株式会社が持分会社へ組織変更する手続き

コーポレート・M&A

 当社は株式会社ですが、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)への形態変更を検討しています。そもそも、株式会社が持分会社になることは可能でしょうか。また、可能な場合には、会社法上どのような手続きが必要でしょうか。

 株式会社は、会社法上の手続を履践することにより、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)のいずれにも組織変更することが可能です。この組織変更に際しては、総株主から同意を得ること、債権者保護手続を実施すること、事前開示を行うこと等の各種手続が必要です。詳細は以下に解説します。

【組織変更の大まかな流れ】

組織変更の大まかな流れ

解説

目次

  1. 組織変更とは
  2. 会社法上の必要手続
    1. 組織変更計画の作成
    2. 総株主の同意
    3. 新株予約権者への通知または公告、買取請求権
    4. 登録株式質権者・登録新株予約権質権者への通知または公告
    5. 債権者保護手続
    6. 株券の提出手続
    7. 事前開示書類の備置き
    8. 登記
  3. 効力発生

組織変更とは

 会社法上の組織変更とは、①株式会社が、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)のいずれかになること、②持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)が、株式会社になることをいいます(会社法2条26号)。法人格の同一性は維持したまま、株式会社と持分会社間で会社の種類を変更する制度といえます。
 この組織変更は債務超過会社でも実施可能であり、また、特例有限会社から(株式会社へ移行せずに)直接、持分会社へ組織変更することも可能と解されます(相澤哲=葉玉匡美=郡谷大輔編著「論点解説 新・会社法」650頁(商事法務、2006)参照)。

 組織変更により株式会社が持分会社になる場合として、たとえば、株主・債権者などの利害関係人が少ない株式会社が、決算公告不要、会計監査人の設置義務なしなど会社法上の制約が少ない合同会社になるケースが想定されます。また、親会社が米国法人である場合に、親会社側の税務上の理由により、日本子会社である株式会社が合同会社へ組織変更する例も見られます。  

会社法上の必要手続

組織変更計画の作成

 株式会社が組織変更により持分会社になるには、組織変更計画を作成することが必要です。この組織変更計画には、以下の事項を定めなければなりません(会社法744条)。なお、持分会社では、株主に相当するものが「社員」、株式に相当するものは「持分」と呼ばれます。

  1. 組織変更後の会社が、合名会社・合資会社・合同会社のいずれであるかの別
  2. 組織変更後の会社の定款で定める事項

    目的、商号、本店の所在地
    社員の氏名または名称、社員の住所
    社員が無限責任社員か有限責任社員かの別

    合名会社:社員全員が無限責任社員
    合資会社:社員の一部が無限責任社員、その他は有限責任社員
    合同会社:社員全員が有限責任社員

    社員の出資価額
    その他、定款で定める事項

  3. 株主に対価(組織変更後の持分会社の持分を除きます)を交付する場合には、その対価に関する下記事項

    組織変更後の持分会社の社債:社債の種類、種類毎の各社債の金額の合計額またはその算定方法

    上記社債以外の財産:財産の内容、数もしくは額またはこれらの算定方法

  4. ③に定める場合には、割当てに関する事項
  5. 新株予約権を発行しているときは、新株予約権者に交付する金銭の額またはその算定方法
  6. ⑤に定める場合には、割当てに関する事項
  7. 効力発生日

 社員(②)については、株主のうち最低1名は持分会社の社員とする必要があり(合資会社の場合は、無限責任社員・有限責任社員それぞれで最低1名)、かつ、株主以外の者を社員にしてはならないと解されます(森本滋編「会社法コンメンタール」第17巻56頁(商事法務、2010)参照)。
 また、株主に対価を交付する場合の割当て(③④)について、株式数に応じて平等に割り当てる必要はなく、そもそも株主に対価を割り当てない組織変更も可能です。これは、組織変更には総株主の同意が必要であるところ、対価に不満のある株主は組織変更に同意しないことで、自らの株主たる地位・権利を守れるためと解されます。
 さらに、組織変更の効力発生日に新株予約権は消滅しますので(会社法745条5項)、新株予約権者へは金銭を交付することが必要です(⑤⑥)。

