グループ会社を継続雇用先として拡大したいが、どのような契約を締結すればよいか

人事労務

 高年齢者雇用安定法では継続雇用先の範囲をグループ会社にまで拡大してよいという特例があると聞きました。どのような事業主がそれにあたるのでしょうか。また特例を利用するために、グループ会社との間でどのような契約を締結すればよいでしょうか。

 継続雇用先を拡大できるグループ会社には、一定の支配力を有する親子法人等や、一定の影響力を及ぼしうる関連法人等が該当することになります。また、特例を利用するためには、希望するものをその定年後に引き続いて雇用することを約する契約を締結する必要があります。

解説

目次

  1. 高年齢者雇用安定法による継続雇用制度の範囲拡大
  2. 継続雇用制度の範囲
    1. 「親法人等」
    2. 「子法人等」
    3. 「関連法人等」
  3. 継続雇用先の範囲を拡大する際に締結する契約

高年齢者雇用安定法による継続雇用制度の範囲拡大

 「高年齢者等の雇用の安定に等に関する法律」(以下、「高年齢者雇用安定法」といいます)は、企業に対して「定年の引上げ」「継続雇用制度」「定年の定めの廃止」のいずれかの高年齢者雇用確保措置を講じることを事業主に義務付けています(高年齢者雇用安定法9条1項)。
 このうち、「継続雇用制度」として再雇用制度を採用する場合、事業主は、「特殊関係事業主」との間で契約を締結することで、当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することが認められています(高年齢者雇用安定法9条2項)。

 参照:「再雇用制度と定年引上げにはどのような違いがあるか

 厚生労働省が公表している「平成29年『高年齢者の雇用状況』集計結果」によれば、特殊関係事業主を継続雇用先としている事業主は、5.9%となっています。

 事業主が特殊関係事業主との間で係る契約を締結している場合、継続雇用制度の対象者を事業主のもとで雇用するか特殊関係事業主において雇用するかについては、事業主が判断できるとされ、就業規則や労使協定等において基準を定めることも可能です(参照:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」Q5-6)。

 労働者を特殊関係事業主において継続雇用する場合の労働条件は、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨に反しなければ、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、労働者と特殊関係事業主間で決定することができます(参照:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」Q5-4)。

継続雇用制度の範囲

 上記1でいう「特殊関係事業主」については、下記のグループ会社が該当します(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則(以下、「高年齢者雇用安定法施行規則」といいます)4条の3第1項)。

①当該事業主を子法人等とする親法人等
②当該事業主の子法人等
③当該事業主を子法人等とする親法人等の子法人等(いわゆる兄弟会社
④当該事業主の関連法人等
⑤当該事業主を子法人とする親法人等の関連法人等

特殊関係事業主

出典:厚生労働省熊本労働局「65歳までの「高年齢者雇用確保措置」

 以下では、「親法人等」「子法人等」「関連法人等」という概念について整理していきます。

「親法人等」

 「親法人等」に該当するのは以下の3つの場合です(高年齢者雇用安定法施行規則4条の3第2項)。

(1)他の法人等の議決権の過半数を所有している場合

(2)他の法人等の議決権所有割合が40%以上、50%以下の場合、以下のいずれかの要件に該当することが必要となります。

①緊密な関係があることにより同一内容の議決権を行使すると認められる者および同一内容の議決権行使に同意している者が所有する議決権とを合わせて議決権の過半数を占めていること

②他の法人等の財務および営業または事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものが、当該他の法人等の取締役会の過半数を占めていること

③他の法人等との間に重要な財産および営業または事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること

④他の法人等の資金調達額の過半を融資していること

⑤その他、他の法人等の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること

(3)他の法人等の議決権所有割合が 40%未満の場合、上記(2)①に加えて②~⑤のいずれかの要件に該当することが必要となります。

「子法人等」

 「子法人等」とは、上記2-1の「親法人等」によりその意思決定機関を支配されている他の法人等をいうとされています(高年齢者雇用安定法施行規則4条の3第3項)。

子法人等

出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」Q5-1

「関連法人等」

 「関連法人等」に該当するのは以下の3つの場合です(高年齢者雇用安定法施行規則4条の3第4項)。

(1)他の法人等の議決権を20%以上所有している場合

(2)他の法人等の議決権所有割合が15%以上、20%未満の場合、以下のいずれかの要件に該当することが必要となります。

①他の法人等の財務および営業または事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものが、当該他の法人等の代表取締役、取締役等に就任していること

②当該法人等から重要な融資を受けていること

③当該法人等から重要な技術の提供を受けていること

④当該法人等との間に重要な営業上または事業上の取引があること

⑤その他、他の法人等の決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること

(3)他の法人等の議決権所有割合が10%未満の場合、緊密な関係があることにより同一内容の議決権を行使すると認められる者および同一内容の議決権行使に同意している者が所有する議決権とを合わせて議決権の20%以上を占め、かつ上記(2)①~⑤のいずれかの要件に該当することが必要となります。

関連法人等

出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」Q5-1

継続雇用先の範囲を拡大する際に締結する契約

 高年齢者雇用安定法9条2項では、継続雇用先の範囲を拡大するために、事業主と特殊関係事業主との間で「当該事業主の雇用する高年齢者であってその定年後に雇用されることを希望するものをその定年後に当該特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約」を締結することを求めています。この契約については、労働者が特殊関係事業主における雇用が開始される時点で締結されている必要があります(参照:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」Q5-3)。

 継続雇用制度の対象となる高年齢者を定年後に特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約に盛り込むべき条項については、上記の誓約文言以外に明示されていません。
 この点、上記1を踏まえると、①継続雇用先の選択基準や、②高年齢者に提示する労働条件等について、特殊関係事業主との間で合意しておくことが考えられます。

 また、事業主が経過措置により継続雇用制度の対象者に係る基準(継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み)を定めている場合には、③特殊関係事業主においても事業主の継続雇用制度の対象者に係る基準を用いる旨を合意することで、特殊関係事業主自身の基準に関わらず、事業主の基準を用いて雇用継続の可否を判断することが可能です。

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