会社(法人)の破産申請の概要

事業再生・倒産
浅井 真央弁護士 弁護士法人大江橋法律事務所

 会社(法人)の破産申請とはどのような手続でしょうか。

 会社についての破産とは、資金繰りに窮するなど経営が行き詰まった場合に、裁判所や破産管財人の関与の下、債権者その他の利害関係人の利害および債務者(会社)と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者(会社)の財産等の適正かつ公平な清算を図る手続です。

 裁判所に破産手続開始申立てを行い、破産手続開始原因となる事実である支払不能または債務超過が裁判所に認められると、破産手続開始決定がなされ、同時に破産管財人が選任されます。破産管財人によって法人の財産が換価され、債権者に対して平等に配分されることになります。

解説

目次

  1. 「倒産」と「破産」とは
  2. 弁護士への相談・債務整理の手続選択
  3. 事業の停止・従業員の解雇、受任通知の発送
  4. 破産手続開始申立ての準備
  5. 破産手続開始申立て
  6. 破産手続開始決定および破産管財人の選任
  7. 破産管財人の業務
  8. 債権者への配当、破産手続の終了
  9. 最後に

「倒産」と「破産」とは

 ニュースなどでみかける「倒産」は、必ずしも「破産」とイコールではありません。ニュースや新聞などにいう「倒産」は、「破産」のみではなく、事業の継続を前提とした法的整理である民事再生や会社更生を指すこともあります。

 事業を停止する法的整理手続である破産(なお、稀ですが、事業を一定程度継続させる場合もあります)の手続の流れの一例は次のとおりです。

事業を停止する法的整理手続である破産の手続の流れ(例)

 以下では、各手続の概要を説明します。もう少し詳しいことを知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

弁護士への相談・債務整理の手続選択

 会社の資金繰りが厳しくなってきた場合、まずは弁護士に相談し、どのような債務整理が適切かを検討することになります。

 メインバンクや取引先に対する債権の弁済を猶予してもらうことで資金繰りが改善するのであれば、純粋な私的整理(裁判所などを通さずに債権者と債務者の間で行う任意の話し合い)によって事業の再建を図ることが考えられます。

 弁済猶予のみでは足りず、債権カット(一部免除)の必要がある場合には、第三者機関の関与する私的整理として事業再生ADRなどを利用することや、事業継続を前提とした法的整理である民事再生会社更生を検討することになります。

 これらの手続を検討したうえで、やはり、事業継続が困難であると判断される場合には、事業を停止し、破産手続において会社の財産を換価して債権者に平等に配分することを選択することになります。

 なお、会社代表者は会社の金融機関の借入れなどを連帯保証しているケースが多く、会社が破産する場合、会社代表者についても破産手続を行う必要があることが大半です。

事業の停止・従業員の解雇、受任通知の発送

 破産するとの方針が決まれば、弁護士と相談するなどして、事業停止をする日(Xデー)を決めます。Xデーは、手形が不渡りになることにより資金繰りが破綻する時期がいつかなど、会社の状況を踏まえて決定します。

 事業を停止して破産することは会社にとって非常に重要な判断ですので、取締役会等で決議を行う必要があります。株式会社の破産は、会社が取締役会決議を行って自ら裁判所に破産を申し立てる、いわゆる「自己破産の申立て」により行われるのが一般的です。取締役会設置会社が「自己破産の申立て」を行うためには、意思決定機関である取締役会の決議を得る必要がありますが、何らかの事情で破産申立てについての取締役会決議を得ることが難しい場合には、個々の取締役にも破産を申し立てる権限が認められています(準自己破産の申立て。破産法19条1項2号)。

 いよいよXデーが来れば、事業を停止して、一般的には全従業員を解雇することとなります。事前にどのように従業員に事情を伝え、解雇にあたり必要な手続をとるか、できるだけの検討・準備をすることが重要です。

 その後、ただちに、申立代理人から債権者および取引先に対して、FAXなどで、事業を停止し、今後は債権者への弁済が一切できないこと、破産手続開始を遠からず申し立てることなどを記載した受任通知が送られます。受任通知発送後は、債権回収ができないことを知った取引先からお怒りの電話や、今後についての問い合わせが多数寄せられることになりますから、事前に、受任通知発送後の取引先や顧客との対応方針を弁護士と相談し、混乱を最小限にとどめるよう努力する必要があります。

