コーポレート・ファイナンスにおけるシンジケート・ローンの仕組みについて

ファイナンス

 ローンの定義とコーポレート・ファイナンスにおけるローンの位置づけについて教えてください。また、シンジケート・ローンとはどういうものでしょうか。

 ローンとは、貸付人が借入人に対して貸付金を交付し、借入人は貸付人に対し、一定の期日までに貸付金と同額の金銭(元本)を返還する取引をいいます。コーポレート・ファイナンスにおいて、ローンによる資金調達は、社債による資金調達と並んで資金調達者が行うデット・ファイナンスの代表例となります。シンジケート・ローンとは、複数の貸付人が借入人に共同して貸し付けを行う協調融資のことをいいます。

解説

目次

  1. ローンとは
    1. ローンとは
    2. コーポレート・ファイナンスとローン
    3. ターム・ローンとリボルビング・ローン
  2. シンジケート・ローンとは
    1. シンジケート・ローンとは
    2. シンジケート・ローンの仕組み

ローンとは

ローンとは

 ローンとは、貸付人が借入人に対して貸付金を交付し、借入人は貸付人に対し、一定の期日までに貸付金と同額の金銭(元本)を返還する取引をいいます。貸付人と借入人のローンに関する契約をローン契約といいます。民法上の金銭消費貸借契約は要物契約であり、貸付金が交付された時点で初めて成立するローン契約は、民法上の金銭消費貸借契約に該当します。実務的には、ローン契約は、貸付金の交付以前であっても当事者が合意した時点で契約が成立する諾成的金銭消費貸借契約(または金銭消費貸借の予約)の形で締結されることも多いです。リボルビング・ローン契約(1-3参照)などは後者に該当します。

コーポレート・ファイナンスとローン

 ローンは、デットエクイティの区分においてはデットの典型例となります。コーポレート・ファイナンスにおいて、ローンによる資金調達は、社債による資金調達と並んで資金調達者が行うデット・ファイナンスの代表例となります。

 参照:【連載】ファイナンス法の基礎「第2回 コーポレート・ファイナンスとは?

ターム・ローンとリボルビング・ローン

 ターム・ローンとは、典型的には一括貸付(または分割貸付)を行い、その後一括弁済(または分割弁済)を受ける諾成型のローンをいいます。

 他方、リボルビング・ローンとは、借り入れ可能な最大額(極度額または極度枠)を合意したうえで、借入人は極度額から貸付元本残高を控除した残額の範囲内であれば随時借り入れを申し込むことができ、貸付人が貸付義務を負うローンをいいます。リボルビング貸付を行う契約をリボルビング・ローン契約といいます。【図1】は、リボルビング・ローンの基本的関係を示したものです。

【図1:リボルビング・ローン関係図】

リボルビング・ローン関係図

 極度額(枠)(例:100)は、借り入れ(例:40)が弁済(例:10)されると復活する(100−40+10=70)点において、弁済により枠が復活しない限度枠と区別されます。【図2】は、借入可能額(余剰枠)の増減の一例を示したものです。

【図2:借入可能額(余剰枠)の増減の例】

借入可能額(余剰枠)の増減の例

 リボルビング・ローンの場合、借入人は貸付人に対し、実際に貸し付けられた元本に対する利息とは別に、貸付人が極度額(枠)の範囲内で随時貸付義務を負うことに対する対価としてファシリティ・フィーまたはコミットメント・フィーを支払います。

シンジケート・ローンとは

シンジケート・ローンとは

 シンジケート・ローンとは、複数の貸付人が借入人に共同して貸し付けを行う協調融資のことをいいます。

 民法における金銭消費貸借は、貸付人と借入人の両方が単数である場合を想定していますが、たとえば借入人の資金調達額が大きい場合や、貸付人が借入人の信用リスクを分散したい場合などには、複数の貸付人が共同してローンを実行することが実務上頻繁に行われます。

 この場合における複数の貸付人相互間の関係は、理念的には、複数の貸付人は完全に独立しており、互いに何らの権利義務を負わない方法独立併存型ローン)や、複数の貸付人は不可分債権者または連帯債権者となり、一体としてひとつの貸付債権(ローン債権)の共同債権者となる方法一体型ローン)も考えられます。しかし、独立併存型ローンでは、一部の貸付人が他の貸付人よりも有利な弁済や回収を行うことを許容するリスクがあり、一体型ローンでは、一部の貸付人と借入人の間の行為(弁済など)が、他の貸付人の有する債権に直接影響を与えるリスク(絶対効リスク)などが存在します。

 以上のような観点から、複数の貸付人が有する貸付債権は別個独立でありながら、貸付の管理や回収の局面ではすべての貸付人が平等な取り扱いを受ける旨の合意をあらかじめ行い、すべての貸付人のための代理人(エージェント)を通じ、平等に貸付の管理や回収を行う仕組みシンジケート・ローンです。以上を踏まえ、独立併存型、一体型とシンジケート・ローンの関係を示したのが【図3】です。

【図3:独立併存型、一体型とシンジケート・ローンの比較】

独立併存型、一体型とシンジケート・ローンの比較

シンジケート・ローンの仕組み

 シンジケート・ローンにおいては、まず、借入人が借入人の代理人であるアレンジャーに対し、複数の参加金融機関(貸付人)を集めてシンジケート・ローンを組成することを委託し、シンジケート・ローンを組成・実行してもらいます。アレンジャーの地位にあった金融機関は、シンジケート・ローンの組成・実行後は、貸付人の代理人であるエージェントとなる場合が多いです。エージェントは参加金融機関である必要はありませんが、多くの場合、参加金融機関の中心的存在がエージェントを兼ねる場合が多いです。以上の関係を示したのが【図4】です。

【図4:シンジケート・ローン】 

シンジケート・ローン

 シンジケート・ローンには、ターム・ローンとリボルビング・ローンの両方が存在します。

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