当社はパワーショベルを今すぐに引き揚げることができるのでしょうか。また、引き揚げに際しては何らかの手続が必要となるのでしょうか。

 一般的には、貴社は、破産管財人との間でレンタル契約の解約合意をしたり、破産管財人から物件引揚げの同意書を取得するなどしたうえで、物件を速やかに引き揚げることができると考えられます。

 例外的に、破産管財人がレンタル契約の継続を希望する場合、破産管財人は貴社の意向に拘わらずレンタル契約を存続させて物件を継続使用する権限を有するため(破産法53条1項)、貴社はレンタル契約の有効期間中、物件を引き揚げることができません。ただし、レンタル料については財団債権として優先的に破産管財人から支払を受けることができます(破産法148条1項7号)。  

解説

目次

  1. レンタル契約の破産法上の位置づけ
  2. 賃借人が破産した場合のレンタル物件の取扱い
  3. 賃借人の破産を理由とする契約の解除の可否
  4. 倒産解除条項による解除の可否
  5. 破産管財人による解除および賃貸人の催告権

レンタル契約の破産法上の位置づけ

 リース契約やレンタル契約と呼ばれる契約が倒産手続上どのような取扱いを受けるかは、契約の実体に即して事案ごとに判断されるため、契約の内容を精査する必要があります。

 物件の使用収益およびこれに対する対価の支払を内容とする契約のうち、契約期間が比較的長期で、借り手側が契約を中途解約できず、かつ、借り手が目的物の利用価値を享受する反面、コストも負担する契約は、一般にファイナンス・リース契約として分類されます。これに対して、設例のように契約期間が比較的短期であるか、中途解約が可能であり、レンタル会社が物件の保守や修繕の義務を負う契約は一般にレンタル契約(動産の賃貸借契約)として分類されます。

 本稿では、貴社とA社との契約がレンタル契約であることを前提に、レンタル契約のユーザー(賃借人)に破産手続開始決定がなされた場合について解説します(なお、ファイナンス・リース契約について債務者が破産した場合については、「リースしている物件を破産した会社から引き揚げる方法」をご覧ください)。

賃借人が破産した場合のレンタル物件の取扱い

 破産手続が開始すると、裁判所から選任された破産管財人には、破産財団に属する財産の管理処分権が専属することになります(破産法78条1項)。また、破産財団の管理や換価、破産管財人の行為によって生じた債権等については財団債権となり、破産手続下で優先的に支払われることになります(破産法148条1項各号)。

 参照:会社(法人)の破産申請の概要

 破産管財人としては破産財団からの無駄な支出をなくそうとするのが通常ですので、破産管財人は破産手続遂行に必要のない既存の契約を解約していきます。破産会社が動産のレンタルを受けている場合、破産管財人は、レンタル会社との間でレンタル契約の解約合意をしたり、レンタル会社に物件引揚げの同意書を交付したりするなどして、レンタル会社に物件を引き揚げてもらうのが通常です(この引揚げに要する費用は財団債権ではなく、破産債権として取り扱われるのが一般的です)。

 もっとも、例外的に、破産管財人が既存の契約の継続を希望する場合があります。たとえば、契約の継続が破産財団の増殖に寄与する場合や破産手続を進めるうえで契約の継続が不可欠な場合などです。

 設例で破産管財人がレンタル契約の継続を希望する場合として想定されるのは、たとえば、あと1か月、パワーショベルを使うことによりA社が受注していた工事が完了し、工事代金(売掛金)を回収できるようなケースが考えられます。

 破産管財人は、破産手続開始時点で契約当事者双方にとって未履行の債務がある場合、契約の履行を選択し、相手方にその債務を履行するよう請求できます(破産法53条1項)。破産管財人から履行の請求を受けた場合、契約の相手方はこれを拒むことはできません。

 設例のレンタル契約については、貴社には残り1か月についてパワーショベルをレンタルする債務があり、A社には残り1か月分のレンタル料を支払う債務がありますので、双方未履行の双務契約にあたります。よって、破産管財人が契約の履行を選択した場合、破産管財人は貴社の意向にかかわらずレンタル契約を存続させてレンタル物件を使用する権限を有するため、貴社はレンタル契約の有効期間中、パワーショベルを引き揚げることができません。ただし、1か月分のレンタル料については財団債権として優先的に破産管財人から支払を受けることができます(破産法148条1項7号)。

賃借人が破産した場合のレンタル物件の取扱い

賃借人の破産を理由とする契約の解除の可否

 次に、貴社から、A社について破産手続開始決定があったことを理由にレンタル契約を解除できるのか、検討します。

 平成16年改正(平成16年法律76号)前の民法621条では、賃借人について破産手続開始決定がなされた場合、賃貸人は賃貸借契約の解約申入れができるとされていましたが、平成16年改正により当該規定は削除されました。そのため、賃貸人である貴社は、賃借人であるA社の破産手続開始決定を理由としてレンタル契約を解除できません

倒産解除条項による解除の可否

 それでは、契約書に破産手続開始申立てがあったことを契約の解除事由とする条項(いわゆる「倒産解除条項」)がある場合、かかる条項に基づいて契約を解除することはできるのでしょうか。

 賃貸借をはじめとして多くの契約には、契約当事者に破産手続開始の申立てがあった場合に契約を解除できる旨の条項が盛り込まれるのが一般的ですが、この条項の有効性は争いのあるところであり、この条項は無効であるとの見解(たとえば、東京地裁平成21年1月16日判決・金法1892号55頁などの下級審裁判例がこの見解を取っています)が有力に主張されています。そのため、この条項のみに依拠してレンタル物件の引揚げを主張することには慎重であるべきと考えられます。

破産管財人による解除および賃貸人の催告権

 貴社がパワーショベルを速やかに引き揚げたい意向にもかかわらず、破産手続が開始してからしばらく経っても、破産管財人がレンタル契約を解約するのか継続するのか、方針を決定しない事態もありえます。

 そうした場合、契約の相手方は、破産管財人に対して、相当期間を定めて契約を解除するかまたは契約の履行を選択するかを確答するよう催告でき、相当期間内に破産管財人が確答しない場合には、契約は解除されたものとみなされます(破産法53条2項)

 そこで、貴社としては、レンタル物件の返還が見込まれる状況であるにもかかわらず、破産管財人が速やかに方針を決定しない場合、破産管財人に催告を行うことで破産管財人にレンタル契約の解約ないし解除権の行使を促し、レンタル物件の早期返還を図ることも選択肢の一つとして考えられます。

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