 本社以外に支店等がある場合には、支店によって対応が異なることで混乱が生じないように全社で統一した対応が必要ですので、複数の弁護士の協力を得ることも多いでしょう。

 なお、開始申立てと同時に事業を停止しない(事業を継続させる)場合や、動いている工事現場がある場合など、受任通知を送ることで大きな混乱が生じると予想されるときは、受任通知の送付なくいきなり破産手続開始申立てを行うこともあります(密行型)。特に事業を継続させる場合は密行型となるケースが多いでしょう。

破産手続開始申立ての準備

 破産手続開始の申立てには、会社の状況や、破産に至る経緯などを記載した破産手続開始申立書を作成し、その根拠となる資料を添付する必要があります(破産法20条、破産規則2条、13条、14条)通常は弁護士に依頼して作成することになるため、これらの事情を弁護士に説明し、また過去3年分の確定申告書や直近の試算表、重要な契約書、会計帳簿などを弁護士の指示に従って集めます

 受任通知を発送した後、債権者によりますがなんとか債権を回収しようと交渉をもちかけられたり、取引先から商品の返還等を求められたりすることもありますが、特定の債権者だけに弁済等をすることはできず、会社の財産が散逸しないようにする必要がありますので、基本的にはお断りすることになります。

 破産手続開始申立てにおいては、申立費用として、裁判所に収める予納金および申立代理人の報酬が必要となります(破産法22条、破産規則18条)。これらの費用がすぐに準備できない場合には、受任通知発送後に、売掛金を回収したり、所有動産を適切に売却するなどして、費用の不足分を調達します。

破産手続開始申立て

 破産手続開始申立ての準備が整い次第、会社の「主たる営業所」の所在地を管轄する地方裁判所に対して、破産手続開始申立てを行うことになります(破産法5条1項)。「主たる営業所」は、原則として定款所定の登記簿上の本店です。もし、登記簿上の本店と、現実の営業上の本店が一致しない場合は、現実の営業上の本店が「主たる営業所」となります。

破産手続開始決定および破産管財人の選任

 裁判所は、破産手続開始申立てがあると、下記の事項を確認して、破産手続開始決定を行います(破産法30条1項)

  1. 破産手続開始の原因となる事実があること
  2. 破産手続費用の予納があること
  3. 不当な目的で破産手続開始申立てがなされたものではないこと、あるいは申立てが不誠実になされたものではないこと

 ①の「破産手続開始の原因となる事実」とは、債務者の支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)または債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態)をいいます(破産法2条11号、16条1項)。

 なお、破産手続開始申立前後に、債権者全体に対する責任財産を減少させる詐害行為」や、債権者平等に反する偏頗行為」を行った場合には、破産法上、否認の対象となる可能性があります。

 裁判所は、破産手続開始決定と同時に、破産管財人を選任します(破産法31条1項)。破産管財人には通常弁護士が選任されます。破産手続開始決定によって破産管財人に会社財産の管理処分権が専属しますので(破産法78条1項)、破産手続開始決定後、会社は会社財産の管理処分権を失い、後は破産管財人に会社の清算を委ねることになります。

 破産手続開始決定がされた場合、破産手続が開始したことについて公告・登記がなされます(破産法32条1項、257条1項)。

破産管財人の業務

 破産管財人は就任後、ただちに破産財産に属する財産の管理に着手し(破産法79条)、郵便物や帳簿等の調査を行うとともに(破産法81条、82条、83条)、残っている会社財産を売却するなどして換価作業をします(破産法78条)。また、種々の残っている契約関係の整理を行います。職務遂行の状況は、債権者集会(財産状況報告集会)にて債権者に報告します(破産法158条、159条)。

 破産手続においては会社がいくらの負債を負っているのかを確認する必要があり、債権者は破産債権を届け出る手続をしますが、破産管財人はこの届出内容を確認・調査し(破産法115条以下)、破産債権がいくらであるかを確定させます。

債権者への配当、破産手続の終了

 破産管財人は確定した破産債権について、財産の換価の結果形成されたお金(破産財団)を原資として配当し(破産法193条以下)、その後、任務終了の計算報告を行い(破産法88条1項)、裁判所によって破産手続終結決定がなされます(破産法220条1項)

最後に

 以上説明いたしました破産手続は、事業を停止させて会社の財産を債権者に配分するという最後の手段です。資金繰りに完全に行き詰まる前であれば、事業の継続を前提とした各種手続を検討することができるかもしれません。早めに弁護士へご相談をすることをお勧めいたします。

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