ベトナムにおける100%子会社の機関設計

国際取引・海外進出

 当社は、ベトナムに1名有限会社形態で当社100%出資の子会社を設立しました。1名有限会社において設置される機関にはどのようなものがありますか。また、1名有限会社の機関設計にはどのような選択肢がありますか。

 ベトナムにおける1名有限会社では、「会長(Chairman)」、「社長(General DirectorまたはDirector)」、「法定代表者(Legal Representative)」、「社員総会(Members’ Council)」、「委任代表者(Authorized Representative)」、「監査役(Controller)」といった機関が設置されることになります。また、実務上とり得る機関設計には3つの選択肢があり得ます。

解説

目次

  1. ベトナムにおける1名有限会社の機関
  2. 出資者の代表としての機関
  3. 現地法人の運営を担う機関
  4. 機関設計の選択肢

ベトナムにおける1名有限会社の機関

 ベトナム企業法上、会社の形態として、①1名の投資家が出資して設立する「1名有限会社」、②2名以上の投資家が出資して設立する「2名以上有限会社」、③「株式会社」(最低3名の株主が必要)の3種類が規定されています。ベトナムで事業活動を行う際、特段外資による出資比率規制がない場合には、親会社100%出資による1名有限会社を設立することが多くあります。

 ベトナム企業法上、1名有限会社の場合に設置される機関として、「会長(Chairman)」、「社長(General DirectorまたはDirector)」、「法定代表者(Legal Representative)」、「社員総会(Members’ Council)」、「委任代表者(Authorized Representative)」、「監査役(Controller)」、という機関が設置されることになります。これらはいずれも、ベトナム企業法における基本的な概念なのですが、その意味するところを正確に理解することは、意外と難しいところです。

 これらの用語は、「出資者の代表としての機関」と、「現地法人の運営を担う機関」に分けて理解すると、わかりやすいのではないかと思われます。以下のとおり解説します。

出資者の代表としての機関

 1名有限会社の出資者が法人である場合、出資者としての権利および義務を履行するために、「委任代表者(=出資者を代表して出資者の権利義務を行使する者)」を選任する必要があります。

 委任代表者は、1名でも構いませんし、複数でも構いません。委任代表者は1名のケースが多いですが、たとえば、本社の異なる事業部からそれぞれ代表者を選任するようなケースでは、複数となる場合もあります。

 委任代表者が1名の場合には、その委任代表者が「会長」となります。他方、委任代表者を複数選任した場合、その委任代表者からなる機関として、「社員総会(および社員総会議長)」が設置されます。社員総会の構成人数は、3名から7名の間の人数である必要があります。

 このように、会長と社員総会は、いずれも出資者(=日本本社)の委任代表者から構成され、出資者の権利を代わりに行使する機関です。「出資者の権利」の具体的内容は、企業法75条1項に規定されていますが、社長の権限とされるものを除く、会社の運営に関する重要事項が列挙されています。

現地法人の運営を担う機関

 会社の日常業務を行う機関として、会長または社員総会によって「社長」が選任されます。社長は、企業法上、「日常業務の執行、事業活動の運営を行う者」と定義され、会社の日常業務に関する幅広い権限を有しています。委任代表者/会長と同一の人物が、社長を兼ねることも可能です。

 加えて、対外的に会社を代表する者として、「法定代表者」が選任されます。法定代表者は、企業法上、「会社の取引から発生する各権利を行使し、義務を履行する場合に会社を代表する者」として定義され、会長もしくは社長のいずれかの者から選任されます。定款に異なる定めがないかぎりは、会長が法定代表者となる点、法定代表者にはベトナム居住義務がある点には留意が必要です。

 「社長」は、日本における社長、「法定代表者」は、日本における代表取締役と類似していると捉えて頂いてよいと思います。日々、会社の名義で作成される書類にサインする権限を有しているのは、社長および法定代表者です。

 また、社長等の業務執行その他の経営の適法性を検査する機関として、「監査役」が置かれます。監査役は複数名置くこともでき、その場合は「監査役会」が組織されます。日本にも、監査役制度はありますので、イメージしやすいのではないかと思われます。

機関設計の選択肢

 以上を踏まえ、1名有限会社における機関設計の選択肢と、権限の大きさについてまとめると、次の表のようになります。理論上は、3つの選択肢がありますが、実務上は、選択肢①と選択肢②のいずれかが採用されているケースが多いと思われます。

機関設計/権限の大きさのイメージ
選択肢①

※社長が法定代表者である旨の定款の定めを置く必要あり
委任代表者=会長
(X氏)
法定代表者=社長
(Y氏・ベトナム居住
選択肢② 委任代表者=会長=法定代表者=社長
(X氏・ベトナム居住
選択肢③ 委任代表者=会長=法定代表者
(X氏・ベトナム居住
社長
(Y氏)

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