総株主の同意

 株式会社から持分会社への組織変更は株主の地位に重大な変化を生じさせます。そのため、効力発生日の前日までに、組織変更計画について総株主から同意を得ることが必要です(会社法776条1項)。この「総株主」には議決権のない株主も含まれ、また、定款の定めによって要件を引き下げることはできないと解されます(江頭憲治郎・門口正人編集代表「会社法大系」第4巻35頁(青林書院、2008)参照)。ちなみに、持分会社から株式会社へ組織変更する場合は、定款により要件を緩和することが可能です(会社法781条1項)。
 総株主の同意を得る方法としては、株主総会のように株主を一堂に集める方法のほか、株主ごとに個別に同意を取得していくことも可能です。

新株予約権者への通知または公告、買取請求権

 新株予約権を発行している場合には、効力発生日の20日前までに、新株予約権者に対し、組織変更をする旨を通知(または公告)する必要があります(会社法777条3項・4項)。
 また、新株予約権者は、効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求できます(会社法777条1項・5項)。

登録株式質権者・登録新株予約権質権者への通知または公告

 登録株式質権者、登録新株予約権質権者が存在する場合、効力発生日の20日前までに、組織変更をする旨を通知(または公告)しなければなりません(会社法776条2項・3項)。

債権者保護手続

 債権者は、組織変更に異議を述べることが可能です(会社法779条1項)。そこで、債権者保護手続として、①組織変更をする旨、②計算書類に関する事項、③一定の期間内(1か月以上必要です)に異議を述べることができる旨を官報公告し、かつ知れている債権者には個別に催告することが求められます(会社法779条2項)。なお、官報公告に加えて、定款に定める新聞紙公告または電子公告を行う場合には、債権者への個別催告は不要です(会社法779条3項)。
 上記③の期間内に債権者から異議が述べられた場合、組織変更をしても債権者を害するおそれがないときを除き、弁済、担保提供または財産の信託を行う必要があります(会社法779条5項)。
 また、この債権者保護手続は、効力発生日の前日までに終了するようスケジュールを組むことが必要です(会社法745条6項)。

株券の提出手続

 株券発行会社で、株式の一部についてでも株券を発行している場合には、組織変更の効力発生日の1か月前までに株券提供公告を行い、かつ、株主および登録株式質権者には個別に通知することが求められます(会社法219条1項5号)。

事前開示書類の備置き

 株主および債権者への情報開示として、以下の事項を記載した書面または電磁的記録を本店に備え置く必要があります(会社法775条1項、会社法施行規則180条)。株主・債権者は、閲覧・謄写が可能です(会社法775条3項)。

  1. 組織変更計画の内容
  2. 新株予約権を発行しているときは、新株予約権者に交付する金銭の額・算定方法、割当てに関する事項の相当性
  3. 最終事業年度がないときは、会社成立日の貸借対照表
  4. 組織変更後の持分会社での、債務履行の見込みに関する事項
  5. ②から④に変更が生じたときは、変更後の当該事項

 この備置きの期間は、①総株主の同意を得た日、②新株予約権者への通知日または公告日のいずれか早い日、③債権者保護手続の公告日または催告日のいずれか早い日、以上①②③のうち最も早い日から始まり、効力発生日までとなります(会社法775条2項・1項)。
 なお、合併や会社分割などの組織再編行為と異なり、効力発生日後の開示書類作成・備置きは不要です。

登記

 組織変更の効力発生日から2週間以内に、元の株式会社については解散登記を、組織変更後の持分会社については設立登記を行う必要があります(会社法920条)。

効力発生

 組織変更を行う株式会社は、効力発生日に持分会社となり、組織変更計画に従って定款変更されたとみなされます(会社法745条1項・2項)。また、効力発生日において、株主は、組織変更計画に従って持分会社の社員となり、株主への対価として社債が交付される場合には社債権者となります(会社法745条3項・4項)。さらに、効力発生日に新株予約権は消滅します(会社法745条5項)。

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