個人情報保護委員会による外国執行当局への情報提供
IT・情報セキュリティ改正個人情報保護法が全面施行されると、個人情報保護委員会による外国執行当局との間でどのような情報提供に関する枠組みが設けられるのでしょうか。
個人情報保護委員会は、個人情報保護法に相当する外国の法令を執行する外国執行当局に対し、その職務の遂行に資すると認められる情報の提供を行うことができます。
解説
※本QAの凡例は注の通りです1。
改正の背景
近時、インターネット等を通じて、日本国外から、日本国内にある消費者に向けて、商品やサービス(役務)を提供する事業者が増えてきています。
改正個人情報保護法においては、これらの国境を越えて商品・役務を提供する事業者にも個人情報保護法上の個人情報取扱事業者の義務規定を適用することになります(改正個人情報保護法75条)。
しかしながら、個人情報保護委員会が、外国の事業者に対して、監督権限を発動するのは、当該外国の主権との関係で困難です。
そこで、外国の個人情報保護委員会に相当する当局(「外国執行当局」)に対してその外国の法律に基づく執行を依頼することができるようにするため、個人情報保護委員会が外国執行当局に必要な情報提供を行うための規定を設けることとしました。
OECDやAPECにおいても、外国の執行当局の間で執行協力の枠組みが設けられています。
改正の内容
個人情報保護委員会は、個人情報保護法に相当する外国の法令を執行する外国の当局(以下「外国執行当局」といいます)に対し、その職務の遂行に資すると認められる情報の提供を行うことができます(改正個人情報保護法78条1項)。
具体的には、外国の個人情報取扱事業者が、日本国内の個人の個人情報を漏えいした場合、個人情報保護委員会が事案の詳細や被害にあった日本の個人の個人情報等を外国執行当局に提供することが考えられます。
この情報の提供については、当該情報が当該外国執行当局の職務の遂行以外に使用されず、かつ、個人情報保護委員会の同意がなければ外国の刑事事件の捜査に使用されないよう適切な措置をとらなければなりません(改正個人情報保護法78条2項)。
個人情報保護委員会は、外国執行当局からの要請があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、提供した情報を当該要請する外国の刑事事件の捜査等に使用することについて、法務大臣または外務大臣への確認を得たうえで同意することができます(改正個人情報保護法78条3項)。
- 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪が政治犯罪であるとき、または当該要請が政治犯罪について捜査等を行う目的で行われたものと認められるとき。
- 当該要請に係る刑事事件の捜査等の対象とされている犯罪に係る行為が日本国内において行われとした場合において、その行為が日本の法令によれば罪に当たるものでないとき。
- 日本国が行う同種の要請に応ずる旨の要請国の保証がないとき。
上記①・②に該当しないことについては法務大臣に確認を、上記③に該当しないことついては外務大臣の確認を求めなければなりません(改正個人情報保護法78条4項)。
-
- 改正個人情報保護法:個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年9月9日法律第65号)に基づく改正後の個人情報保護法

弁護士法人三宅法律事務所
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