法定利率に関する民法改正のポイント

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細川 慈子弁護士 大江橋法律事務所

 改正民法によって、法定利率が固定ではなく変動制に変わったと聞きましたが、具体的にどのような改正が行われたのでしょうか。

 従来の法定利率は、年5%(民事法定利率)・年6%(商事法定利率)でしたが、市場金利と著しく乖離しており経済の実情に合わないという批判がありました。そこで、改正民法では、民事法定利率を、施行当初は年3%としその後は3年ごとに市場金利に連動して利率の見直しを行う変動制の仕組みに改正するとともに、商事法定利率を廃止して民事法定利率に一本化しました。
 また、このように法定利率に変動制が取り入れられたことに伴い、どの時点の法定利率を適用するのかという基準時に注意する必要が生じます。改正民法は法定利率の適用の基準時についても新たに規律を設けています。

解説

目次

  1. 法定利率の変動制
  2. 基準時
  3. まとめ

※本記事の凡例は以下のとおりです。

  • 改正民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正後の民法
  • 旧民法:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)に基づく改正前の民法
  • 旧商法:民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)に基づく改正前の商法

法定利率の変動制

 従来の法定利率は固定性で、民事法定利率は年5%(旧民法404条)、商事法定利率は年6%(旧商法514条)と定められていましたが、市場金利と著しく乖離しており経済の実情に合わないと批判されていました。
 そこで、改正民法は、市場金利に連動した変動制を採用するという抜本的な改正を行いました。施行当初は年3%でスタートし(改正民法404条2項)、その後は、3年を1期として、期ごとに利率が見直されます(改正民法404条3項)。利率の見直しの具体的な方法は、以下のとおりです。

 まず、法務省令で定めるところにより、過去5年間(各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月)における短期貸付けの平均利率の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満は切捨て)を「基準割合」とします。この基準割合は、法務大臣により告示されます(改正民法404条5項)。

 そして、法定利率に変動があった期のうち直近のもの(直近変動期)の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満は切捨て)に相当する割合を、直近変動期における法定利率に加算または減算します(改正民法404条4項)このように、1%未満が切捨てになるので、法定利率は、整数の単位でしか変動しえず、また、変動するとしても期(3年)ごとなので、緩やかに市場金利に連動する仕組みになっています。
 変動のシミュレーションは以下のようになります。

変動のシミュレーション(基準割合の上昇局面)

変動のシミュレーション(基準割合の上昇局面)

出所:法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料 -重要な実質改正事項-」14頁より抜粋

 

 また、以上の改正に伴い、商事法定利率は廃止され、改正民法の変動制の民事法定利率に一本化されます。

基準時

 法定利率を変動制にすることにより、どの時点の法定利率を適用するのかという基準時が問題となるため、改正民法は、この点についても規律を設けました。
 まず、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、「その利息が生じた最初の時点」の法定利率によります(改正民法404条1項)。「その利息が生じた最初の時点」とは、利息支払日ではないことに注意が必要です。貸金債権の利息は金銭交付時から発生するため、貸付実行時の利率が適用されることになります。

 また、金銭債務の不履行による損害賠償(遅延損害金)の額については、「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点」の法定利率によります(改正民法419条1項)。売買代金債務を例にとると、売買代金支払期限の設定がある場合には当該期限の到来時、設定がない場合には履行請求時の法定利率が適用されます。また、不法行為に基づく損害賠償債務であれば、不法行為時の法定利率が適用されます。

 さらに、中間利息控除(不法行為や安全配慮義務違反による損害賠償額の算定に当たり、将来の逸失利益や出費を現在価値に換算するために、損害賠償算定の基準時から将来利益を得られたであろう時までの利息相当額(中間利息)を控除すること)については、旧民法には規定はありませんが、改正民法は、上記の新たな法定利率の定めが適用される旨を明文化し、「その損害賠償請求権が生じた時点」の法定利率を適用することとしました(改正民法417条の2)。したがって、債務不履行、不法行為のいずれによる請求であっても事故等が発生した時点の法定利率によることになります。

まとめ

 以上のとおり、変動制の法定利率が取り入れられたことにより、遅延損害金の利率の適用基準時はいつかという問題が新たに生じます。企業内での管理が煩雑になると思われるため、改正民法の下では、遅延損害金の利率を契約にあらかじめ定めておき、約定利率に一本化することが、事務コストを減らすことにつながると考えられます。

<追記>
2020年4月2日:民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)の施行に伴い「現行民法」の記載を「旧民法」に改め、民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)の施行に伴い「現行商法」の記載を「旧商法」に改めました。

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