中国の子会社では、コンプライアンス上どのような点に留意するべきか

国際取引・海外進出

 中国に子会社があります。出向者には中国でのコンプライアンスに留意するよう伝えていますが、出向者からはどこまで法令を守るべきか、特に注意を要する点はどこか、と質問を受けています。どのように対応すればよいでしょうか。

 最近は、中国子会社にも適用されるコンプライアンス・マニュアルなどを制定する企業も増えています。また、中国では、商業賄賂、独占禁止法違反などによる外資系企業に対する取締り・処罰も相次いでいることから、強いコンプライアンス意識をもって臨む必要があります。

 中国では、特有の商慣習や日本と異なる制度(発票など)が存在するため、出向者は、まずはその内容をよく理解するとともに、出向者が少しでも疑問に感じることがあれば、本社や外部専門家に相談できる体制を整えることが重要です。また、中国では従業員等の不正が発生することも多く、その典型的なパターンなどを理解するとともに、予防的な社内体制を構築することが求められています。

解説

目次

  1. 「コンプライアンス」として遵守すべきルールの範囲
  2. 中国におけるコンプライアンスを取り巻く環境の特徴
  3. コンプライアンス上、一般的に留意が必要なポイント
  4. まとめ

「コンプライアンス」として遵守すべきルールの範囲

 最近は、多くの企業で、内部統制システムの構築等を目的として、海外のグループ企業にも適用されるコンプライアンス・マニュアルが制定されることが増えています。コンプライアンスとは、文字どおりに解釈すれば法令遵守を意味します。ただ、企業が法令を遵守するのは当然のことであり、その実質的意義は、法令違反による会社等への直接のダメージ(制裁金等)を防止すること(「守るコンプライアンス」)のほかに、企業倫理・社会的責任に積極的にコミットし、企業の信用・ブランド力を高めるという企業価値の向上(「攻めるコンプライアンス」)の目的までを含むものです。

 コンプライアンスとして遵守すべきルールは、就業規則、コンプライアンス・マニュアル、社内規則、法令、国際憲章、業界規制等を含む幅広い法令規範にわたります。中国でもこのようなコンプライアンスに関する原則的な考え方は日本と同様です。

 会社としてコンプライアンスを遵守することは当然ですが、中国では、役員、従業員等(「従業員等」といいます)の個人ベースの不正リスクが高く、不正を生じさせない内部管理・内部プロセスなどの体制構築が必須です。たとえば、現地法人に適用される「贈収賄防止規程・細則」の策定などが考えられますが、日本本社(または現地統括会社など)の積極的な関与や監督なども必要となります。

中国におけるコンプライアンスを取り巻く環境の特徴

 中国でも、現地法人が中国の法規制に違反しないことは当然求められますが、下記のような特別な傾向・状況などが存在することに留意が必要です。

項目 中国における状況 主体 対応策等
法規制状況 目まぐるしい速度で法令の立法・改正などが行われる。
以下のようなケースが多くある結果、法令違反が明確ではないグレーゾーンが多い
  • 法令の内容が明確でない
  • 法規制と実務の運用が異なる
  • 地方により法規制の運用状況が異なる
  • 法令以外の、政府当局・その担当者による事実上の指導等
会社 社内の意思決定権限を明確化するとともに、関連する最新法令情報を入手できる体制を整える(法律事務所などの活用)。
特有の商慣習 取引等において中国特有の商慣習(「袖の下」や「特殊な人的関係」に頼るビジネス等)が存在し、商慣習に従わないと中国ではビジネスもできないという意識がまだまだ根強い 会社 かかる商慣習が色濃く残る業界等も多いが、最近は贈賄などの取締り(行政・刑事処罰)が強化されており、商慣習に従ったビジネスの摘発リスクが無視できないほど高まっているとの認識を持つべきである。
「贈収賄防止規程・細則」などの制定。
従業員等による不正行為 従業員等としては、不正を行っているのは自分だけではないという意識も強い。
日本本社、日本からの出向者による継続的な監督がなく、法令違反行為を予防する「内部プロセス」や「ジョブローテーション」も少ない。
従業員等 日本本社、出向者による継続的監督、承認や相互牽制などの内部プロセス、新規取引先との取引開始時のチェック体制、ジョブローテーション(調達部など)などの対策を採るべきである。

 中国に出向で赴任したばかりの頃は、言葉の壁をクリアするのに気をとられがちですが、中国特有の商慣習や制度を理解したうえで、現地の商慣習として正当化される対応の範囲内であるのかを見極める判断力を早急に身につけることも重要となります。理解しておくべき中国特有の商慣習や制度とは以下を含みます。

  • 「商業賄賂」(取引先に対するリベート、過度な接待などに注意)
  • 「発票」(正式なインボイスにより税務処理される仕組みの理解)

 中国現地法人への出向者には、少なくともコンプライアンス・マニュアルに照らして疑問に感じたことは自身で理解できるまで、従業員や現地専門家などを通じて確認するという強い姿勢が求められます

コンプライアンス上、一般的に留意が必要なポイント

 特に法規制の内容、昨今の取締り状況等からして、会社としてコンプライアンス上の留意が求められるのは主に以下の事項です。

【会社として留意すべき行為】
  • 接待・贈答(贈賄)
  • 独占禁止法違反行為(独占的協定の禁止、市場支配的地位の濫用)
  • 個人情報保護(個人情報名簿の売買等)

 また、従業員等による不正行為については、主に以下の事項に留意が必要であり、会社としては、従業員等によるコンプライアンス違反の発生する動機、環境、典型的な事例を把握したうえで、予防的対策を講じる必要があります。

【従業員等による不正として留意すべき行為】
  • 接待・贈答(収賄)
    ※中国では、民間企業の従業員等がリベートやキックバックを収受する行為も収賄として行政・刑事罰の対象となります。
  • 会社情報に関する守秘義務

 なお、中国現地法人において、現地での内部通報制度(窓口)を設置する例も増えています。その場合、コンプライアンス・マニュアルに違反する事項を通報の対象とし、中国の外部法律事務所等を通報窓口とすることもあります

まとめ

 中国におけるコンプライアンスの意識は以前に比べて高まっていると評価できますが、言葉の壁のある出向者が現地法人で勤務する際には、そもそもコンプライアンス違反の行為か、特有の商慣習であるのか区別がつけられないところからスタートするのが一般的です。そのため、中国での赴任中は、日本以上に高いコンプライアンス意識を維持し、コンプライアンス・マニュアルに照らし疑問に感じたことは、本社や現地専門家に相談できる体制を整えておくことが重要となります。

 また、日本本社(または中国統括会社)としても、コンプライアンス・マニュアルを制定しただけにとどまらず、従業員等の不正が生じることを予防する体制の構築・継続的な監督まで徹底すべきであり、定期的なコンプライアンス研修の実施、内部監査、贈収賄防止規程・細則、職務権限基準、ソーシャルメディアガイドライン等の制定も積極的に検討していく必要があります。

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